405.竹林
逃走し始めて間もなく、霧の周囲で動向を見守っていたプレイヤー達と合流する。
だいぶ邪天使本体に近づいてきていたようだが、落ち着いてる様子を見て振り返るともう竹は追ってきていなかった。
そして、その中には馬にまたがった騎士殿もいて、多分あの突撃槍は騎士殿の物だったのだろう。
「騎士殿久しぶり、助かったよ」
「隊長殿こそ、無事でよかったの」
「にしても、よくあの距離をあんな重量物投げられたね」
「それは違うぜ隊長。隊長達が突入して少し経ってから徐々に霧の範囲が狭まっていったんだよ。んで精鋭を選んで輪を縮めていって、それで隊長のなんか銃の奴が見えたから、そこに鈍色の騎士が突撃槍を投げ込んだんだ」とアンデルセンの解説。
にしたって、どんな威力だよ。勘で突撃槍ぶん投げて、一応ボスに類する敵を串刺しって言う。
「さて、とりあえず貝は倒して霧は晴れた。次はこの竹林か」
「本当に普通の竹林なんだがな」
「そうなんだよね~。邪天使本体は細長い建造物に見えたんだけど、竹だったのかな?」
「いや、ここから見るぶんには確かに建造物にも見えなくは無いか」
「でも、竹が生えたって事は次に邪魔してくるのはこの竹なんだろうな」
「そうはいっても、能力にあった訳じゃないし、本当に邪魔ギミック程度だろ?」
「つまり、本命の能力を発揮するまでの時間稼ぎか。この竹の効果だけ調べて今日は終わっておくか」
そして、全員で竹林に近づいて行く。
すると、竹と竹の間が詰まる様に、枝やら笹やらが覆い茂る。
強引に押し進めない事も無いのだろうが、本当にただただ邪魔だ。
竹と竹の隙間がみっちり、竹やぶ。能力も何も押し入るのが嫌になった。
「よし、今日はここまで!あとは有志に任せるわ!」
その場を立ち去れば、騎士殿がついてきたので、久しぶりに駄弁る。
「ふむ、隊長殿は本当に対邪神の化身の総大将になったのじゃな」
「そう、成り行きだけど。今回で聖石は4つ目を破壊できたから、後8個だから三分の一。先は長いね。それより騎士殿は外海に行ってたんでしょ?」
「うむ、そうじゃの。中々の冒険じゃったわい。初めて会う種族なんかが困ってたりしての。話の分からん鮫なんぞを斬ったりしたわい」
流石、騎士殿だな~。武闘派!流石最強のプレイヤーだわ。
「ちなみにこの後どうするの?自分は報告したら、また【訓練】で剣聖の弟子にボコボコにされるんだけど」
「何でまたボコボコにされるんじゃ?」
「いや、奥義を会得する為に、皮膚感覚を研ぎ澄ませろって言われて、目隠しして剣聖の弟子と戦ってるんだけど」
「それは難儀じゃの。とは言え集中するしか無いのぉ」
「集中ですか?大体余計な事考えちゃうんですけどね」
「まあ、がんばるのじゃ、じゃあまた次の邪神の化身攻略での」
【古都】の【兵舎】に戻り報告をする。ちなみに今日は兵長しかいない。
「おう、どうだった?」
「まあ、何とか4つ目破壊完了。次は本当にただの時間稼ぎの妨害みたいだから、どうするかなって感じですね」
「そう言うのは面倒でも地道にやるんだな。お前の得意分野だろ。ちなみに幕僚総監と軍務尚書は例の監視の件で動いてくれてるから安心して攻略に精を出せ」
「まあ、そのつもりですけどね。大きさ的に次は本体だと思うんですけど、それ倒しても続くんですかね?」
「さあな、聖石を全部破壊するまでは続くんじゃないか?しかし、想定よりペースは早いし、落ち着いて攻略したらいい」
ふーん、今のはAIとしての発言なのか、運営からのヒントなのか。
本当は純粋にゲームを楽しみたい所だが、流石に今回は責任重大だしな。情報の聞き逃しで、うっかりはやりたくない。
さあ、ぼこぼこにされに行きますかね~。
集中、集中・・・。
うん、なんかあの中央の竹が気になってしょうがないわ。
あの細長いシルエットが引っかかるんだよな~。
内部にダンジョンがある様には思えないし、きっと何か必要な要素が詰め込まれてる筈なんだけど。
残る能力は、攻撃を防ぐ透明の壁、強固な壁すら破壊する衝撃、瞬間移動、完全隠蔽、必殺の剣、遠くの標的を消し飛ばす破滅の光、炎を吹き出し加速、大量の瘴気の垂れ流し
攻撃を防ぐ壁だけだと、ただの時間稼ぎにしかならんしな。
衝撃に関しては、動かないのにどうすんの?だし。
あれ・・・そうなると遠くから撃てるものになるのか。動かずに攻撃するんだから、遠距離攻撃一択か。
瞬間移動から奇襲でもなければ、そうなるよな。
奇襲って現状どこに奇襲すんの?だし、いきなり大霊峰の先まで飛べるなら、じっくりやれなんて言われないだろうし。
すると、地中から魔素を吸い上げて、十分にエネルギーが溜まったところで、強力な一撃を発射か。
つまり、遠くの標的を消し飛ばす破滅の光か!
となると、あの細長い姿は砲身!一刻も早く破壊せねばな。
そんな事考えている内に、ばっさばさに斬り刻まれた。
本当に容赦ないな剣聖の弟子は。