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385.第12機関長プレゼン

 「しかし、渡りに船とはこの事ですね。君をどうやってこの場に呼ぶのか、それだけがネックでね」


 「ああ、聖石ね。外見は出来たけど肝心の動力がって事かな」


 「ええ、その通り。察しがよいね。渡していただけますか?この偉業に最大貢献した下さった方として、僕としても今後君に協力を惜しむものでは無いですよ!何よりこの兵器が完成した暁には、邪神の化身を倒すたびに、こちらに対邪神の化身兵器が増えて行くのだから、どんどん僕達に有利に事が運ぶという物だよ!世界のバランスをこちらに傾け、世界を神の元に返す。僕達【教国】の最終目的への大いなる前進となるのだ。君の名も永遠に語り継がれるだろう!」


 「前にも言ったけどさ、ちょっとづつ段階踏んで実験しようよ。危ない事には加担しない」


 「そうだった、君はそういう意見だったね。ん~君の言い分も納得してしまう自分がいるのも確かなのでね~。しかし、起動自体は聖石3つもあれば可能だったりするのだよ。作動実験の結果を見てから、再考をお願いしたいが、いかが?」


 「なるほどね、いつの間に3つ目を手に入れてたのか知りたい所だけど、この場に12個揃っちゃったか・・・。でも今の所何も起きてないし、そうだね~・・・一個は成功、次が三個・・・いけたらもう一個渡す。うーん自分が渋ってる安全上の理由による段階的実験の要件は満たしたと言う事か。駄目とは言いづらいな」


 「やはり、話が分かる方で助かるね。3個目の聖石は君を見習って、僕なりに粘り強く交渉した結果ですよ。ちなみに何の聖石だったと思いますか?」


 「多分じゃがいもの石」


 「じゃがいもの石という呼び方は初めて聞いたが、正解。世界のどこでも育成できる農作物を望んだ聖石だよ。多くのヒトに利のある願いで最も善良な願いだったと思うね。これ一個で良かったかも知れない」


 「酒縁の玉もいいじゃない。皆がお酒飲めるのって幸せだよ」


 「ふふ、そこの議論は長くなりそうなので、これくらいにしてあっちの方に置いておくとして、今はこの新兵器の話。少しでも不安を無くし、積極的な協力をお願いする為にも、説明しよう」


 「そう、長くなるならお酒でも飲みながら腹を割って話す?」


 「流石に、これだけ機関長が集まる場所で、それはまずいね。まず、この兵器はまだ完成して無い」


 「動力が無いからでしょ?」


 「勿論それもありますが、今この外殻の内側は大量の霊子と魔素が詰められています。な~んでだ?」


 「いきなりクイズ。普通に考えれば、賢者の石みたいに霊子を魔素で変質させて、物質化する為」


 「正解!素晴らしい!では、何故そんな方法を選んだのか?」


 「・・・物質を魔素で変質させて使いやすい重量や丈夫さにすればいい筈なのに、何故霊子から作るか?形や性質を自由に作りやすいから?」


 「正解!本当に理解力があって助かりますね~」


 「話の途中で質問して悪いけど、聖石の燃料も魔素だよね。相当量の魔素が必要だと思うんだけど」


 「その通り。巨大魔石の密輸もその為、目的の為に手段を選ばなかった事は認めるよ」


 「いや、その件は形ついたし、第12機関長が補填したんでしょ?まあ、魔が差した連中にお灸を据えた事で、引き締めにもなったんじゃん?それよりさ、もしかして実験中に大量の魔素垂れ流さなかった?」


 「・・・よくご存知で。しかし、ここは世界樹のあった地、世界樹の側根のあった迷宮や空洞の先には宝樹様たちに繋がり、すぐに浄化されるし、そう危険な事にはなっていない筈だよ?」


