414.死と再生の秘儀
「ビエーラ!とりあえず、牽制できる?」
「もうやってるの!」
確かに、いつの間にか愛用してるクロスボウをぶっ放していた。
ぶっ放していたと言うのは、いつものような一本矢ではなく、拡散矢をカブトムシに放っていたから。
飛んでくる矢をやはり見えない壁が弾いているが、微妙にラグがある。
「あれだな、あの壁一枚壁じゃないな」
「だね、軌道を読んで最低限で防いでるピンポイントバリアって感じかな?」
「やっぱり、まだ魔素不足か?だとしたら、手をこまねている場合じゃないぜ」
「アンデルセン、剣聖の弟子にこの情報を伝えてくれよ。相手に軌道を読ませない事出来るのは剣聖の弟子だから」
「ああ、分かったよ」
「あと、あの衝撃は多分接触型で、今は尻尾についてるね。蛸の足も衝撃の足だけ爪が生えてたって言うし」
「あの衝撃を使った地震攻撃は厄介だな」
「いいや、自分の装備を置いてくから、誰かに使ってもらって!浮くか、二段ジャンプで避けられるはずだから」
「あ?じゃあ、隊長が使えばいいじゃないか」
「いいから!カヴァリーとビエーラは邪神の化身を追って。とにかく見失うのが一番まずいから、そこは頼んだ。相手は魔素切れで、多分またライン上のレギオンボス狙うから、そこで合流して」
「誰となの?」
「邪神の化身は最初の山ほどの大きさからすれば、かなり縮んだけど、それでもまだレギオン位はある。自分達だけで止められる相手じゃない」
「でもやるしかないだろ?」
「いや、全員で追いかけよう。死と再生の秘儀を使う。そうすれば、全員この場に復活するから」
「そうなのか?じゃあ、すぐやろうぜ」
「うん、すぐにやるけど、代わりに自分はここまでになる。普通に死に戻ると思うから、あとはアンデルセンに頼むよ」
「いやいやいや、総大将がいなくてどうするんだよ」
「相手は今までとは全然違うスピードで、目的地に向かってる。そりゃもしかしたら、大霊峰とかで引っかかるかもしれないけど、そうじゃないかもしれない」
「そうは、言ってもよう・・」
「相手も追い詰められてる証拠だよ。今までとパターンが変わって、あんないきなり全滅のハメ攻撃。今までプレイヤーのことなんて碌に気にしてない素振りだったのにさ。ここが正念場でしょ」
「いいから、早くやるの。私と旦那様は追跡に向かうの」
「うん、任せた。じゃあ、やるか」
「お、おう・・・」
漆黒将軍もこんな気分だったのかね~後一歩って所でな~。
そして、勲章に刻まれた呪文を読み上げていく、
「ええと、パイソン、コブラ・・・ジムグリ・・・カパーヘッド・・・これ蛇の名前じゃん!シマハブ・・・ブルスネーク・・・」
しかし、蛇の名前を一つ唱えるたびに、体が光の粒子に変わって行く。
今分かる情報は渡した。装備も預けた。意思も託したし、集団戦はソタローがいる。騎士殿も剣聖の弟子もいる。さっきのハメのような不意打ちさえくらわなければ、勝てる筈。
アンデルセンは不安そうな顔でこっちを見ている。
クラーヴンが何か小首をかしげてこっちを見ているが何だろうな?
体がうっすらと、透けてきた。特に痛かったりとかする秘儀じゃなくてよかった。
多分今のカブトムシ形態は剣聖の弟子が何とかしてくれるだろう。
もし、それで邪神の化身がピンポイントバリアから、全方位バリアとかに変更してくれれば、消耗が激しくなるだろうし、時間も稼げるかもしれない。
何にせよ敵に隠れる手段はもう存在しないはずだ。
よくよく考えたら、あの海生生物の姿は、大霊峰山頂から海に入って、世界樹に接近戦仕掛ける為だったのかな?
本来の変形順序が分からないわな。
隠蔽だから、蛸だったのかな?カメレオンとかでも良かったんじゃ?
あ~あ~画竜点睛欠いちゃったけど、邪神の化身倒せたら何食べようかな。
前半は頑張ったし、別にいいよね。
なんか、魚食べたくなってきた。サーモン尽くしとかいいな~。
サーモンサラダと海鮮丼、サーモンチーズ、アボガドサーモン・・・。
普通の焼き鮭で白飯食べたくなってきたな・・・。それに【森国】の古酒ってのもいい。
まあ、いいや!その時考えよう!
「アンデルセン任せたよ」
「隊長!」
体が、完全に消えた。