370.蛇の話
今回は【王国】の隠れ家、いつも通り自分が帰ってくると後からすぐにやってくる上司に報告をする。
相変わらず聖石を手に入れたかどうかは、ぼかしての報告だが、分かってるだろう。
最早何の得があるわけではないが、自分と上司の遊びのようなものだ。
さもお互い隠し事をして、お互いの隙を狙っているぞって言う、雰囲気だけの遊び。
一先ず装備品のメンテと必要物資の調達だけ済ませるが、なんとも装備品達もだいぶ襤褸くなったもんだ。
蟹装甲なんかは別として、世界一周クエストの頃に手に入れた装備なんかは大半が使い込んでしまった。
一度は完全に耐久値を回復した手袋も、代わりの無い大事な物なのでずっと使い込んでて、結構ヤバイ。
最低でも手袋とブーツの予備が欲しい所だ。
普段使いのノーマル品はあるが、ここぞって時に使える装備が・・・。
剣聖の弟子の〔韋駄天の足袋〕が羨ましくなってきた。
何となく気になったからって外套選んだ、ちょっと前の自分が恥ずかしい。
偶に衝動買いとかやっちゃって、後で支払いとか困って、仕事をいつでも辞めてやる!とか出来ない自分がこんな所で出てきちゃうとは。
〔羅紗の羽織〕 視認妨害
気配低下
とまあ、色味や見た目も気に入ったけど、効果もなんか悪くないみたい。
要は相手から見づらく、気づかれにくくなるんだってさ。
うん、これはこれで使える。陣羽織なんだから士気系かとも思ったけど、大将が奇襲を避けるものなのかね?
まあ、自分に使いやすいのは間違いないから、これで良かったんだと思っておこう。
そして、ニキータとの内緒話。
「それで、蛇の話だけど」
「場所は分かってる。世界樹のあった大穴だよ」
「第12機関が封鎖してる所じゃん。でも、そんな大蛇が暴れてるなら、開発もおじゃんかな?」
「詳しい事は分からない、残念ながらね。でもまあ、身内の施設さ。侵入のしようはある」
「そ?でも、相手が巨大ボスで、100人とか連れて行かなくちゃならないなら、大変だよ?」
「一応こっちで、蛇関連の情報は集めておいたよ。どうやらサイズはそれほどでも無いらしいね。伝説では元々世界樹の根を齧る巨大な蛇だったらしいけど、今では死者の血を啜る蛇となったらしい」
「微妙に分かりづらい。世界樹が無くなって形態が変わったのは分かった。問題は死者の血を啜るの所。だってかつての13番目の番人の時代に【教国】地下が墓地になったんだよね?肉体を残す為に」
「いや、その前から邪神勢力との戦いで死んだ者が、瘴気を受けて肉体を残してしまい、それを埋葬したのが始まりだよ」
「でも、埋葬を始めるまではその蛇どこにいたのよって、話じゃん?」
「この大陸で最も邪神勢力との戦いが繰り広げられた【王国】の平原、世界樹なき後、蛇はその平原を自在に闊歩していたらしい、しかしそれをそのまま放置してはヒト達は生活出来ない。それでいつか肉体の残った者達が浄化され霊子に帰れるようにと世界樹のあった大穴に投げ込んだり、大穴近くに埋めたりしたのが、あの地に埋葬する風習の始まりらしい」
「それで、食べる物が安定した蛇は世界樹の大穴に引き篭もってるって訳か。でも世界樹の根を齧ってた時ほど大きくはならないと」
「そうだね。つまり、単独で倒せるサイズの蛇だよ」
「それにしたって、単純な相手じゃ無いんじゃないの?蛇って強かったよ」
「そりゃあね、でもアンタからしたら蛇が強かったのは、前の話。多分今なら倒せない事も無いでしょ?」
「死体の血を啜るんでしょ?そうなったら無限回復とかそれ系じゃ?」
「アンタも無限回復じゃないか?」
「それじゃ、決着つかないじゃん。なんか考えないと」
「動く死体を近づけない何か・・・ね。いつも行き当たりばったりに見えるのにね」
「情報があって、準備が必要な時は、一応ね」
「まあ、動く死体関連は【教国】の得意とするところだからね、そこの準備はするよ」
「分かった。そこの準備が出来たら、蛇狩りと行こう」
まあ、宝樹の周りに現れる蛇だけあって、次は世界樹の跡地か。
アンデット対策と潜入は任せるとして、自分は自分の準備を整えなきゃな。
それこそ蛇セットは潜入に向いてるけど、すっかり使い減りしている。
戦闘のベースは蟹装甲か骨鎧、鮫服、仮面か骸骨兜として、やっぱり末端を守る装備が不足している。
飛蝗服、飛蝗長靴もあるが、これも手に入れたのはだいぶ前だしな。
すんなり戦闘力に直結するようなブーツとグローブが欲しい。
と言っても、殴る蹴るでダメージが無い自分が、攻撃的な物を装備しても意味をなさない。
掴む能力が上がるグローブ、移動力が上がるブーツ。
これらがあれば、だいぶ助かるんだがな。
今更ながら蛇セットは本当に使い勝手がいいわ。
特殊効果の物が多くて、防御力は低いんだけどさ。