403.酔生夢死
-服部半蔵-
玄蕃と【森国】【隠密】三羽烏の合同作戦。
編み出した水上方向式霧攻略法は玄蕃も一緒に試したが、意外といける。
タイミングに合わせて空気玉を割るだけなのだが、試行錯誤を重ねた精密な呼吸を玄蕃がフォローする事で、より完璧に遂行できる。
作戦前は食事、これは玄蕃の習慣だが合理的。
数値で表されているわけではないが、空腹度と言うのが設定されている。
ゼロになれば、そりゃ戦うどころじゃなくなる訳で、どこで補給するかって話になるんだが、
隊長はどこでも、まずは飯。
何か今日は山伏みたいな食事がいいなとか言い出して、
ゴマ豆腐に、茸と山菜の味噌汁に、菊と胡桃の和え物に、行者ニンニク・・・。
野営で食うものなのか?
玄蕃曰く、山伏は山で生活してるんだから野営食だよって・・・まあ玄蕃はちょっと変だから、仕方ない。
「魔石(中)準備良し!」
「空気玉準備良し!」
「宝剣準備良し!」
それぞれに体をほぐし、霧を直線に突っ切る構え。
一個目を小太郎が投げ、一瞬開いた空間に4人で突っ込む。
猿は残念ながらタイミングが合わないのでお留守番。
そして、次から次へと空気玉を投げ込み一瞬開いた道を速攻駆け抜ける。
邪天貝のいる場所まではそれなりの距離があるので、失敗する時は失敗する筈なのだが、
玄蕃のフォローが秀逸、安定感が違う。必要とあれば無駄玉でも平気で割ってくれるので、安心して突き抜けられる。
貝が見えたところで、魔石を取り出し距離を詰める。
それまで、何回見ても硬く閉ざされていた二枚貝が開き、中に聖石が見える。
だが、同時に貝の中にいたのは色鮮やかで、如何にも毒がありますとばかりの無数の触手。
イソギンチャクかよと思ったが、時既に遅し、触手に囚われ、貝の中に引きずり込まれた。
一瞬目の端で転がる玄蕃が見えたが、すぐに視界を失いどうなったか分からない。
まあ、元々食われて中から倒す作戦だし問題ないか。
気がつくと玄蕃以外が白い何も無い空間に放り出されていた。何かあるといえば、精々うっすら霧がかかっているくらいか。
「これが、貝の中か?もっとぎちぎちに詰められて、宝剣でじわじわ斬るのを覚悟してたんだけど」
「いや、どう考えても中じゃないだろ?こんなにはっきり周りが見えるのに何もない空間が中身な訳あるか」
「異空間に閉じ込められたか、眠らされて同じ夢か幻覚でも見せられてるって設定だろうな」
「魔石は無くなってるな。武器は持ってるから、とりあえず、宝剣でそこらじゅう傷つけてみるか?」
「だな!何もしないよりいいだろう」
そして、三人で適当に地面を傷つけまくるが、これと言って何も起きない。
「そもそもこの空間どこまで続いてるんだ?」
「さあな、とりあえず歩いてみるか?」
と三人でばらばらにならないように小走りで、真っ直ぐ進んでみるが、いつまで進んでも何も無い。
「じゃあ、俺が一人で進んでみるわ」
と、佐助が言い出すので、腰にロープを結んで進ませる。
すると、ロープがもういっぱいという所で、後ろから佐助が姿を見せた。
「無限ループかよ!」
「まあ、落ち着け!このロープを辿ればどこでループしてるか分かるんじゃ無いか?そこがこの世界の継ぎ目と見た!」
と言う事で、小太郎がロープを辿ると言うので、待機。
ロープを辿った小太郎が佐助が現れた方から現れる。
「どこでループしてた?」
「駄目だ分からん」
「こんなのどうすんだ?」
「予想だが、死に戻りしか出来ない牢獄なんじゃないか?閉じ込めた相手を何も出来ない状態にするみたいな」
「おいおい、まじかよ!兎に角ヒントが無いか探し回ろうぜ?」
そして、お互いの腰にロープを結んだ状態で、空間をそれぞれに探し回る。
小太郎にいたっては宝剣を振り廻し何とか空間を切れないか試してるし、佐助は地面をひたすら攻撃している。
しかし何も起きない。
「なぁ、腹へらねぇか?」と小太郎
「さっき、隊長の飯食ったばかりじゃないか」
「いや、減ってるな。もしかしたらこの空間は腹が減りやすくなってるんじゃないか?」
「・・・自分で死に戻りしないプレイヤーを空腹で殺そうって、本当に何もさせない気じゃねぇか。ひでぇ」
「絶対死亡トラップだなこりゃ、今回は諦めるしか」
「いや、武器もアイテムも使えるんだ粘ろうぜ!」
「粘ってどうすんだよ。一回外に出て作戦を練り直す方が、いいじゃねぇか」
「いや、玄蕃がいないって事は外で戦ってるかも知れない。もし異変があった時、手伝える事があるかもしれないだろ」
「それは、そうか。よし!一先ず忍者食でしのいで、待機だ」
「じゃあ、どうやって時間潰す?体動かすと空腹になるスピードが上がるんじゃないか?」
「俺、トランプ持ってたな」
「ナイス!半蔵!ばば抜きやろうぜ」
「いや、ポーカーだろ」
「ポーカーは半蔵強いじゃないか!ダウトにしようぜ」
「ダウトも半蔵は強いからな。何かもっと平等なゲーム無いのかよ」
「まあ、どれ位時間があるかも分からないんだ、色々やったらいいじゃないか」