378.明らかに機械文明
ロッカールームは、特に何も無かった。
と言うのも、折角のロッカーが一つも開かない。
細い縦スリットが扉に付いているので、カードで個人認証するのかもしれない。
隅々まで探したが何も無し、カードが一枚くらい落ちてないかな?とも思ったが、駄目。
「ここらは一応探索が入ってるし、これと言う物は残ってないよ」
そう言われたのに、散々探した挙句時間を無駄にしてごめんなさい。
「それで、ここからどうするの?」
「こっちから部屋の外に出られる」
ニキータについて行けば、かなり大型のリフトの様な物が設置されている。
リフトの操作盤を探していると、
「こっちだ!」
と、ニキータがリフトを壁際に固定してるシャフトを指差す。
どうやら、このリフトは壁沿いを丸く斜めに降りて行くスタイルらしい。
「うん、取り合えずこのリフトを動かす方法を探そうか。エレベーターも使えたんだし」
「リフト?この柱を伝っていけば、下に降りられるんじゃないか?」
「前にそうやって、降りたの?」
「いや、ここまでしか見た事ないな」
「じゃあ、ちょっと待っててよ調べてみるから」
「またか・・・」
まずリフトの操作盤はすぐに見つかった。
運転スイッチを見つけたが、押しても反応しないので、さっきのエレベーター降りてすぐの部屋に戻る。
横に広いパネルに無数に並ぶボタンを一つ一つ確認して行く。
「ところで、ここは何なの?あからさまに外とは文明が違うけど」
「詳しい事は分からないが、遠い昔に邪神の化身に負けて消えてしまった国の文明だそうだ。世界樹無き後もこの場所には精霊の力や霊子が集まる。それゆえの施設だろうと」
「エレベーターが生きてたのは?」
「さっきの昇降機か?理由は分からないな。決まった場所から場所に移動する箱だが、ポータルの方が便利じゃないか?」
ん~エレベーターだけ別に動力源があるのかな~?
遠い昔の施設だもんな。このゲームで言う遠い昔は本当に昔だからな。
壁際に謎のボックスがあった。自分の予想だとブレーカーなんだけど・・・。
蓋を開ければ、あからさまなでっかいレバー。
電気用だとしたら、発電所か!って言いたい所だが、発電所に入ったことは無いのでただのイメージだ。
握りの部分を力を入れて握れば、レバーが内に入り、ロックが外れ、
そのまま持ち上げれば、部屋に電気が点く。
いかにも巨大な電気基盤やファンが動き出した大きな重低音に、ニキータが驚いている。
「多分これで、動かせるはずなんだけどな~」
「何だこれは?」
「ここの施設のなんだろ・・・エネルギーの供給を再開したって感じかな」
「どこかで、貯めていたエネルギーを動力に注ぎ込んだのか、それで何を動かすんだ?」
「いや、壁沿いを降りるんなら、リフト動かすに決まってるじゃん」
「さっきも言ってたリフトって何だ?」
「そこの壁の支柱に繋がってる床だよ。それは多分柱沿いに壁際を回りながら降りて行く設備だよ。多分」
「そうなのか、私には分からないから、任せる」
どうやら、エネルギー供給が成功した事で、信用されたようだ。
コンソールを取り合えずいじっていると、穴の方が見える窓に映像が映り始める。
色々と文字が書いてあり、普段習っている物と全然違うが、
<探索者>に<言語>が入っているので、余裕で読めちゃう。こんな所で役に立つ便利なスキルだ。
取り合えず、この部屋でリフトにエネルギーを供給する。
見る限りあちらもこちらも断線しているようで、リフト以外はちょっと良く分からない。
しかし、エネルギー源て何なんだろう。文明が無くなっても動く発電所でもある?無いよね~。
まあ、でも大昔の施設が未だに動くんだから、無いとも言えないのかな。凄い文明だ。
取り合えず表に出てリフトに乗り、操作盤をいじる。
轟音と共に動き出したリフトだが、すぐに音が収まり、
ウィーン・・・と妙に軽い音をたてながら、徐々に下に降りて行く。
ニキータは怖い物知らずなのか、リフトのギリギリから平気で地の底を覗いている。
自分は怖いので、いつでも支柱に飛び移れるように、一番壁側に立っている。
そこに、空中からリフトの真ん中に何かが落下し、リフトを揺らす。
危うく、ニキータが落ちそうになったが、何とかセーフ。柵があったので、そこに掴まり、何とか飛ばずに済んだ。
ニキータのほうに近づきたいが、落ちてきたのは食人鬼。
ぶるぶると震えていたのが、徐々に静かになり、こちらを見る。
法術 ホーリーブレス。
リフト上の戦闘だ。狭い範囲で、うまく立ち回らねば。
一息でジャンプし飛びかかってきた食人鬼の首を突き、横に倒す。
本能のまま噛み付いてくるだけの不死者だ。口の中を狙い突き刺し、
そのまま、剣を引き抜きながら振り回し、リフト外に放り出す。
まずは一匹。
先はまだ長そうだ。これだけじゃ絶対終わらないよな。