408.宇宙旅行からのスカイダイビング
竹ミサイル最上階。
多分瘴気垂れ流し能力と見られる聖石の持ち主は、目に見えるほど濃い瘴気を纏った黒いガスの塊。
向こうの壁が透けないほど真っ黒いガスは、見方によって、ブラックホールのようにも見えなくは無い。
なんとも不穏な見た目だ。しかしガスならそんなに早くは動かないだろう。
まずは、飛ぶ斬撃で先制。ガスなら術攻撃しかダメージが通らない筈だから、様子見。
斬撃が当たると同時に、ガスがフワッと部屋中に拡散し視界が真っ暗になる。
そして、壁に斬撃が当たるもこの部屋は丈夫にできているのか、穴は空かなかった。
さて、実質ガス内部に取り込まれたわけだが、どうするか。
よく考えたら、聖石をどこに持ってるんだ?こいつ。
ただ、真っ暗で何があるわけでもない、さして広いわけでもない部屋に聖石が見つからない。
これまでの階もスライムがいただけで別状無かったし、どうなってるんだ?
念入りに部屋中を探す。ガスの敵は何もしてこない。
もしかしたら、吸うと有害タイプかもしれないが、全身タイツの環境適応のおかげかなんとも無い。
・・・よく考えたら、さっきの部屋では天井に穴が空いたのに、何でこの部屋は平気なのさ?
とりあえず、天井に向けて斬撃を飛ばすも、やはり穴が空く様子は無い。
仕方ない、一個下の部屋に戻ってみるかと、下半身が穴から出たところで異常に気がつく。
下の階が無い。
さっきの衝撃の所為か?自分が登ってすぐに無くなっちゃったのか、それとも切り離されたのかな?
っていうか、外が暗いんだが、いつの間に夜になったんだ?
外に出てみたいが、ふっ飛ばされないかな・・・。
行くだけ行ってみるか。
と、どんな不思議能力が働いているのか、ミサイルに取り付いている分には吹き飛ばされないようだ。
さっきのガスが、纏わり着く様に竹ミサイル最上部を覆っているのが、タネなのかもしれない。
しかし、それは助かるのだが、
「なんじゃこりゃ」
なんか、空と宇宙の境目じゃん。
まあ、でも今はどこに聖石が隠されてるのか探さなきゃな。
ミサイル竹にへばりついて、ずるずると移動する。
しかし、へばりついてみるとこの最上階だけは材質が違う気がする。凄く硬い。
とは言え、動かないのだから動物とか虫ではなかろう。
時間をかけてミサイル竹先端に到達すると窪みがあり、そこに聖石がくっついていた。
後は、どのタイミングで破壊するか。
今、破壊したら宇宙に投げ出されるじゃん?
いや、何となくさっきより明るいと言うか、空の感じが出てきたから、そろそろやっちゃってもいいのか?
ん~いずれにせよ環境適応の能力を使いきったら、死に戻るんだし、いいか。
星空に抱かれて死のう。
ミサイル先端の聖石を破壊。
ミサイルが徐々に魔素と霊子に変わり、蒸発する煙と光に包まれながら、地上に体が引っ張られる。
まあ、こうなったらもうじたばたしても仕方ない。
なる様になるんだから、星空を眺めているうちに空になり、
「そうだ、マフラーってこんな高速で落下してても意味あるのかな?」
と、マフラーを使ってみるが、効果があるのか無いのか分からない。
まあ、殆ど宇宙みたいな所から落下すれば、ちょっとやそっと浮く力があっても意味無いか。
何か怖くなってきたし、目をつぶってその時を待つ。
自分達が打ち上げられた後、跡地はどうなったんだろう?
もし、邪神の化身の一部が残っていたら、皆で戦っているのだろうか?
アンデルセンがいるし、何とかなるかな。
人数が必要ならソタローもいるし、心配する事も無いか。
心配するなら三羽烏だ。
ミサイル下部が無くなってたって事は切り離されたか、破壊したかだよな。
下部が炎の噴射、上部が瘴気を垂れ流す。
二つの聖石が上下で二つくっついた姿。
てっきり本体だと思い込んだが、二つ分だったが故に大きかったんだな。
しかも、長さの割りに中が空洞の竹で出来てたから、聖石二つ分でもあのサイズを維持できたのかもな。
竹下部と共に落っこちて、三羽烏も流石に死に戻りかな?
・・・なんか平気な予感がする。あいつらなら何とかしそう。
しかし、中々落ちないな~スーツから空気が抜けてそろそろ結構寒いんだけど、
変身するとマフラーがな~。
どうせ落ちるんだし、変身しちゃってもいいけど衝撃とか怖いし、少しでもスピード緩めたいしな。
怖くなるから他の事考えよ。
死に戻ったら何食べようかな。
今回も頑張ったし、いい物食べたいな。温かい物がいい。
スープ系?悪くは無いけど具次第だな。ガッツリお腹に入れたい。
となると麺類か、うどんが好きなんだけど、物足りない。
ラーメンか?でもラーメン用の麺が無いんだよな~。誰か作ってくれないかな。
そば?もっと物足りないな。
・・・力うどんにしよう!餅は【森国】で仕入れた筈。もちとうどんって炭水化物×炭水化物。
罪深き禁断の関係じゃん!薄い色の白出汁に浮く、白い罪と白い罪。
ゲームなので罰という名の増量は無し!完璧だ。
「よし!力うどんに決めた!」
叫んだ瞬間に何かに受け止められ、黒い犬が覗き込んでくる。
「いらっしゃ~い」