432.結局お酒の力
辿り着いたのは、ちょっと治安悪げな街か都か?
なんか、ネオン点いてるし、でもそこらで酔っ払ってるヒトいるし。
門番も何もいないのはどういうことなのかな?解釈が難しい。
ここの灯りは、あからさまなネオンと街灯。
しかし、火でも電灯みたいな白い光じゃなく、紫がかった光。
よくよく覗き込めば、電気の放電現象の様に何か石かガラスの内側から光を発している。
ん~、どこで仕事受ければいいんだろう?
チュートリアルみたいに、どこに行ってみようも何も無いし、困った。
こんな時はね、そこいらにいる人に聞けばいい!
そりゃ好感度も信頼度も0よ?でもね、酔っ払いがお酒を出されて断ると思いますか?
否!!
とは言え、取り合えずそこまで高くない酒から試してみよう。
バチバチとちょっと調子悪げなネオンの下で、寝そうで寝ない独り言を言ってるおじさん。
「すみません、ちょっと伺いたい事があるんですが?」
「うわん?しらねーよ・・・」
「どこか仕事請けられる場所知りません?」
「あ?仕事だ!?俺たちゃ決まった事だけやればいいんだ!何言ってやがる!」
「まぁ、そう言わずこれで何とか」
そう言って、ラム酒を差し出すと、そのまま瓶でラッパ飲みするおじさん。
よくよく見れば、耳は長く尖っているヒト型、目に白目が無い。
何だろう、髪の色素も薄そうだし・・・エルフッちゃエルフ?飲んだくれて、道端でぶっ倒れてるエルフって・・・。
「これ、珍しい酒だな・・・こんな物・・・陰から手に入れたか・・・?まぁ、いい。仕事なら酒場にでも行くんだな。この通りを真っ直ぐ進んで、左手に見える」
「え?酒場って・・・」
そんなの古のRPGみたいで、高まって来ちゃうじゃん!
「ああ?俺達は産まれてきた理由も生き方も決まってるんだ。突発の仕事なんぞ、酒場で管巻いてる連中にやらせるしかないだろ・・・もう、寝るぞ・・・」
そう言って、道端で寝始めるおじさん。
風邪を引くかもしれないけど、そういう失敗を繰り返して人は大人になるんだ。おじさんだけど。
取り合えず、街の真ん中と思われる道を抜け、左手に入る道に大き目の建物があり、ぼちぼち賑わっていた。
入ってみれば、料理とお酒を楽しむ店みたい。
やんわり表現しなきゃ笑っちゃうほど治安悪そう。幸い<掴む>と<組討>持ってるし素手で制圧できるかな?
大半は立ち食い立ち飲み、奥に座れる席もあるが、なんか賭け事をするテーブルかね。
店に入るなり、視線を集めるが、塩対応なので、誰も話しかけてこない・・・来た!
「ここらじゃ、見ない風体だな。何者だ?余所者なら、お前の面倒なんぞ見る余裕は無いぞ?」
「飲んだくれてる割に余裕が無いんだね。飯でも奢ってやろうか?」
「ああ?やんのか?」
「何をさ。暴力なら、そこそこ出来るよ?お前一人分の飯が浮くな?」
「ちっ・・・」
いきった割りにすぐに立ち去るエルフっぽいヒト。さて、どうしたもんかな。
取っ掛かりを失ってしまった。
対応を間違えたか?絡んでくるやつをぶちのめして、腕っ節で雇われる。そんな西部劇かと思ったんだけど、外したらしい。
取り合えず、結構走ってきたし、飯でも食うか。
カウンターに向かい、マスターに厨房を借りる。お代はラム酒だ。一瓶で事足りた。
ふむ、お酒に合うつまみは数あれど、今の気分は何かな。
ちょっと面倒くさそうなヒト達だし、力がつくものがいいか?いざって言う時、ヒトを血祭りに上げるにはやっぱり、ニンニク・・・玉ねぎもいいな。
うし!玉ねぎのガーリックバターステーキにしよう。
オリーヴオイルを引いて、ニンニクを炒める。
香りが油に移った所で、輪切りの玉ねぎを焼く。
焦げ目がついたかどうかという所で、ひっくり返し、両面よく焼けば、柔らか玉ねぎステーキの出来上がり!
これがお酒に合うんだよな~。
「な、なぁ、それ俺にもちょっと分けてくれないか?」
ラッキー!食いついてきた飲んだくれおじさん現る!
「おい・・・俺にもだ!俺にも寄越せ!」
「あん?俺が先だろ!さっきマスターに渡した酒と一緒に出しな!痛い目見たくなかったらな!」
そう言って、血気盛んなアホが突っかかってきたので、片手に一人づつ、首を掴んで吊り上げる。
「ねぇ、他人から物貰おうってのに何様?痛い目ってどういう事?」
喉を締め上げれば抵抗出来ない二人、飯をたかるだけあって何か軽いし感触がほぼウエハース。
まあ、やり過ぎない程度にそこいらに放っておく。
「お、おれは、ちゃんと対価を払うぞ、つまらない物だが・・・」
さっきのおじさんがビビッて何かをポケットから出そうとして必死だ。
「じゃあ、情報でいいよ。自分は余所者だから、ここらの事教えてくれれば、玉ねぎステーキもお酒も奢る。でも力づくで奪おうってやつは、殴るし、場合によっては斬る」
めっちゃうなずいて、何でも聞いてくれとばかりのおじさん。
「じゃあ、取り合えず一食分として、ここらで仕事を請ける方法を教えてよ」
「ああ・・・普通は何をやるか生まれた時には決まってるもんなんだがな。でも他所から来たっていうなら、ここで待ってれば、なにか暇なやつに振るような仕事なら請けられるぞ」
なんか、さっきも聞いたような話だな。そっか産まれてくる時点で、仕事が決まってるなんて、そりゃ飲んだくれもするか。
おじさんに一食分渡し、考え事をしてると、なんか女性が一人酒場に入ってきて、
「今暇なやつ!誰でもいい!この手紙を渡して来い!」
いきなりの命令口調だ。正直ちょっと反発したい気持ちもある。