 「なったよ。宝樹様が邪神の尖兵に襲われて、世界中倒しに回ったっての」


 「それは・・・隊長が宝樹様の件で世界を飛びまわり信用を得たと言う事は聞いていたが、そうか。それについては、調査団を派遣した上で、補償もしよう。勿論隊長にも」


 「まあ、自分は別にいいけど、渓谷とかは避難とかもしたわけだし、一応ね」


 「一応だとしても、安全確保についてはもっと考えなくてはならないね。その点については早急に案をまとめる事を約束しようじゃないか。しかし、この起動実験については、万全に計画を練った上でのもの!ご安心を!」


 「え?この状況で行く?」


 「その為に最低限数の最高戦力を集めて御披露目って訳だ!」


 「いやいやいや、それは絶対何かあっちゃいけないやつじゃん!駄目だって、なんなら自分だけ立ち会うから!」


 「いや!行く!聖石はもうセットしてあるので。後は起動すれば、聖石が最も力を発揮できる形状を自分で作り上げるだろう!さぁ!我らの栄光への第一歩!対邪神の化身決戦兵器『天使』の御披露目だ!」


 何故かやたらレトロな形の先端が丸いレバーを引き下ろす第12機関長。


 鐘の内部からブゥゥンと振動音が聞こえるが、上階の機械よりはよっぽど小さな音だ。


 「何も起こらないね」


 「いえ、今内部では最適な形状になるよう、霊子と魔素が混ざり合っている筈なんだが・・・ところで鞄が光ってるよ?」


 「え?うぉぉぁあ、あっっっつい!!」


 鞄からこぼれ出る8個の光る玉が、宙に浮き対邪神の化身兵器に向かって飛んで行く。


 「なんだい?今の!」


 「いや、知らんて、自分であの兵器作ったんじゃん」


 聖石を全部取り込むと同時に、大量の瘴気を吐き出す対邪神の化身兵器。


 即座に結界のような物を張り、瘴気から身を守る機関長達。


 ちなみに自分は結界なぞ張らずともなんとも無い。ちょっと濃度が濃くて匂いが・・・位か。


 「これは身動きが取れないな」

 「なんていう瘴気の濃度だ。流石にまずいぞ」

 「いざと言う時の備えのつもりで来て、全員身動き取れなくされるとは」


 色々言ってるけど、どうやら結界を張りながら移動とかは出来ないようだ。


 「いや、自分駄目って言ったし、まじで何やってるのよ」


 「危険な場所に部下だけ向かわせるわけ無いだろうが、特にこの世界樹跡の大空洞は危険も多いから普段から内部立ち入り禁止だというのに」


 「でも、第12機関はこんな底で兵器作ってたじゃん」


 そんな問答をしている内に、ゆっくり浮き始める対邪神の化身兵器。


 「くっ何か異変があれば、上の警備の者がすぐに救助隊を派遣してくれる手筈にはなっているが」


 「どうするの本当に」


 「・・・すまないが、隊長にあいつを追うのを任せてもいいか?」


 「あんなでかい物どうにも出来ないけど、追うだけ追って、第9機関長に話をつけるくらいならね。ところで指名手配ってどうなってるの?都で捕まるのはごめんだよ」


 「第13機関長の証を持ってるんだ。それの威光で押し通って、第9機関長に会うといい。第9機関長なら真実が全て分かる」


 はあ、仕方ないか。スカーフの力で浮いて、対邪神の化身兵器について行く。

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― 新着の感想 ―
[一言] >そう危険な事にはなってい筈だよ? いない筈だよ? ですかね? マッドサイエンティストの作るものが暴走しないわけもなく
[一言] 機関長達が張った結界のような物が、 『大量の瘴気を防ぐモノ』なのか 『動き出そうとする対邪神の化身兵器を閉じ込めるモノ』とかなのか 最後になるまで判別しづらくてもやっとした。 それ…
[一言] 「いやいや、どう考えてもフラグでしょ、やめなよ!…ほーら言わんこっちゃない!」ってRPGゲームの画面に向かって言いたくなるような経験を散々してきたのを思い出す笑 vrでリアリティあるなかで、…
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