415.追跡カブトムシ
「ねぇ・・・」
「とにかく騎乗出来るやつは、さっさと準備してカヴァリーの旦那を追いかけろ。回復は移動しながらしろ!とにかく今は時間が無いぞ」
「ねぇってば、アンデルセン」
「どうかしたのか?」
「ああ、クラーヴン。自分史上一番かっこよくフェードアウトしたはずなのにさ。どうなってるのか聞きたいのに、アンデルセンが無視するんだ」
「何だそんな事か〔アスクレピオスの杖〕で復活させただけだろ?」
「いや、復活はそれ以外無いなって、生き返ってから思ったよ。でもさ、いい感じで別れたじゃん。俺の屍を越えていけって感じ出したじゃん」
「あれは、遊んでたんじゃないのか?まあ、とにかくお前さんは馬並のスピードで走れるんだろ?じゃあさっさと追いかけた方がよく無いか?」
「分かったよ。じゃあ、自分もカヴァリー追いかけるから!基本的な方向は分かってるけど、見落としがあるといけないし、広がっていこうか!レギオンボスは狩りつくしてるし、雑魚魔物は倒すなり、避けるなりそれぞれの判断に任せる」
と言って、さっき渡した服を装着次第、さっさとカブトムシが向かったであろう方向に駆け出す。
皆は馬なので、高原でも走りやすい場所を選んで駆け抜けているが、自分は直線。
多分カヴァリーも直線だろう。カヴァリーの騎乗するのはシェーベルだから、平地の直線距離じゃ若干馬に劣るかもしれないけど、急勾配や足場の悪い場所でなら圧倒的だ。
勾配下り上り、時に飛び越して、ガンガン進む。砂利で足が取られそうな時は<疾走>を使用してスキルの力で、駆け抜け、偶然落ちてる矢というかクロスボウ用のボルトを発見。
こんな所に置いていくなんて、ビエーラだけだろう。フィールドに長時間放置してれば、勝手に消えちゃうし、落として間もない筈。
さらに飛ばしていく。
「ビエーラの目印は矢だ!矢を見かけたら周りに報告!」
「おうよ!」
「おっ赤騎士も参戦できそうだね」
「そろそろ、俺も活躍したいぜ」
走りながらなので、端的な質問と答えになってしまうが、気合は入ってるようだし、上々だね。
時折、通常の魔物がいるがスルー。
相手が自分に気がついてるかすら、確認せぬ間に横を通り過ぎて行く。
そして、見えてくるカブトムシ。
シェーベルに乗りながら大ジャンプし、クロスボウの矢を撃ちこんで、カブトムシの食事を邪魔するビエーラとカヴァリー。
しかし、健闘むなしく。レギオンボスの魔石はカブトムシに食われてしまった。
そこに赤騎士が到達するなり、溜めに溜めた一撃。
さらには騎士殿も到着、
「たまには本気を出すとしようかの騎士の誓いを使わせてもらうぞい」
剣を顔の前に掲げれば、全身からエフェクトが噴出す。
「騎士の誓いって、ステータスが上がるやつだっけ?」
「そうじゃ、誓約を守ることで該当の身体能力補助を受けることができるのじゃ」
「騎士殿は攻撃力とか力とか上げてるの?」
「いや、全部じゃ。誓約に追われる日々なんじゃよ、困っているヒトを助けるのもその一環じゃ」
全身体能力上がるって、どんな状態よ?まあ、この状況じゃ頼りになるし、いいか。
そして、ステータスが上がった騎士殿がカブトムシの横から、剣を十字に振るう。
十字の巨大なエフェクトが、レギオンボス並のカブトムシの巨体を揺るがす。
流石、プレイヤー最強。レギオンボスにすら大ダメージを与えてく。それでいて、盾と長めのロングソードを装備している。つまり、魔物用の大剣とかでは無いのだ。意味分からん。
さらには【馬国】勢と見られるプレイヤー達も追いついてきて、馬上弓でカブトムシをハリネズミにしていく。
そんな状況にも関わらず、邪神の化身は食事が終わると同時に壁を展開、攻撃を防ぎ始めたが、
かまわずガンガン攻撃を浴びせられるだけ浴びせていく。
ソタローは追いついてこないし、ここは自分が補助していきますかね。
「じゃあ、相手を消耗させるためにも一気に『行くぞ!』隊列は縦隊で」
戦陣術 激励
さらに、騎乗したプレイヤー達が、四列縦隊に並んでいく。
「さて、まずは錐の一刺しと行こう」
戦陣術 紡錘陣
本来は防御陣形を中央突破する術だが、突破力と攻撃力が上がる。これで攻撃を防ぐ透明な壁の上から、攻撃し、消耗させてやる。
カブトムシを掠めるように突撃し、すれ違い様、皆思い思いに溜めた一撃を叩き込み、
そして、一撃入れた者から散開し、カブトムシを囲む。
全方位からの攻撃に、辟易し始めたカブトムシが、消えた。
「今!頼んだ!」
「分かってますよ隊長」
と、剣聖の弟子が空中に瞬間移動したカブトムシを追い、鞘から抜き打ちで角に一撃。
【森国】の宝剣と見られる竹光で、角を一本切り落とす。
前回の二の徹は踏まない。ビームでの全滅はごめんだ。
剣聖の弟子はそのまま空中でカブトムシを滅多切りにしている。瞬間移動を繰り返しすぎて、分身しているかのよう。あらゆる方から切り刻む。無数の剣閃がカブトムシを傷つける。
それでも、残った2本の角先を地上に向けるカブトムシを突撃槍が襲う。
騎士殿の投擲した突撃槍に空を向けさせられ、そのまま落下してくるカブトムシ。
カブトムシより早く地面に落ちた角はすぐさま形態変化を起こそうとする。
今更ながら、邪神の化身があまり同時に複数の能力を使わないのは、魔素不足だけじゃなくて、対応する部位を切り落とされる可能性が、あったからなのかもなと、納得した。