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350.牛鬼

 「悪いな、ちょっと足止めになりそうだ」


 「別に気にしないけど、なんか他人に害がある物が出たんでしょ?」


 「ああ、そうなんだ。牛鬼ってのは狡猾な人食い鬼でな。出たらすぐに討伐対象になるんだ」


 「狡猾ってのは、どういう事?」


 「普通の魔物の様に野性で襲いかかってくるタイプじゃなく、ヒトを騙して捕食する」


 「そりゃ、嫌な相手だわ。それで何で烏天狗が?」


 「うむ、牛鬼は総じて毒を吐くから普通のヒトでは近づく事すら出来ん。烏天狗は風精の扱いがうまくてな、毒から身を守れるのだ。しかも剣の達人でな。厄介な相手が出ると頼む事になる相手だ」


 「なるほどね、だから弓か。自分は見学になりそうだね」


 「ああ、そうしてくれ、牛鬼の毒は煙の様な物で吸わなければなんてこと無いが、風に乗って結構な範囲まで届く事があるから、くれぐれも気をつけて欲しい」


 なるほどね~。


 そんなこんな話しをしている内に大きな弓を持って、烏天狗が空から降りてきた。


 和弓っていうのか、でっかい竹弓。虎皮の矢筒に矢がいっぱい入ってる。


 それを小次郎が装着した所で、川沿いを海のほうに下って行く。


 「牛鬼って海にいるの?」


 「ああ、海沿いや浜辺に出ることが多いといわれているな」


 歩きながら徐々に日が暮れて行く。


 海に出ると、丁度日が沈むタイミングだった。


 まるで、世界が変化する狭間のような感覚に足を止め、風景が一気に変化する瞬間を楽しむ。


 骨兜のおかげで、暗闇でも視覚に補正はあるし、問題なく浜辺を歩く。


 するとどこからとも無く女性のすすり泣く声?


 三人とも足を止め周囲を窺えば、


 夜にも関わらず磯で白い服の女性が一人赤ん坊を抱いて泣いている。


 どう考えても異常事態に三人で近づき、烏天狗が話しかける。


 「どうされた?ご婦人」


 「ああ・・・すみません・・・ちょっとこの子を抱いていただけませんか?」


 と唐突に赤ん坊を烏天狗に差し出す女性。


 え?怪しい・・・と思ったが、


 人は不思議なもので、理由も無く急に物を渡されると受け取ってしまう呼吸と言うかタイミングがある。


 特に赤ん坊を差し出してきたのだ。


 無意識に烏天狗がその赤ん坊を抱えると、


 女の声が急に地面から響くような太い男の声に変わり、高笑いを始める。


 「ふはははは!かかったな烏天狗!」


 白い服が内側から盛り上がり裂け、どうやって入ってたのか分からないが、


 牛の様な角の生えた顔に大きな昆虫のような体、しかし足先は尖った爪になった怪物に変化した。


 黄色い目がばらばらにギョロついて周囲を窺いながら、口から紫色の煙を吐き出す。


 すぐ息を止めた自分と小次郎、そしていつの間にか岩にのしかかられて動けなくなっている烏天狗。


 爪を振り上げて、烏天狗に一撃入れようとしてきたところを割って入り、咄嗟の事でダガーでブロックする。


 硬直した所で烏天狗の様子を窺い、小次郎と一緒に岩をどけるものの、どうやら足をやられたらしい。


 小次郎が背負い烏天狗を逃がす間、自分が足止めだ。


 横薙ぎに振ってくる爪をまたブロックする。


 〔空駆の長靴〕で二段ジャンプし、片目をダガーで突くと叫び痛がる牛鬼。


 ダメージの無い衝撃を感じながら、まるで人々の怨嗟をその身に溜め込んだかのような叫び声に顔をしかめずにはいられない。


 その時どさりと背後で倒れる音がしたので振り向くと、烏天狗を背負った小次郎が倒れていた。


 自分が振り返ったのを隙と見た牛鬼が爪を振り下ろしてくるが、そこはノールックブロック。


 硬直した所で、手の届く位置にあった爪を掴み、


擒拿術 猿捕茨


 硬直延長し<疾走>を使用してすぐ二人の元に駆けつける。


 どうやら、士気低下攻撃を食らったところで、息を吸ってしまい。毒にあたった様だ。


 鞄から急いで必要な物を取り出す。


 動けなくなるって事は多分、普通の毒では無いだろう。こういう時は自分的万能薬。


 漆の盃と薬草酒、


 それに、この辺りの毒を飛ばすために、空気玉。


 酒を飲ませながら、空気玉で一回呼吸をさせる。


 そんな事をしている内に硬直が解けた牛鬼が追いついてきたので、


 銃を顔面に発砲し、氷片のつぶてを当てて牽制。


 爪を掴み、


擒拿術 照葉野茨


 復帰した小次郎と烏天狗の両手を掴み二人で、砂浜をひきづって、逃げる。


 毒圏外に逃げきって、小次郎はすぐさま弓矢の準備。


 自分は空気玉を鞄からいくつか取り出し、いつでも使える様に専用ホルダーをローブの上から装着。


 さらに剣を鞄から取り出し、完全に戦闘態勢だ。


 大きく息を吸い、牛鬼の元に今度は自分から向かって行く。


 爪が一本地面にくっついてる牛鬼に矢が飛んでくる。


 鋭く空気を裂く音と共に飛んできた矢を地面に体を貼り付けるように足を広げて、低くなりやり過ごす。


 顔が低い位置に来た所で、自分が剣で斬ろうとすると、


 口からなにやら液体を吐き出してきたので、転がって避ける。


 べシャっと音がして砂浜に落ちたそれは、異臭を放ちながら砂に吸い込まれていく。


 どんな効果がある物かも分からないが、食らうのだけはやめておこう。


 何より気持ち悪い。


 そうしている内に、くっついていた爪が地面から外れたようだ。

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[一言] 世界観のごった煮
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