355.相方
守護者はあっさりと見つかった。
とはいえ、向こうは身分もあることで、早々簡単に会えるものではなかったが、
正確に言うと守護者と戦う方法が見つかった。
何でも代替わりの御披露目も兼ねた、試合があるらしい。
国の内外問わず、広く猛者を募集してるから、参加してみれば?と普通に道端で話を聞いた、おば・・・ご婦人に言われてしまった。
自分の面に全く怯む様子も見えない肝っ玉ご婦人のおかげで、滑り出しは快調。
「守護者様は二人一組だから、相方探さなきゃね!」
「え?相方?」
「ええ、最低限の参加資格よ?友達くらいいるでしょ!」
「とも・・・だち・・・?」
なんか悲しい生き物を見る目で、肩に手を置き、
飴の様な物を一つ手渡して、どこかに行ってしまった。
飴を舐めながら、街の外れの人通りの少ない道をうろつきながら考える。
こういう試合が好きそうで、自分と組んでくれそうな友達って誰よ?
第一候補は騎士殿か、何せプレイヤー最強だし。
次の候補はガイヤ、何せ闘技場最強だし、タッグマッチとは言え正面から戦えば、間違いなく強い。
後は、赤騎士とか?
ああ~、小次郎と別れずに一緒に戦えればな。道中腕を見る限り結構な腕前の筈だもんな。
歩いても歩いてもそわそわするばかりで、考えがまとまらない。
仕方が無いので、適当な屋台でかけそばを頼み、啜る。
蕎麦が腹にたまり、汁を飲みきり、大きく息を吐くと同時に、
「ああ、騎士殿がいればな~」
「その声は隊長ですか?」
急に正体がバレた事に驚き一瞬で飛びのき臨戦態勢を取る。
しかし、声を発した人物をよく見ると、いつの間にか自分の横に座り、そばを食べてた華奢な男性。
腰には太刀を佩き、顔の上部だけを隠す狐面をしている。
しかし、その髪の色と所作を見れば、正体が分かった。
「剣聖の弟子か、久しぶり」
「お久しぶりです。何か悩み事ですか?」
「ちょっと、守護者と戦いたくて相方をどうしよっかってね」
「そうですか、それは渡りに船ですね。丁度僕も同じ事を考えてたんですよ?」
「え?剣聖の弟子はPKなのに守護者と戦いたいの?」
「ええ、まあ、僕も、もうすぐ食べ終わりますので、そしたら食後のおやつにでもしながら話しましょう。近くにおススメの甘味処があるんですよ」
「個人的には酒処の方がいいんだけど」
「僕はお酒が飲めませんし、昼日中から飲むのは少々退廃的過ぎますよ」
その通りなので、そばを食べ終わった剣聖の弟子と甘味処へ。
「僕は餡蜜を貰います。隊長は?」
「じゃあ、自分は白玉で」
お互いに注文をして、向かい合う
「さて、隊長の目的はなんです?力試しとかって訳では無いですよね。そう言う性格じゃないですし」
「まあね、隠しても仕方ないから言うと守護者の二人が持ってる石が任務で必要でね。そっちは」
「一つはこの試合に勝つことで貰える宝物、もう一つは師匠から皆伝を貰う為の試練ですかね」
「へぇ遂に剣聖の弟子は剣聖になるのか。自分は最近【訓練】出来てないし、まだかかりそうだな」
「隊長は元々集団戦もやれば【輸送】もやって、今では指名手配犯、背負う物が多すぎますよ。大器晩成タイプなんじゃないですか?」
お互いの甘味が届いた所で、それをつつきながら会話を続ける。
「それで、タッグマッチらしいけど、相方はどうするの?」
「さっき渡りに船と言ったのはその事ですよ。僕としては隊長と組むのが一番かと思っています」
「なんでまた。自分より戦闘に特化したヒトはいくらでもいるだろうに」
「なるほど、隊長は今回の試合のルールを理解してないみたいですね」
そう言いながら、鞄から取り出した紙を開き見せてくれる。
そこの内容を要約するなら、
・【森国】は様々な地形が狭い地域に重なって出来ている為、守護者はどの地形でも戦えねばならない。それゆえフィールドを開放するので、その範囲内なら好きに戦っていい。
・しかし、ずっと隠れていたのではつまらないので、徐々にフィールドは狭くなっていく。
・戦闘には数日かかることが予想されるので、サバイバル能力か、数日生活できる物資の持ち込みをすすめる。
・数日かかるが、フィールドは陰陽の秘術によって時が早く進むので、実際にはそこまでの時間はかからない。
・様々な環境での戦闘を試される為、武器防具道具に至るまで装備できる量に加え鞄に入る量なら持込自由
・NPCにはプレイヤーのアイテムバッグに似た効果の袋が貸し出される。
・必ず二人一組で登録する事、魔物を使役する場合は魔物一体をヒト一人とカウントする。
「いつだかのイベントみたいだね。時間の進み方とか」
「あのイベントでデータが取れて、完全な認可が取れて正式にクエストに組み込まれたんじゃないですか?しかし、道具も装備持ち込み放題ですからね。あくまで全力戦闘がメインですよ」
「なるほどね、この条件なら、三羽烏が強そうかもな」
「ああ、会った事がありますよ【隠密】の三人ですね。中々の使い手で久しぶりに冷や汗が出ましたよ」
「会ったんだ?愉快な三人組だったろ?」
「ええ、奇襲されましたよ。隊長が指名手配になってすぐの頃にね。僕は不利な状態の相手を追い込むのは趣味じゃないと話して分かり合えましたね」
「奇襲されて分かり合えたとか、大概だよね」
「そうですか?彼らにとってはそれが戦闘スタイルですから、正々堂々とした奇襲に感心しました」
あっそう・・・、戦闘マニアの考える事は分んない
「じゃあ、自分が剣聖の弟子改め剣聖とやる時は1,000人率いる事にするよ」
「はは!皆伝したからって、いきなり剣聖は名乗れませんよ。未だに師匠には徹底的にやられるんですから、しかし1,000人ですか・・・確かに隊長はそちらにも振ってますからね。1,000人を掻い潜り、隊長と決着をつけるのも、胸が高鳴りますね。まだまだ先の事にはなりそうですが」
これだからさ~、自分は嫌だっての、しかも1,000人目の前にして胸が高鳴るの?
あ~でも、フィールドを自由に使って逃げ回りながら各個撃破しつつ、徐々に相手の選択肢を奪って、大将の首を取る勝負とか楽しそうだな。
相手が自分を追い詰めなきゃならないって言う条件は付くけども・・・。
う~む。