430.地下の水源は泳がないんだって
ログインして、もぞもぞと動き出す。
もう、切羽詰った状況じゃないのでマイペースでのんびりしゃん。
ん~仄暗いただの平原の朝がキモチイナ~。朝か昼か知らんけど。
そういえば、ずっと使ってるこのテントもボスからの報酬だったんだよな~。
まあ、装備じゃないし、これは渡せない物の一つなので!
このテントの便利さはただ泊まれるだけではない!
一人用の小さなテントだから嵩張る物とか量がある物は入らないけど、
逆に量の無い小物なら入れておける。
入れて置けるってのは、テントに入れたままテントをしまえばスタックの節約になるって事。
一スタック99個入るけども、逆に一個しかないものでも一スタック埋めてしまう。
テントに入れておけば、テントとして一個にまとまる。
「ドヤ!!!!」
『おはよう、起きて早々元気だけど、何がドヤなの?』
「ん?テントが便利って話」
『へ~~~凄いね』
因みに、手入れセットとか料理セットとか手当てセットもセットとしてまとまってるけどね。
料理セットは何気にクラーヴン製のやたら無駄に丈夫な仕様。
ありったけの普通の魔石を渡して、鬼のように丈夫にしてもらったので、好きなだけ料理できる。
特殊効果とかいらない。丈夫ならそれでいい。<手入れ>して使う。
しかし、まあ、このテントも便利だけど馴染んだ感があるのは、もしかしたら他の方法でも手に入れられる物なのかもな。
<野泊者>が無くても外で休まなくちゃいけないクエストとかで、中古のテントとかから、ちょっとづつレベルアップとかするんじゃなかろうか?
辺境の村に届け物!とかそんなクエスト繰り返すと、絶対必要になるもんな。
自分は世界一周の時は街から街へ。町とか村で休んでたし、戦闘団になってからは野営地造れるから、テント必要なかったし。
一先ず、片づけをして、平原を獣の陰の言うとおり進んで行くと早々に犬っぽい獣の陰に絡まれる。
この獣はちゃんと耳も体毛も表現された陰なので、犬と分かる。
『ヘイ!ユー!イート!ユー!』
「なんぞ?」
『食べるってさ!』
「いや、食べないって話じゃん」
『その筈なんだけどね~。このタイプは倒すか逃げるしかないね』
まあ、普通のボスくらいのサイズだしやりますか。
剣を引き抜くと向こうも毛を逆立て、こちらを威嚇してきた。別に士気低下攻撃ではない。
残像を残し、自分の左手に周り、噛み付いてくる犬陰の鼻っ面を剣でぶん殴る。
サイズは大きめだし、思い切って足を蹴りだし、その勢いを剣を振るスピードに転化しつつ、
肩甲骨の回転で軌道を操り、水平斬り。
『ギャン!』
そこから、軌道を変え逆袈裟にさらに鼻先を斬る。顎下を突き上げる。
空いた喉を握りつぶしながら、
気脈術 冷気
凍結で動かなくなったのを確認し<犠牲>で生命力を捧げ、接射。
武技 縮砲
頭を吹き飛ばし、陰は消えた。
霊子すら残さないと言う事は、肉体の無い存在なのかな?
しかし、地面には何か素材に使えそうな大きな骨が一個残っていたので、拾っていく。
「今の犬は骨が好きだから、骨を持ってたのかな?」
『かもね。でも結構強い相手なのに、あっという間に倒しちゃったね』
「そう?そこまで強い相手じゃ無かったよ?」
『そっか~僕は戦うの苦手だから、強いと思ったな~』
『ねぇ・・・お金頂戴。くれたら君のスキルの熟練度ちょっとだけ増やしてあげる』
急に新たな声が聞こえたので、困惑していたら、
『頭の上だよ』
動物の骨の陰に教えてもらって初めて頭の上に何か乗っているのに気がついた。
そして、適当に金貨を差し出したら、
『これじゃない・・・これじゃない・・・』
ちょっと機嫌が悪そうだが、まだチャンスはありそうだ。
そう言えば、見慣れない銀貨を貰ったんだったと、渡してみれば、
『コレコレ・・・じゃあスキルの熟練度増やしたから』
そう言って、頭から離れて何処かに飛んで行ったのはタンポポの綿毛のような陰。
なんなんだかな~ここの陰は・・・でも皆なんか欲しい物があるのかな?
「ねぇ、もしかして君も欲しい物があるの?」
『うん、温かくて明るいもの』
「それってなんなの?」
『分かんない。だから欲しいの』
分からないものが、欲しいとは?
まあ、長い付き合いになりそうだし、おいおい聞いていきますか。
そして、加速し始めれば、自分に追いつけるものは無く、平原をすっ飛ばす!
誰もいないし、誰にも迷惑かからないし、好きなだけ走るぞ~!!
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そんなこんな、平原を走破すると、でか~~~い池?沼?湖?
『ここはこの辺りのヒト達の大事な水源。ここが真ん中位』
大分広い真ん中だけどね~。
さて、この水源を右回りで抜けるか左回りで抜けるか、それが問題だ。
水源を眺めていると、水の中を何かがこちらに向かってきた。
そのまま陸に上がってくると、二足歩行の茸。
二足と言ってもペンギンみたいな足だけの二足歩行、ヨチヨチとそのまま水を滴らせながら何処かに歩き去る。
「茸だったね」
『あれはアルキノコ、水をいっぱい含んで歩き回るから、それで草が生えるの』
「なんか泳いでたけど、この水源は泳いで渡ってもいいの?」
大事な水源て事は飲み水かもしれないし、一応聞いておく。
『泳ぐってなあに?』
「いや、水に浮いて早く移動するみたいな」
『足つくよ?』
あっ浅いのね・・・。じゃあ、回り込んだほうがいいかな?適当に右から行ってみますか。