345.三日酔い
ログインすると、なんかぐずぐずしてる第4機関長
「どうしたの?サボってるだけじゃ飽き足らなくて、グダグダしてるの?」
「何言ってんだ?まだ酒が抜けないんだよ」
え?ログアウトして、仕事して・・・ゲーム内は丸一日以上は経ってるよな?
「いや、流石にそれは無いでしょ?」
「お前、酒出しっぱなしにして寝ただろ?だから、また宴会が始まっちまったんだよ」
「あ~、うっかりした。まあ、自分で飲む分は別に確保してるから飲んじゃっていいよ」
「悪いな、あんないい酒ばっかり、うちの奴らにはもったいない」
また、買出し行かなきゃな。何だかんだ酒でコミュニケーション取れるしなこのゲーム。
その時、誰か訪ねてきた。
【教国】のローブの若い品の良さそうな男性。
しかし、完全に三日酔いの第4機関長は流石に人目に晒す訳に行かない。
仕方ない、漆塗りの盃に薬草酒を注ぎ渡す。
「後生だから、向い酒は・・・」
「いいからグッといって!」
強引に飲ませると、しゃきっとする第4機関長。
「おい、これ・・・」
「ま、そういう事。とりあえず、お客さんに会ってきたら?」
そして、第4機関長を送り出すと、
「すみません【教国】の伝令の者です。第4機関長に直接御目通りさせていただき、恐縮ですが、第4機関の休暇の件は承認されましたので、順次お休みください」
「そうか、シフトやなんかはきっちりこちらで管理するから、任せてくれ」
「そうですか、それでは失礼します」
じと目で、こちらを見てくる第4機関長。
「いや、自分もよく分からずに来たんで」
「なんて、言われてきたんだ?」
「いや、斬ってこいって」
「はん!やっぱり悪い上司だな」
「多分、第4機関長に一度直接会ってこいって事なんでしょうけどね」
「そうか、まあ、あれだけ好き放題飲んでおいて今更敵対したりしないがな」
「じゃあ、多分自分の用事はこれだけなんで帰ります」
「おいおい、何も持たせずに帰すわけには行かないだろ。これ持っていけ」
と言って、酒瓶を渡してくる。
「これは?」
「通称『ニトロ』・・・ショットグラスでぶっ飛ぶ酒だ」
「え?自分は割りと嗜む方だから、別にぶっ飛びたい訳じゃ・・・」
「まあ、落ち着け、こいつを飲めば一時的に痛みを感じなくなり、さらに部位破壊を防げる。そして攻撃力と士気が急上昇する」
「へ~、そりゃまた、凶暴化薬みたいな」
「その通りだな。普通の奴が飲めば、酩酊で動けなくなるか、士気が上がりすぎで暴走するだろうな」
「そんな、ヤバイ酒貰っても、使い道が無いんですけど?」
「そうか?まあ確かに、俺を酔い潰すくらいうわばみで、尚且つ1,000人を率いれる位士気の許容量が高く、コントロールが効く奴じゃなきゃ、使いこなせないだろうな」
ここぞという時のブースト薬って感じかな。
「ありがたく、貰っておきます」
「おう、またな、悪い上司によろしくな」
ふう、結局今回はお酒飲んだだけ。
たまにはこういう気楽なのもいいけど、どういうつもりだったんだか、
まあ、分るけど、本当に悪い上司だな~。
隠れ家に帰る。
サクサクとフィールドを駆け抜け、魔物を避け、道なき道を最短で進む。
隠れ家のソファでくつろいでいると、上司が向かいに座る。
「よう、斬ってきたか?」
半笑いで、問いかけてくるが、大体のところは分ってるんだろうな。
「いや、ちゃんと平和に解決してきたよ」
「そうか、間に合ってよかったぜ、お前さんがうろうろとあちこちほっつき歩いてるから、冷や冷やしたぜ」
「そりゃ、悪かったね。一応味方してくれるってさ」
「そうか、それは重畳、これで数の上では味方の数が上回ったな」
「でも、中立がどうなるか分らないんでしょ?」
「そうだな、第11とか本当は首根っこ掴んでおくつもりだったが、結局全部表沙汰になった訳だし、お前さんを追い落とすチャンスを見計らってるかもな」
「いやらしいんだよな~。別に自分は第11機関に何の恨みも無いのに」
指名手配を外す為に思い切って動くにはまだ早いか。
っていうか、真面目に働いてるのに第10が冷たいよな~。
「まあ、うまい事いってよかったな。報酬になるような情報もいまいち無かったし、偶にはこういうのもいいだろう」
「そうね。楽しく酒飲んできたよ」
「酒?てっきり殴り合って友情が芽生えるかと思ったが」
「いや、大人だからお酒を一緒に飲んで、信頼を築いてきたよ」
「そうか、まあいいさ。聖石の件もそろそろ大詰めだしな」
「後、二つ?」
「ご名答。第12機関長とお前さんで持ち合ってるそれが、どうなるのかは俺も分らんがな」
「自分も分らないし、変に緊張しちゃってさ、嫌なもんだよ」
「まあ、今から緊張してても保たないし、程ほどに準備しておけよ」
「そうさせてもらう。とりあえず飯食って寝るわ」