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381.不死の蛇

 どれ位下ったのだろうか、壁沿いにある細い土の坂道。


 暗さも限界なので、蛇装備から蟹装備に切り替え、頭だけは骸骨に変更。


 骸骨兜には暗闇視覚補正が付いているので、少ない明かりでも視界を確保できる。


 いつの間にやら、底に着いた。


 非常に悪い足場、死体を投げ込まれていた場所だと思うと気持ち悪いが、一応土の範疇だ。


 結構な広さだが、蛇はどこにいるのだろうか?


 ただ広いだけの空間に異常が無いか、見ながら歩いていると、


 前方にぎりぎりヒト型のぶよぶよのシルエットが見える。


 そして、きつくなっていく異臭。


 のっそりのっそりと、近づいてくるたびに震える全身は大量に水を含んだ水死体の様。


 「穢王かよ・・・」


 掲げた手に持った杭が、弾ける。


 剣と甲殻で急所を守るように立つが、どうやら弾けた杭は無数に分裂して小さな杭になって地面に刺さった。


 いつかの地面系デバフかと、すぐさま、


氷剣術 霜界


 自分の周囲を術で中和して無効化。


 しかし、自分が思っていたのとは効果が違ったようだ。


 自分の周りは何事も無いが霜界の範囲外から、小さな杭一本に付き一匹食人鬼が生えてきた。


 わらわらと生えてきた食人鬼に穢王が指示をすると、一斉に飛びかかって来る。


法術 ミステリアスサークル


 自分だけを囲み、押し潰されるのを防ぐには防いだが、どうするか。


 まずは、動きを少しでも有利にするために、


法術 ライトシフト

 

 暗かった地の底に明かりが溢れ、アンデッド達の挙動がおかしくなる。


 そして、同時に巨大な蛇が落ちてきた。


 どういう仕掛けか分からないが、どうやら上から様子を見ていたらしい。


 目の無い蛇。どうやって様子を見るのかは分からないが、今は食人鬼たちを下敷きにして、のたうっている。


 どうするか、次の方針もたたぬ間に穢王の手から放たれた太い杭で、サークルを破壊されてしまった。


 そして、再び食欲のままに向かってくる食人鬼達。


 ライトシフトと霜界で、動きが鈍い。


 兎に角急所に一撃食らわせ、硬直させて次を狙い、時間を稼ぐが、


 徐々に、覆い被さるように増えていく食人鬼達を捌ききれなくなってきた。


 腕を噛み付かれ、足にまとわり付かれ、どうしようもなくなった所にあざ笑うかのような動きで、


 蛇が頭から突っ込んでくる。


 何もないのっぺりした顔の先端が割れ、大口を開き、自分を一飲みにしようとした所で、


法術 ハローフラッシュ


 閃光が弾け、辺りのアンデッド達の動きが止まり、目を押さえて転げる事で、自分の拘束が解ける。


 同時にニキータが集めてくれた指輪が一つボロボロと崩れ、地面に落ちたところで光の粒子に変わり、


 動けるようになった自分はすかさず


法術 ホーリーブレス


 からの、蛇へ攻撃。


 巨体ではあるが、自分の一撃にダメージを食らい仰け反る蛇。


 つまり、自分の攻撃は十分に効くという事、


 問題はアンデッドが多すぎて、攻撃するタイミングが無いという事。


 蛇が尻尾を振るい、先端を食人鬼に突き刺すと、食人鬼が一瞬で干からびた。


 死者の血を吸い、無限回復か。隙を見てちょっと当てた位じゃどうにもならんぞこりゃ。


 死者って言うか不死者なんだけど、でも死体が動き出したんだから、死者なのか?動く死体と不死者の違いが分からなくなってきたぞ。


 まあ、なんでもいいや、とりあえずアンデッド。いや、アン、デッドだからやっぱり死んでないのか?


 死にぞこない?いや、魔素で死体が変質しただけだから、魔物扱いだし、魔物としては生きてる訳だから、不死者でいいのか?


 思考が、横道に大分逸れた。


 大量の食人鬼を捌くのに集中しすぎて、いや焦りすぎて、変なこと考えちゃった。


 時折、飛んでくる穢王の杭を避けながら、食人鬼達を突き刺すが、全然数が減らない。


 そして、穢王の腹が割け、空中にヘドロが放出され、それが雨のように降ってきた。


 ヘドロに当たりばたばたと倒れていく食人鬼達、自分にも一滴当たり、それだけで体が動かなくなる。


 動かない自分に余裕を見せる蛇だが、さっきのように迂闊には近づいてこない。


 穢王が再び小さな杭を撒き散らし、食人鬼達が地面から生え、ヘドロに触れたものはすぐに倒れるが、


 それでも数を増やして行く食人鬼達。


 勝ち誇ったように近づいてくる蛇、


 自分では何もせず、美味しい所だけいただく、そう言う腹づもりか。


 まあ、普段は自分が他人を指揮して一体の魔物を集団で殴ったりしてる訳だが、こんなに醜悪か?


 まあ、一対多数でやるのは確かだし、そこは受け入れよう。自分も同じ事をしてると。


 でも、報酬を独り占めしたりしないし、戦う意味も共有してるつもりだ。


 強敵に人数集めて挑まざるを得ないのは仕方ない。


 自分はこいつらにとって、強敵か?


 この蛇にとっては弱者をいたぶって弄んでるようにしか見えない。


 自分はそう言うの嫌いだわ。


 まあ、でも自分はこいつらのテリトリーに侵入した部外者だし、排除されても仕方ないのか?


 いずれにしてもただで負けるのはごめんだね。


法術 ピュリファイ

 

 ニキータが集めた指輪がまた一つ崩れる。


 動き出した自分に蛇が一瞬警戒し、代わりに穢王が食人鬼達に指示を出す。


 飛びかかって来る食人鬼を無視して、蛇を指差し宣言する。


 「デスマッチだ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石にモンスターに報酬の配分の概念はない よね?
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