39.先輩隊長の頼み
■ 雪大蟹 ■
チーリイ川流域に生息する。ボス魔物
硬い甲殻を持ち 斬 射突に強い
ダメージを与えるには打撃武器が必須であろう
一部その他の攻撃が通る弱点部分もあるが狙うことはとても困難である
肉は食用 食べると状態異常にこそならないが 誰もがしゃべらなくなる
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小隊の活躍により必要以上の素材を手に入れた今の自分の装備はコレだ。
雪大蟹の冑
雪大蟹の胸当
雪大蟹の肩当
雪大蟹の腿当
突撃兎の上着
突撃兎のズボン
突撃兎の腹巻
突撃兎の剣帯
手袋(支給品)
長靴(支給品)
外套(支給品)
円中盾(支給品)
ロングソード(魔鋼)
ショートソード(支給品)
肩掛け剣帯(支給品)
アイテムバッグ6×6(食材保存機能付き)
支給品があれば問題ないやって言った頃とは大違いであろう。
っていうかここまでやる必要があったのだろうか?
でも、自分の部隊の連中は妙に満足げだ。コレで良いとばかりにうなずいてる姿を見かけてしまうと自分が間違ってる気がしてくるもんだ。
ちなみにくっついた装備スキルは、<跳躍>と<掴み>だ。スキルは取得したが、剣使いの自分に出番があるのかは、分からん。出てきた武技は『身代わり』掴んだ相手に自分の代わりにダメージを受けさせるらしい。えげつない。
ふと、社長が社員と言い争いになったときのことを思う。そういう時にいつの間にか出てくるのは自分の名前だ。
あいつが良いって言った。あいつにはすでに言った。あいつには許可を取ってある。
おかしいだろ?あんた社長じゃないか。何で普通の平社員に許可を取ったなんていう言い草が出てくるのか分からねえよ。自分が、良いって言うわけないだろ!もう、そんな事言うたびに社長の卑怯さが浮き彫りになってまた社員が辞めていくんだよ!
なんで、自分は装備品一つ更新するだけでこんなにトラウマを刺激されるのか、困ったものだ。
ついでに、余った素材を提出して報酬と貢献ポイントをもらったので、スキルを一つ追加<行軍>だ。
<指揮>の上位版だろうか、セットしていれば部隊の士気が上がり、20人の隊列をセットできる。今は 横隊 しかないけど、兵科ごとに横に並ぶだけだ。一応前衛・後衛には、分かれてくれる。
そんな折、先輩隊長から珍しく相談があるようだ。
「おう、実はよ。折りいって教えて欲しいことがあるんだ」
「珍しいですね、いつも自分が教わってばかりなのに、でも、自分に分かることなら何でも聞いてくださいよ」
「俺が【歩兵】辞めて【下士官】になった話は聞いてるかもしれないがよ。最近伸び悩んでてな。むしろお前に先越されちまって、どうしたもんか。悩んでてよ。もう直接聞いたほうがいいと思ったわけだ」
「それなら教官が言ってたけど【輸送】とか【管理】とか【座学】とかさぼっちゃ駄目ですよ。戦闘ばっかりやってたんじゃ、よっぽど抜きん出た戦闘力が必要らしいですよ?まあ、自分から見たら先輩隊長はかなり強いですけど」
「あ?お前は、教官じきじきにしごかれてんじゃねぇか、あまりいつまでも自分のこと過小評価しないほうがいいぜ?」
「【兵科】すっ飛ばしちゃったせいで、戦闘スキルが少ないんですよ。それに防御しか教わってないのに<皮殻甲>だし、どうなればいいんだか分からないですよ」
「<小剣><皮殻甲>取らせてそれ中心に【訓練】受けてんだろ?だったら、もうほとんど教官の直弟子同然じゃねぇの。いずれ、分かるか。それよりもやっぱり【管理】やらなきゃだめか?マジで、頭が痛くなるんだが」
「そもそもなんで、【歩兵】でも有名な剣士だった先輩隊長が【兵士】からやり直すなんてことしたんです?」
「そりゃあ、お前よ、結婚したからだろうが、【兵士】の給金がいくら安かろうと【ジョブ】が上がればよ。給金も良くなるだろうが、お前は貰ったそばから預けてるからわからねえか。」
「先輩隊長は既婚者だったんですね。じゃあ、なおさら危険なことばっかりやってちゃ駄目じゃないですか。将来、兵長や役長みたいな道も考えておく必要があるんじゃないですか?」
「そりゃあ、な。考えたことはあれども、頭が痛くなるからさ」
「まあ、強いて言うなら、一個づつ片付けることですよね。あれもコレもと最終形態を考えてなんてやろうとすると自分も頭痛くなりますよ。一個づつ片付けてそれでも遠回りになったらそれで仕方ない。その分体動かして補おうって考えれば気が楽になるんじゃないですかね?」
「なるほどな、将来の子供のおまんまの為にやってみるとするか・・・・そういや、子供で思い出したが【旧都】の北の【黒の防壁】あるじゃんよ?あそこの中隊長も結婚してるもんで、相談したりしてたんだが、最近【黒の森】の魔物が増えてるみたいでよ。何でもそこを狩場にしてた凄腕狩人が、狩場を変えちまったみたいなんだ。狩人が悪いって言ってるわけじゃないんだが、守備兵に怪我人も出てるみたいだし、ずっと警戒しっぱなしじゃきついだろうから、ちょっと応援行ってやってくれや」
「そりゃあ、チータデリーニさんは知らない人じゃないし、それは構わないんですけど、普通応援要請とかあるんじゃないですか?他の【士官】の方とか向かってるとか無いんですか?」
「ないな。まだ、中央が動くほどじゃないし【士官】って簡単に言うが少ないんだからな。特にこんな田舎には、な」
「少ないってことないでしょう?自分があっさりなれてるんだから、むしろ、はめられた勢いでしたよ」
「それだけ、兵長も教官もお前に期待してんだ。別に無理することはねぇが、自分を過小評価しすぎだぞ」
「そんなもんですかね?まあ、【兵舎】に帰ったら、聞いてみますよ。んで、駄目でも【輸送】ついでに顔位は出します」
「とりあえず、それで良い。俺は俺で、頑張って【管理】と【座学】やってみるさ」
とりあえず、【兵舎】に帰って【黒の防壁】のこと聞いてみますかね。