382.金網デス(するまでやる)マッチ
宣言と共に、地面から生えてくる金網。
自分と蛇だけは透過して、食人鬼や穢王だけは押し出していく。
蛇のサイズに合わせたかのようなデカイ金網の立方体。
四方を不死者達が取り囲み騒いでいるが、決闘王の能力を使用した以上、干渉される事は無い。
蛇から黒い皮膜が生え、空中に浮くが、すぐに頭を金網にぶつけて落ちてくる。
羽ばたいている訳でも無いのに、浮くのはどういう原理か分からないが、
最初に落ちてきたのは、空中でこちらの様子を窺っていたからなのだろう。
蛇とにらみ合い、お互いゆっくり金網の対角線上を移動する。
蛇も状況を察した様だ。自分を倒すしかないと。
蛇の尻尾攻撃から、勝負が始まる。
尻尾の先端を食人鬼にしたように自分に突きたてて来た所をブロック、
氷剣術 氷点
動きを止め、
法術 ホーリーブレス
を掛けなおし、
武技 追突剣
高ダメージ技を持ってないのだから仕方ない。腹を一発抉る。
のたうつ蛇が、口から得体の知れない異臭のする液体を撒き散らすので、避けまくる。
必死で避け、時々剣で受け、何とか直撃だけは回避。
尻尾の先端を持ち上げ、こちらに向けてくるので、また突きかと警戒したら、
尻尾の先から、なにか細い物が飛んでくるように見えたので、大きく飛び退く。
自分がいた場所から異臭を放つ蒸気が吹き上げ、顔を顰めずにいられない。
スカンクかよ。
その後も尻尾から液を発射してくるが、その都度飛んで避ける。
近づけば斬られるし、尻尾で直接攻撃すれば硬直する事を学習したのかもしれない。
ならば、自分も遠距離攻撃だ。
顔に向かって発砲、撒き散る氷片が大きな的にバチバチ当たり、嫌がっている所をみると、氷も効くって事か。
尻尾からの射出攻撃が一瞬やんだのを見計らって、距離を詰め、斬りかかる。
数回斬った所で、顔の先端が開いた蛇が口の中から太い棘のような物を一本つき出し、
自分を狙って突いてきた所をブロック。
剣がジュワジュワ変な音をたてているが、多分酸とかの武器破壊じゃなかろうか?
しかし、霊亀のおかげで、壊れない。
寧ろ、硬直した所を顔を斬りつけてやる。ついでなので口から出てる棘を思いっきり叩いてやれば、
硬直が解けたところで、一気に仰け反り、相当嫌だったのだろう。顔を思い切り背けてきた。
棘を仕舞い、全身を震わせはじめた蛇、今度は全身から棘が生え、全身スパイク蛇に変形。
丸太のように地面に伸びて、横に転がりながら迫ってきた。
ベルトのバックルを回転させ、変身。
蛇装備に変更し、二段ジャンプで避けるが、辺りが真っ暗になり、何も見えない。
すぐに<索眼>を発動し、赤い世界に蛇を見る。
体を縮め、こちらに飛んでくる蛇を正面から受け止めるが、勢いに跳ね飛ばされた。
すぐに立ち上がり、距離を詰めた所に、スカンク攻撃。
飛んできた液体を避け<疾走>からの、
武技 払い抜け
蛇に一撃当てつつ背後を取り、剣で突き刺す。
そのまま、背中を裂く。
体を大きく振り、自分を振りとばす蛇。
金網にぶつかり、地面に落ちたが、この金網は特に電流とか流れているとか、そんな事は無いようだ。
普通に逃がさないだけの籠って訳だ。
さっきのを見る限りこいつは飛べるわけだし、そうなると遠距離攻撃が限られる自分にはきつかった。
金網デスマッチを選んでよかったわ。
さて、どうするか・・・。
時間を稼げば、武技も術もクールタイムが明けて、また手数が戻るし、相手は死体からの吸収を使えない。
粘れば粘るほど勝ち目が上がるのだから、焦らないのが今は大事か。
相手のスカンク攻撃を避けながら、銃をチャージしなおす。
パターンに慣れてきて、余裕が出てきた。
剣抜いておけば生命力も回復するし、クールタイムも一個また一個と明けて、自分はただただ元の状態に回復するだけ、
しかも<不動心>の鍛錬は戦闘中攻撃食らえば食らうほど、防御力上がるからね。
さて、ぼちぼちやりますか。
一先ず〔連結の首輪〕を操作し、精神力と生命力を連結。
法術 ホーリーブレス
準備O.K.
