380.大鐘
リフトから足が離れ、ニキータについて行く。
と言ってもニキータだって上の方しか知らないって話なのだから、自分も探索する必要がある。
あちこち朽ちて、途切れる通路。
多分金網と支柱で固定されていたであろう通路があちらこちら落っこちていて、どう進むか迷いどころだ。
扉が朽ちて無くなり、壁も崩れている部屋に入って行く、
元々何があったとも分からぬ棚の間を抜け、室内の通路に出る。
妙に長い通路を歩いていると、壁の隙間からゾンビ犬が飛びかかってきた。
しかし、殺気はバレバレ、飛び込んでくるのに合わせて、喉を一突き。
放り出して、頭の後ろ首骨を叩き折るように殴れば、あっという間に倒せた。
ただのドッキリゾーンか~。
通路を抜ければ、部屋の隅に梯子が一本。
しかしその梯子はいかにも後付ですとばかりに新しい。
取り合えず、穴の底に向かうしかない自分としては、怪しいと思いつつもその梯子を下りる他ない。
その階も上と似たような物で、古い施設の床は殆ど抜け落ちて、壁際の部屋の端に梯子がかかっているのを見つけては、下りる。
何度繰り返しただろうか、いつの間にか地面の材質が何か違う。
木とか石とか金属とかを組み合わせて小奇麗になっている。
ちゃんと部屋の壁もしっかりしており、一箇所だけ外に出られる扉があるので、出てみれば、
目の前には何かの建造物の天辺。
そこに繋がる細い通路。
通路に出て、下を覗けば、建造物は急な山型?細長い山のような・・・。
天辺は丸く、大よそ円錐形の建造物だが、なんの目的の為に作られたものかは分からない。
通路を抜け、さっきいた部屋の真反対からは、壁沿いに階段が続いている。
上階のような頑丈そうな現代建築鉄筋風ではなく。
急にゲームの世界に戻ったかのような。不安になる木製階段。
壁に板を打ち込んであるだけのようだ。別にギシギシ言うとか沈み込むとか、そんな事は無いんだが、
普通にまだ底は見えないし、不安しかない。
こんな所で敵でも出てこれたら、足場が無い。
しかし、壁際を降りながら、中央の建造物を横から見る形で観察していると、どうやら銀色の鐘みたいだ。
鐘と言えば、青銅のイメージだが、色は多分銀。
あまり明るくは無いが、所々に明かり用の石が置かれていて、真っ暗と言うほどでもない。
ぼんやり映し出される銀色の鐘の表面には何か刻まれているが、自分の位置からではよく分からない。
途中、中央の鐘に向かう通路が何度か設定されているが、無視して階段をひたすら下る。
しかし、こんな山みたいなサイズの鐘を誰が造るんだかな。
所々、壁際に部屋が設置され、施設の様に見えるが、
正直上階の堅牢さと比べると、何か怖い。
木を土壁に打ち込む工法ってどうなの?自分ちょっと分かんない。
それでも階段は崩れたりする事無く地面に着く。
ここが一番下か?
ちなみに鐘は、石台に乗せられている。多分石だと思うが、実際の材質は分からない。
地面は久しぶりの現代的な鋼鉄風。
なんだろう・・・、溶鉱炉の蓋の上に石の台座乗せちゃった感。
これ、下手に操作したら、この床開いてこの台座ごとこの鐘落っこちちゃうんじゃないか?
鋼鉄の床があからさまに斜めにスリットが走ってるのよね。
コンソールが無いか、鐘の周りをぐるっと巡ると、
少し上に現代的な部屋が一個、
梯子も無ければ、階段も無い。朽ちかけの部屋に見える。
まあ、とは言え大した距離じゃない、
土壁だろうがデコボコしていれば、自分の<登攀>スキル範囲内だ。
登りやすい場所を適当に登ると、部屋の中には案の定コンソールが設置されていた。
動力は来ていないが、壁にクランク棒が掛けて置いてある。
先端が四角くなっているが、部屋の中は取り合えず合う場所が無い。
一旦鋼鉄の地面に降り立ち、地面をずっと慎重に観察しながら、歩いていると、
壁際に、合いそうな四角い模様を見つけたので、クランク棒を差して回す。
はじめは動かなかったが、別に駄目元だし、壊れてもいいやと強引に回せば、
鋼鉄の床の一部、足元が少しづつ、下がっていく。
もう回らないという所まで回し、斜めになった床を降りて行く。
まだ、地下の深さはこんな物じゃなかったようだ。
それにしても、異臭が漂い、尋常じゃない雰囲気。しかし暗くて辺りは良く見えない。
床の一部で出来た坂はすぐに終わり、嫌な湿気を感じる地面の感触に変わる。
緩やかな坂を下り、
上を見れば、上の方は光が漏れていて、石の台座が見える。
つまり鋼鉄の蓋の中央は元々開いてたわけか、そこを塞ぐように石の台座を置いたと。
吸う空気が澱んで気持ち悪い。
壁沿いをぐるぐると、慎重に進む。
湿った床に滑らないように。
ここで転んだら、心が折れかねない。