402.三羽烏の作戦
「なんだ、今日はテンション低いな隊長」
「いや、最近【訓練】で目隠しされた状態で切り刻まれてるから、しんどくて」
「拷問じゃねぇか、よく耐えられるな」
「まあ、仕方ない事だしね。それで、霧どうする?」
「真面目に対応策が無い。触れるだけでぶっ倒れるレベルの酩酊だからな。遠距離で火精術うちまくって、熱して、蓋が開いたところを中身を斬るってのが一番現実的な案だ」
「もう、なんか精神状態がおかしくなってるじゃん。ちゃんと寝てるのか?」
「冗談に決まってんだろ。霧の外からじゃ火精術の射程距離に入らん」
「ちょっと真面目に考えてたのか」
実質自分一人しか突入出来ない。無限増殖は倒せたし、殻さえ何とかできれば戦えると思うんだけどな。
そこへ、なんか雰囲気を漂わせた三羽烏達。
自分の心の目には厳しい修行を終えた劇画調の漢が写っている。
「玄蕃、掴んだぜ。勝利への切符ってやつをよ」
「そうか、ずっと霧に突っ込んで何やってるのかと思ってたけど、真面目にやってくれてたんだな」
「ふっ、玄蕃の言う貝っての見たが、あれはどうやら独立してるみたいだな」
「え?そうだった?」
「ああ、あれなら、うまく行けば本体と引き剥がせるかもしれないぞ」
「それより、よく霧の中を抜けて邪天使本体に辿り着いたね」
「ああ、その話からするか?空気玉ってあるだろ?あれを割って、霧が空気の層に入る前に進んで、また次を割るんだ。一人じゃ無理だが、三人でローテーションすれば、空気玉の数だけ霧の中でも滞在できるって寸法だ」
「それって、右足が水に沈む前に左脚を出す水上歩行じゃん」
「その通り!つまり我ら忍びの物にしかできぬ技術だ。だからこそ我らは物にした!酩酊の霧歩行術をな」
相変わらず、変な方向に突っ走る奴らだな~。
「それで、うまくすれば引き剥がせる作戦ってのは?」
「うむ、あの貝近づいても大人しい。攻撃でもしなければ何もしない可能性がある」
「それは自分も思った。防御専門なのかなって」
「そう、確かにあの貝殻は硬い可能性がある。そこで、あの貝に紐かけて引っ張って、本体から引きずり離すってのはどうだ!」
「いくらサイズが大した事無いとはいえ、自分達4人で引きずり出せるとは思えないんだけど」
「だから、長いロープを引っかけて、皆で引っ張る」
「あのさ、どんな長さのロープ使うんだよ。しかもその長さのロープって重さどれくらいになるんだよ。さらに本体と引き剥がすのに、何キロメートル引っ張り続けるのさ」
「しかし、それ位しか方法が無いだろ?何気にこの霧は本当に厄介だぞ。単純に近づかせないって言う一点については圧倒的性能だ」
その後も土を掘って地下から近づく案。霧の上から飛び込む案など出るがいまいち。
「なぁ、玄蕃・・・敵は喉から手が出る程魔素が欲しいんだよな?」と半蔵
「予想ではね。魚型が魔素を集める為に魔物を丸呑みにしてた可能性は高いと思ってるよ」
「つまり魔素が足りなくて次の行動にでられない訳だ。でも霧はかかってるって事は、どうにかして魔素を確保してる筈だ」
「ああ、回復してないんだったら、ただのジリ貧だし、自分達が本体だと思ってるのが、実はただの張りぼてじゃない限り、どうにかして魔素を収集しようとするだろうね」
「つまり魔素の回収に当てがあるか、もしくは俺達の気がつかない方法で回収してるって事だ」
「そりゃね。自分の予想では本体の一部を切り離して、魔素の回収に行かせたと思ってるんだけど」
「それだと切り離した分体が帰ってくるまで、減り続ける魔素で粘ってるって事になるし、ちょっと違和感があるだろ」
「まあ、否定はしないね」
「やっぱり地下じゃないか?地下に根を張って、何らかの方法で魔素を吸い上げてる」と佐助
「地下に魔素ね・・・。大砦の地下って何があるんだ?」
「分からんが、ここの平原や大砦ってのは一応大昔からの激戦区で、そのせいで死体が残ったままになってスケルトンが歩き回ってるって設定の筈だ」と小太郎
「つまり【教国】地下墓地みたいに大量に魔物化した死体があるのかもしれないと」
「それは分からんが、大事なのは相手は魔素を集めてるって事だ。つまり大きめの魔石でも持って突っ込めば、敵内部に取り込まれるんじゃないか?」
「あえて、食われに行くってことか。でもそれで敵内部が一歩も身動き取れないほどきつきつだったらどうする?」
「その時は敵内部から、宝剣でずたずたにしてやろうぜ!特に玄蕃は環境適応とか言うの持ってて、そうそう身動き取れなくなったりしないだろ?」
確かに貝って事は外側が硬くて中は柔らかい可能性はあるか。
「じゃあ、餌になって内側から食い破る。カンディル作戦と行きますか」
「いや、それは流石にキモイ。あれだろ?魚の内側に侵入して食い破るアマゾンとかにいる奴。他になんか無いのかよ?」
「まあ、作戦名はいいじゃん別に、自分達は結局闇に生き影に消える者なんだから」
「そうだな、潜入破壊工作は俺達の専門分野だ。やってやろうぜ」