431.水源周り
取り合えず、右回りで行くとしよう。
水源の縁を駆け抜けて行くと、結構アルキノコを見かける。
アルキノコがそこいらを歩き回ることで、草が生えるって事は、雨が降らないんだろうな。
つまりここは地下って事で間違いないだろう。
水源周りは確かに草が多く、そんな草がどれだけ大事な資源かも分からないので、出来るだけ踏まない様に進む。
そんな駆け抜けるだけの時間が過ぎ、木の生える場所を見つけた。
森どころか林ともいえない、精々が果樹園程度の背の低い木が連なる場所に近づいて見てみると、
一応、木の実がなっているのが確認できるが、それが何の実かまでは分からない。
誰かが育ててるのかな?アルキノコじゃ絶対収穫出来ないしな。ペンギンサイズじゃ絶対手が届かない。
そして、ふと気がつく。木の間に・・・マッッッチョ!が一人。
自分より頭一つ大きく、ハンマーで殴ってもびくともしなさそうな大きくてそれでいて絞り込まれた筋肉に茸の頭がついている。
『ムシャマッシュだね。何もしなければ大丈夫だよ』
う~む、ムシャの名に恥じない大腿筋だ。脚ってのは結構鍛えるの大変て聞いてるぞ。現実では。
「オマエ ミミ マルイナ! ナニゾク ダ!」
急にムシャマッシュに話しかけられたけど、どうしよう。ナニゾクって・・・?
「ニューターですけど」
「ニューター ミミ マルイ!」
え???以上?どういう事?自分何したらいいの?
『納得したみたいだから、通りすぎていいと思うよ』
え~、何この地下の国のディスコミュニケーション状態。本当に怖い。
取り合えず、水源沿いを進むが、相変わらず、アルキノコとたまにムシャマッシュを見かける。
そして、気がつく。右手奥がちょっと明るい。
「ねぇ、向こう明るくない?」
『気がついた? 向こうは熱い赤い池がいっぱいあるの』
熱い赤い池・・・? 地獄って事? ここは冥府?
「誰か住んでるの?閻魔様とか」
『誰も住んでないと思うよ。木の根もあっちには近づかない。でも何か赤いべしゃっとした奴とか、大きな音で弾ける岩が転がったりしてる』
何じゃそりゃ?取り合えず、目的の方向じゃないし、誰もいないなら一旦保留かな。
そのまま、ずいずい進むこと数日、はるか遠くに壁らしき物が見えてきた。
「ねぇ、向こう壁なんだけど」
『そうだよ。ここは四方を壁に囲まれてる』
「四方をって、全部じゃん?」
『正解』
自分が走って数日の範囲全部囲まれてるって、地下世界ってそんな感じなの?
「それで、太い根ってどれ?」
『まだ見えない?もうすぐ見えると思うけどな』
そう、言われてただひたすら壁に向かって走るが、ついに気がついてしまう。
壁の間に、木の根が詰まっている。
しかし、問題はその木の根の異常な太さ。最早太さと言っていいのかも分からない程の巨大さ。
こんな太い根は一つだけ、心当たりがある。世界樹だろう。
壁の隙間にぎっちり詰まっているが、大丈夫なのだろうか?
って言うか、ここは世界樹の下って事か。
え?って事はさ・・・。いや、いやまさかな!
「あの上って天井じゃなくて、海?」
『海って何?』
「水がいっぱいあるところ」
『へ~。あまり知ってるヒトいないのによく分かったね』
そうか~、まじか~、大霊峰の先の海の下ってこうなってたのか。
海の下の海底の地面の下じゃなくて、海の下か~。
あれかな、潮宝樹か重宝樹の力でも使ってるのかな。
宝樹の親だもんいろいろ出来てもおかしくないよ。
太い根に近づくに連れ、その麓が明るいのに気がつく。
自分に似たヒトがいるって言うし、街でもあるのかもしれない。
しかし、四方を壁に囲まれている土地の壁端から壁端まで、どれだけ距離があるのかね。
この辺りが世界樹の真下だとしたら、大霊峰からうっすら見えたのが世界樹で間違いないんだろうが、にしたって、どんだけでかいんだよ。
でも、まあ、おおよそ方向だけは分かった。この壁と世界樹の根が、東端だ。
自分が滑ってきた場所が、西端。
熱い赤い池は南。反対はどうなってるか分らないけど、北となる。
まあ、逃げてきて早々に焦っても仕方なし、のんびり順応して行くとしましょう。
近づけば近づくほど、明るくなっていく。
あれほど明るければ、街じゃなかろうか? ここ拠点に頑張りたいな。
しかし、ムシャマッシュみたいにディスコミュニケーション街じゃないことを心から切に願う。
そうなったら、陰達とコミュニケーションとるしかない。
魔物はいない。代わりに陰が襲い掛かってくる。
でも陰も普通に何か交換してくれる個もいるし、好きに片っ端から倒せる訳じゃない。
今までと全然ルールの違う雰囲気の国でうまくやっていけるかな?
ここが国かもよく分かってないけどさ。