374.砂地の部屋
小休止を終えて奥に進めば、ヒトの気配がしたので、
流石の忍者集団、すぐに壁際に取り付き気配を消す。
前にはプレイヤーと思わしきパーティが、警戒心も無くのんびり進んでいる。
男女混合で賑やかな雰囲気に、三羽烏が歯噛みしてるようだが、
多分ファミリーとかそんな感じじゃん?
小さい子っぽい一際小さな姿も見えるし、ドワーフじゃなきゃ子供でしょ?
まあ、骸骨がいっぱい出る洞窟で、ファミリー連れってのも逆におかしいのか?
そう考えると、このゲームいくら表現は多少マイルドにしてるとは言え、全年齢対応だったっけ?
いや、しかしもしかしたら幼い子が入院しなけりゃならない状態で、このゲームだけが家族の団欒の時間だとしたら?
くっ、この家族の笑顔、守らなきゃ!
歯噛みしてる三人にこっそりと自分の予想を伝えると、全員目頭を押さえたり、額を抱え天井を向いたりしてる。
全員の心が一つになった所で、家族の後を追う。
時折現れる骸骨やゴーストをきゃっきゃきゃっきゃと倒す子供を見て、ほっこり。
皆そこそこ出来るようだが、メインはハーフプレートのタンク役とローブ姿の女性術士の様だ。
各々役割がハッキリしてるし、いつも組んでるパーティなのだろう。
連携がよく、無理のない狩りである。
子供は剣とか使いたがるのかと思いきや、意外と弓使いの上、ちゃんと当たってる。
集中できてる事も見て取れるので、小学生くらいだろうか?
そのまま奥に進めば、
洞窟の奥の砂地に光が差し込む、なんとも幻想的でいながら、砂の底はどうなってるのか不安になるような景色。
明らかに何か有ると思われる砂地に子供が走って行き、
「あった~~~」
と叫ぶと同時に砂が、あちらこちら盛り上がり、
ぞろぞろ骸骨と大小のゴーストが現れる。
剣、弓、槍、斧など様々な様々な武器を持つ骸骨達。
大小のゴースト達はふわふわと宙に浮いている。
さっきとは違い指揮官はいないようだけど、中々に数が多い。
子供は砂地から剣のような物を拾って、
部屋の通路側、砂の無い場所に居る家族の元に戻った。
戦闘体勢を取り、砂から上がってくる骸骨達を迎撃し始める。
しかし、斧持ちの強力な攻撃で前衛が動けない間に、槍の攻撃範囲で後列を狙われ、パーティの歯車が狂い始め、
そこにゴーストのデバフが飛んできたところで、完全に崩れたと見た所で、自分達も飛び出す。
佐助と半蔵でゴーストをひたすら牽制。
佐助の術と術の乗った手裏剣が、ちくちくと相手にダメージを与えながら、相手を妨害。
半蔵の緑のエフェクト、風精術は範囲拡大なのだろう。振り回すことで、範囲攻撃を繰り返す。
そして、地上の骸骨達は自分達二人と一匹の仕事。
パワーのある猿がどんどん相手を崩し、小太郎が的確にダメージを蓄積させ、とどめをさしていく。
自分は家族を守りつつ、骸骨達を止める。
徐々に劣勢を巻き返し、敵が一体減るごとに楽になっていく。
ファミリーも冷静さを取り戻し、それぞれの担当に戻れば、磐石。
元々この狩りはファミリーの物だし、援護やいざと言う時の防御に回りフォローしている内に、
倒しつくす。
「すみません、助かりました」
と年長っぽい戦士風斧持ちの男性、お父さんって感じの人。
「いや、こちらこそ横から手を出してしまって」
「いえいえ、どうやって脱出しようかと思ったので」
そんな感じで、お父さんとしゃべっていると、
ハーフプレートと術士は兄妹らしく、向こうで三羽烏と話してる。
【隠密】が実在する事にかなり感銘を受けているようだ。
子供はお兄さんたちの影に隠れながら忍者に興味津々の様子。
自分だけちょっと格好が違うと言うか、陣羽織まで装着してるので、お父さんが代表して話しかけてきたみたい。
「それで、こちらにはクエストで?」
「ええ、街で剣を落としてしまった【兵士】さんから依頼を受けまして、家族で来てみた次第です」
「魔物の数も多いし、そこそこの難易度だったみたいで」
「ええ、もう少し冷静に立ち回れれば良かったんですけどね~」
「ところで、家族連れって事ですけど、一家全員でこのゲーム手に入れられたんですか?」
「ええ、いや、まあ・・・」
???
「うちの旦那が、雪かきの最中に落ちて長期入院になっちゃったのよ。さらには上の兄妹揃って遠方の学校に行っちゃって、下の子が元気無いからって、旦那は実験用、私と下の子は奮発してこのゲーム買って一緒に遊んでたら、兄妹もいつの間にかアルバイトしてお金貯めて買っててね。何のために遠くの学校にまで行かせたんだか・・・ちなみに幼い子がプレイする場合は親同伴が求められてるから、親の分は割引されるのよ・・・」
古今東西お母さんの話は長い。
しかし、一先ず幼い子の方が、入院したんじゃ無くてよかった。親が怪我していいとかそう言うことじゃないが、子供が入院とか心がやられる。
そして、一通り回復を済ませて、その場を去る家族連れ。
最後に子供がグーを二つくっつけて顔の前に出すポーズをしていたので、
印を結んでるのかな?と適当に知ってる印をしたら、三羽烏も乗ってきて、
子供が大喜びだったので、全て良し。