407.ミサイル破壊
「よし、戦力を振り分けよう」
「根の方が太かったから、三人で行くわ、弾頭は玄蕃に任せる」
「自分一人?振り分けおかしくない?」
「外から見た限り上は狭そうだし、一人だろ」
「じゃあ、下は任せるよ。ミサイルがどれくらいで世界樹に到達するか分からないし、急ぐとしようか」
-三羽烏-
「とは言ったものの、重要なのはこっちだもんな」
「ああ、噴射さえ止められれば、世界樹には到達しないんだから。最悪自爆してでも止めないと」
「フェニックスフレアボムは一人一個。なんとしてでも止めるぞ」
すぐさま三人で穴を飛び降りて行く。
大竹の節ごとに階層があるものの、これと言ったギミックは無い。中が明るいのは周囲から光が漏れてくるからか?
どんどん降りて行き、徐々に一部屋が広くなっていく。
本来は節ごとに敵でもいたのかな?魔素不足で置けなかったりして・・・。
だとしたら、運でも何でも、あのタイミングで突入した玄蕃の妙手だ。
そして、底と見られる節。
竹の中に何故か竹林。
外に生えていたものと比べれば、かなり細い竹が生えている。
そして、一匹のがりがりの虎。がりがりだが、逆に餓えた様を現すかのようで、思わず息を飲む。
太い竹の根には、竹林に虎。絵にはなるが意味は分からない。
巨体に見合わぬ素早さで、竹の隙間を抜けて襲い掛かってくる。
獰猛な肉食獣の殺気に一瞬体がびくっと反応するが、
すぐさま、半蔵が鎖を虎の首に巻きつけ、小太郎が虎の背を一刺し。
鎖を強引に振りほどき、一歩飛びのいた虎、追うように佐助が四方手裏剣を投げつけるも、さらに飛びのく虎。
しかし、佐助の手袋と手裏剣がぼんやりと緑に光り、明らかに物理的におかしな方向に曲がり虎を追って、手裏剣が突き刺さる。
佐助の手袋は以前死者の洞窟で手にいれた代物、投擲武器の軌道を投げた後でも操作できる。
その後も、離れれば佐助の手裏剣が竹の間を縫って襲い掛かり、一瞬でも動きが止まれば、半蔵の鎖鎌がさらに追撃を加える。
小太郎は【森国】製の一見短い竹光か木刀にしか見えない宝剣で、虎を斬りつけ、邪神の化身に特効ダメージを加えていく。
しかし、虎もさるもので、肉食獣らしいしなやかな動きで、三人を引っ掻き、のしかかる様に踏み潰す。
普段なら、距離を取り避けながら奇襲をかける戦術の三人だが、今回ばかりは時間が無い。
ダメージを貰いながらも攻撃に攻撃で返してダメージを重ね。
佐助が噛み付かれた所で虎の頭を抱え込み、上から半蔵が鎖を巻きつけ動きを止め、
小太郎が、聖石を割ることでとどめをさした。
虎が魔素と霊子に変わるのと同時に、三人の体が浮遊して、天井にぶつかる。
「こりゃ、ミサイル落ちたな」
「だな!壁も徐々に消えていってるし、今回のMVPは俺達だろ」
「前回のトランプで遊んでた疑惑もこれで晴らせるぜ」
徐々に壁が消えた所で、空と言うより宙と表現するのに相応しいほど遠くに見える点。
「あっ、駄目だ切り離されただけだ。二段ロケットだったとは」
「いや、もう噴射はないだろ?つまり惰性で、どこまで飛ぶのか」
「後は頼むぜ玄蕃」
空を見上げながら急落下する三人。
「よし、やるか!ムササビの術!」
着ていた黒服の裾や服の間に布が張り、空気と風を掴んで滑空する三羽烏が、空を舞う。
-玄蕃-
三羽烏は飛び降りていったが、登るの大変だぞこれ。
二段ジャンプで、穴の縁に手を掛け上の節へ。
上の階にもしかしたら敵がいるかもと思ったら、スライムがいる。
何も出来ないサイズの小さい奴だが、一応潰しておく。邪神の尖兵だし碌なことは無いだろう。
さらに上の節に行けば、またスライムがいるが、明らかに数が増えている。
スライムは確か濃い魔素から生まれる瘴気生物の筈、つまり弾頭は瘴気を垂れ流す能力で間違いないか?
時間はかかるが、諦めて全部潰して先に進む。
さらに上にいたのはヒュージスライム、因縁の敵。
触手を伸ばしてきた所を宝剣で切り落とす。相手が触手を伸ばすよりも早く近づき、切り崩し、核を潰す。
さらに上の階はヒュージスライムが2体、取り込む魔物がいないから、ヒュージスライムしか出ないのかな?
完成した宝剣を舐めちゃいかん。ただのヒュージスライムなら、あっという間に瘴気に変え、核を潰す。
そして、次の階を覗いた瞬間、
「これはヤバイ」
部屋中にみっちりヒュージスライムがいるんだけど、どうしよう。
この竹も邪神の化身の体の一部なら傷がつくかな?
飛ぶ残撃で天井を攻撃すれば、穴が空き落ちてきたヒュージスライム一体を速攻片付ける。
続いて落ちてきたヒュージスライムも同様。
落ちてくるヒュージスライムがいなくなったところで、上に登り、残ったもう一体を片付けた。
さあ、次という所で大きな振動が起こり思わず壁に手をつき耐えるも、直後から急に息苦しくなり無意識に膝をついてしまう。
震える手で、口元のコックを捻れば、一気に体が楽になった。
どういう状況か分らないけど、環境適応状態じゃないと耐えられないようだ。
いずれにしても時間が無さそうだし、さっさと上に行きますか。
と、どうやらその上が丁度最上階だったようだ。