411.決戦準備
幕僚総監に苦労をかけてしまったようだが、何とか監視網の構築は完成。
そして本題の邪神の化身の居場所だが、どうやら既に【馬国】まで入ってしまったようだ。
と言うのも、通常の一人で倒せるような魔物やパーティで挑むようなフィールドボス程度は既に集めに集めた武装勢力が狩り尽しているから。
どれだけ出てこようが、出た傍から狩って臨時収入にしてしまっている。
なんならユニオンボスの様な20人集めて対抗するようなボスすら、平らげてしまって、邪神の化身の出てくる余地が無い。
しかしそこから考えると邪神の化身はあくまで魔素を溜めて、世界樹破壊を目的としているのだろう。
NPCやプレイヤーを食べても回復できるなら、とっくに出てきてもいい筈なのに、そう言った報告は一切無い。
そんな中【馬国】からレギオンボスが消えたと情報が入った。
もうね、こうなったら【馬国】しかありえないんですよ。
【馬国】に関しては広い高原をレギオンボスが徘徊してるので、それを避けるように人々が移住生活してる訳で、急に消えたとしたら、十中八九邪神の化身の仕業。
攻撃を防ぐ透明の壁、強固な壁すら破壊する衝撃、瞬間移動、完全隠蔽、必殺の剣、遠くの標的を消し飛ばす破滅の光。
残ってる能力はこれ。
残り半分の能力をすべて宿した相手か、それともまた分離するのかそこが問題なんだよな。
とりあえず現地に行ってみると、レギオンボスがいた筈の空白地帯、すでに移動したのかその場にいるのかも分からない。
しかし、足跡だけは見つかった。
ここにいたであろうレギオンボスは四足歩行の獣型だったと現地のヒトから聞いている。
偶蹄目っぽい足跡がそれだろう。そうなると地面を何かが這いずったような跡は邪神の化身の足跡って事になる。
正直なところ地面を這いずるとしたら蛇か虫位しか思いつかないが、なんかそういう細長い生き物じゃ無さそうだ。今の邪神の化身の形態は想像も出来ない。
ただ何となく大きさだけは想像がつく。
うん、かなりでかい。この前の竹ミサイルみたいな中は空洞って言う罠じゃなければ、残りの能力全部持っていてもおかしくない。
そして、その足跡が急に消えている。偶蹄目っぽい足跡が消えている場所と同じ地点でだ。
つまり、現地レギオンボスを倒して吸収し、瞬間移動したか、今もそこに佇んで、完全隠蔽で隠れているか。
この巨体で瞬間移動はコストも大きいだろうし、周辺監視の強化を依頼しておく。
・・・場合によっては、完全隠蔽と何かの能力をこの場に残して、もっと飛ぶかもしれないけど。
いずれにせよ、この周辺を次の戦場にせねばならないだろう。
「アンデルセン、いくつかのグループに分けて、この周辺のレギオンボス狩っちゃおうか」
「また過激な事を・・・まあ、足の速いのは騎士と【馬国】のクラン連合。他は隊長、ソタロー、嵐の岬でやれば、出来ない事も無いだろうが」
「多分この辺りが戦場になるし、戦闘中に横槍入れられたくないからね。レギオンボスなら一回狩れば次に出てくるまでそれなりに時間がかかるんだよね?」
「そうだな、普段からフィールドにいるようなレギオンボスでも、リポップには結構時間かかるぞ」
「後この辺りは結構デコボコしてるから、狙撃地点も造りたいな。敵が遠距離射撃使ってくるなら、うちもやってやろうよ」
「またそういう、おかしな事言いやがって、具体的にどうするんだ?」
「宝剣を鏃に使うバリスタでも作れば大ダメージじゃない?」
「誰が作るんだよ」
「クラーヴン」
「勝手な事言ってるけど、そんな物作れるのか?作れるかクラーヴンだもんな。狙撃地点を選んで、バリスタを設置できるような施設を建造。宝剣を鏃として飛ばすバリスタの制作。大変だぞこりゃ」
「同時にレギオンボス狩りね。こんな所でひっくり返されたくないし徹底的にやろう。邪神の化身の移動する方向は変わらず大霊峰の方向、魔素補給の為にうろつかれたらどうしようかと思ったけど、真っ直ぐ目的地に向かってる様子だし、そのライン上の敵をあえて残して、外側から狩り進め、網を絞る」
「邪神の化身が魔素補給の為に餌のレギオンボスに食いついたところを囲み倒すってところか」
「そう言う事、気張っていくか~」
「そういや、奥義ってのは習得できたのか?」
「ん~もうちょいって感じかな」
「じゃあ、隊長は先にそっちだな。レギオン狩りは他のプレイヤーに任せておけばいい」
「なんでよ?やるよ自分も、レギオン狩り」
「いや、現状までで、隊長活躍しすぎて参加できてないプレイヤーも多いだろ。せめてそっちで手柄をたてさせないと、不満も出る。直接邪神の化身と戦うまでの力のないプレイヤーも程よく参加させたりとか、そういう調整できるのか?隊長」
「無理かも、でも自分が活躍したのって、多分環境適応装備のおかげなんだけどね」
「まあ、明らかに手詰まりになる部分用の装備なんだろうとは思うけどな。でも環境適応出来るからって理由で全部背負ってきたんだから、一旦休めよ」
「休みと言う名の拷問か、ぞっとしないな」
しかし、アンデルセンの勧めにしたがって、一旦【訓練】漬けの日々を過ごす。