現状どこまで、この蛇を削れてるかって話だよな。
まあ、いいかちょっとづつ慎重にダメージを蓄積させていこう。
あのスカンク攻撃が面倒だし、今度は尻尾狙いますか。
発射タイミングを見極めて<疾走>からの、
武技 払い抜け
背後に回っての、二段ジャンプ、高く持ち上げられてる尻尾の先端を斬りつける。
さっきの口の棘同様に、大きなリアクションで反応する蛇に、
弱点を見つけ思わず、ニヤけてしまう。
しかし、急に蛇の動きが変わり、自分に巻きつき、締め上げてきた。
三角締めのように何も持っていない左手と頭だけ外に出て、右手も足も胴体も巻きつかれて動けない。
ギリギリ締め上げられ、継続ダメージに体が軋む。
辛うじて剣を握っているので、回復でダメージの蓄積は緩いが、どうにも逃れられる気がしない。
自分の防御力が増えるより、継続回復よりダメージの蓄積の方が早い。
なんなら継続ダメージの量が増えてきた。
蛇の全身からスパイクが生え、一気に削られる。
このままじゃ、完全にジリ貧、剣を手放し、左手の腕輪からダガーを出して、手首の角度で、
ギリギリ蛇にダガーの切っ先を当て<復讐>を使用。
大ダメージに拘束が緩む蛇、剣を拾い。
蛇から離れ、回復液を飲む。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、
ギリギリまで、削られてる。
しかし、蛇は蛇で、こちらを警戒して、対角で、待機して攻撃もしてこない。
癒丸薬も飲み回復の速度を上げる。
法術 ヒーリング
蛇装備のフードの下に仕込んでいるニキータが集めてくれたイヤリングが崩れ落ちた。
<法術>スキルを取得してないし、育ててもいない自分では回復量はしれているが、今は助かる。
ある程度、回復が済んだところで、間合いを詰める。
自分に近づかれるのを嫌がるようにスカンク攻撃を乱射する蛇。
また、巻き付かれない様に今度は迂闊に空中に跳んだりしない。
地面スレスレを
武技 追突剣
胴体を一撃。
口を大きく広げ一飲みにしてこようとした所で、口の奥に見える棘をぶっ叩く。
痛がるように仰け反った所で、胴体を斬りまくる。
苦し紛れに尻尾を振ってきた所をブロック。
ブロック成立で硬直。尻尾の先端を剣で突き刺し、
<青蓮地獄>
凍剣術 獄蓮華
もう、何にも残さないつもりで、全部注ぎ込む。
内側から膨れるように凍りついた蛇から剣を引き抜けば、
砕けて氷片が舞い散る。
飛び散った氷片が霊子に替わり、暗い地の底に光がふわふわ浮かぶと、
頭の中にファンファーレが鳴り、
クエスト発見者
ラストアタック
MVP
まずは勲章。いつもなら手の上から消える筈が、今までの勲章が手の上に現れ一つになり、勲章に文字が浮き出す。今は暗くて良く見えないが、一瞬文字が表面に光ったので、後で確認しよう。
次は皮膜のような素材のマフラーかスカーフなんだが、手の上でふわふわ浮いている。
もう一つは全身タイツ。蛇の全身スーツか、ついに蛇シリーズにまで全身タイツ認識されちまったか。
装備を一通り確認した所で、周りを見ると既に金網は消え、不死者たちに囲まれている。
一か八か、スカーフを首に巻くと、
体がゆっくり浮く。
浮くだけで、横移動なんかは出来ない。真っ直ぐ浮くだけだ。
不死者達が不思議な物でも見るように、
ただ、浮いて行くだけの自分をボーっと見送っている。