410.お金が集まる所人が集まるって事らしい
「なんかご面倒お掛けしたみたいで、申し訳ないです」
「いや、隊長はよくやってくれてる。だから私の話を聞いてくれるだけでいいんだ」
「はい、しかし、自分はお金出しただけなので」
「それが、問題だったんだよ。いいかい?各国【兵士】を招集するまでは順調だったんだよ。問題はその後だ。お金で雇える武装勢力や戦闘員を雇おうとした所で、困った事になった」
「ああ、ただでさえ世界中の国に属する暴力装置を引っ張り出せる立場の人間が、さらにお金で集めたら大変な事になりますか」
「うん、まあ、それもあったがそんな事は些細な事だったんだ。【兵士】にはそれを率いる者をつける事で、仮に隊長が暴走しても最悪止める事が出来る。金で雇われた人間を集めた所で、日頃から集団戦闘を得意とするものに、抗える訳も無い」
「そうなると、何の問題も無いと思うんですけど?」
「いや、隊長がお金を出すといった事で、ただでさえ、負担をかけている隊長にさらに私財を切り崩させるのかと反対するものがいてだな」
「まあ、それは自分が言い出したことなんだし、強制された事では無いですから」
「その通りだ。その事を説明し、隊長が少しでも多くの戦力を必要としている事を伝えたら、各国の有志が資金援助を申し出てくれてな」
「へ~資金援助なんて、邪神の化身倒しても一銭にもならないだろうに・・・」
「それなのに隊長はお金を出しただろう。しかも個人で出すような金額とは思えない額を」
「まあ、何かしこたま稼いだので、この機会に放出しちゃおうかと、そうすれば、この戦いが終わった後も少しは景気がよくなるんじゃないですか?」
「うん、その隊長の志に賛同した金持ちや権力者達、最初は【砂国】の族長の息子、次に【王国】の金持ち、さらには【海国】の島を持つ領主の息子なんかが声をあげてだな。じゃあ、我も我もと出資する事が決まってな」
「うわ~、武装勢力雇うどころじゃなくなりそう」
「そうなんだ。平原一帯に魔物がいなくなるほどの戦力が集まってしまってだな。じゃあついでだから、平和になった後の世界の物流の為に今のうちから道を整備しようという事になってだな。これらの道が出来てしまったんだ」
「道が出来てしまったんだって」
「事実なんだ。雇えそうな武装勢力がいないから余った金で、人足雇った結果、町ができてしまったんだ。そして、食い詰めがいなくなる事で各国も助かるからと、お金やその他物資を供給しまくった結果、死者の平原がとても住みやすい地域になってしまったんだ」
「うわ~・・・利権とか面倒くさそう」
「ははははは!そりゃね面倒くさいと思ったよ!でもねよく考えてみてくれたまえ!このプロジェクトの発起人は誰だい?隊長だ!邪神の化身を討伐するまでは世界の戦力を扱える。実質最高戦力保持者に誰が逆らうんだい?金で言う事聞かせ様にも有数の金持ちがバックについてる。権力で言う事聞かせ様にも、各国がバックについてる。頑張って戦力削ぎ落として、個にして指名手配かけたところで、世界中にコネクションがあって好きなだけ逃げ回る。終いにはね・・・あの軍務尚書が高笑いしたんだよ。あのいつも沈着冷静な軍務尚書が・・・あの場の何人の寿命が縮んだと思う?」
「それって、自分の所為ですか?」
「いや、違う。隊長は本当によくやってくれてる。まさかこの短期間に敵戦力の半分まで削り落とすなんて想像もしなかった。我々も全力で協力せねばならないと思っているさ。でも、町を作るのはやりすぎじゃないか?」
「自分は町作るようになんて言ってないんですけど・・・ところでその融資してもらったお金ってどうやって返せば?」
「この道と宿場町の利権で回収するから、いいってさ。なんなら隊長が発起人だし融資額も相当な額だから、定期的にこれからお金が入る様になるから、良かったね」
「いや、いらんので、誰か恵まれない子供にでも・・・」
「なんでそういう高潔な事を言うかな~!分かったよ!慈善財団か何か作るように陛下に具申しようじゃないか」
「あの、ところで、肝心の監視のほうは?町とか利権とかお金とかどうでもいいので、邪神の化身の消息を」
「そうだったね。勿論平原の監視はしっかりしているし【馬国】の高原は道こそひけないが、馬に乗れる者は軒並みそっちの監視に就いて貰っている。大河に関しては河族が、隊長の呼びかけならと協力してくれているさ」
「なるほど、万全の体制ですね。色々とありがとうございます」
「うむ、まあ、いいさ。問題は一つ、並みの魔物は軒並み倒してしまって、肝心の邪神の化身が補給の為に倒す魔物が残っていないことだろう。完全隠蔽しているという話だが、補給もなしに永遠に出来るものではないはずだ。邪神の化身が馬脚を現した時が正念場だな。敵は隊長の徹底した焦土戦術に窮している筈だ」
「焦土戦術って、自分は寧ろお金出して潤してるつもりなのに」
「味方は潤しながら、敵は枯渇させるなんて、狡猾この上なくて、頼りがいを超えて恐怖すら感じるよ」
「いや、恐怖って、ただの【上級士官】ですよ。ね!アンデルセン!さっきからボーっとしてどうしたの?」
「ん?いや、いつから隊長は街づくりゲー始めたのかなって思ってさ」