344.飲み勝負と見せかけてただの宴会
「飲み勝負はいいが、俺の飲む量は生半可じゃないし、ただ飲む姿を部下に見せるってのも気が引けるんだがな?」
「実はお酒とつまみなら、鞄いっぱいに持ってるんですよね」
「どんな指名手配犯だ・・・指名手配生活すら満喫してますってか?これはまた・・・久しぶりに冷やっときたぜ」
「どうします?酒を出します?それとも勝負に水を差さないように先につまみを出します?」
「酒を出してもらって、つまみまで出させたら、第4の沽券に関わるな!おい!誰か!」
美形でオールバックのお兄さんが入ってくる。燕尾服の服の方がよっぽどに合うのに、作業着だ。
「なんすか!親方!そのひょろいのやりますか?」
「馬鹿やろう!お前らが何人束になっても敵わない上に、その気になったら1000人率いて攻め込んでくる相手だぞ!お前らとは器が違う相手だ!何でもいいから酒に合うつまみを山ほど作れ!こちらの御仁が酒を奢ってくれるらしいぞ」
「そりゃ、すんません。でも、俺達の飲む量ハンパないっすよ?」
「そう?じゃあ、自分の鞄の酒飲みきってみなよ。もし足りなかったら、バカンス用に遊ぶお金も置いていくよ」
「うおーーー!!何て話しの分るお方だ!なんてお呼びすれば?」
「隊長って呼ばれてるね。肉とか味付けに使うような香草とかニンニクやら葱やらは山ほどあるから出しておくね」
そう言って、机いっぱいに食料を出すとホクホク顔で持って行く、お兄さん。
さて・・・まずは一番慣れてそうなワインをあるだけ出しますか。
樽のまま、そこいらの地面を埋めるように置きまくる。
「あっ・・・本当に鬼のようにあるんだな」
「まあ、飲みつくしてよ。フフ」
「ほ~こりゃ【教国】のワインか、これなら水代わりにのめるな」
「そりゃあ、良かった。まだまだあるから、祭りと行こうよ」
そして、いつの間にか用意された大量の机が並ぶ宴会場。
夜を迎えて朝まで飲める様に篝火でライトアップされた会場。河族もいつの間にか集まってきてる。
まあ、100人や200人で飲みきれない程度の酒は用意するぜ?
「うし!こちらの隊長殿が用意してくれた酒を存分に飲むだけの会だ!無礼講だが、迷惑はかけないように酔いつぶれろ!行くぞ!」
「「「「「「「おーーーーー」」」」」」
まずは、ワインで皆ほろ酔い。出されたつまみは味濃い目のスタミナ料理の数々。
こりゃあ【海国】のラム酒で行きますかね。
「じゃあ、次出しますね」
そして、現実なら見るだけで気持ち悪くなる量のラム酒をまた地面いっぱいに出す。
「おい、これはどう飲めってんだ?」
「自分はストレートで行くけど、好きな物で割りなよ」
笑いながら、木杯にラム酒を入れて飲む、第4機関長。
自分も負けじと貰った漆塗りの杯で、ガンガン飲む。
正直な所アクセの補正で、まだまだいけるのが申し訳ない。
そして、徐々に潰れていく面々、
いい夢見ろよ!
大分目が据わってきた第4機関長だが、まだまだここからって顔してる。
ならば、一旦箸休めで【馬国】の馬乳酒を出しますか。
「これは箸休めだから、一旦飯食おう」
「それはいいな。水っ腹になりそうなところだったぜ」
そして、スタミナがつきそうな肉料理を食べるが、なんか物足りないので米を焚いて、焼肉スタミナ丼にしてかっこむ。
そんな事しながら、馬乳酒で口をさっぱりさせつつ、ガンガン食って飲む。
馬乳酒は飯チームに任せて、ここからはレア酒ゾーンだぞ~。
【砂国】の幻の町の幻の酒を出せるだけ出す。
「お、おい、これって」
「まあ、飲みなよ。幻の町領主と娘のソヘイラ様にはつなぎが付けられるから、気にせず飲んでよ。これは水割りがいいよ」
そして、水で割って、白く濁る幻の酒を飲む。はじめこそ遠慮がちだったが、自分の飲み方を見てペースを上げる第4機関長。
そして、怖い物知らずたちが、それでも恐る恐る酒に口を付けていく。
あ~、かなりきた!流石に飲みすぎたかと、漆の杯に薬草酒を入れて飲めば、一口ですっきりする。
「なんだそりゃあ?」
「薬草酒だけど飲む?」
と第4機関長の杯に入れると、顔をしかめて飲み干す。
「これは、きついし癖が強すぎるな」
そういって、幻の酒を飲み始めるが、結構べろんべろんだ。
「ねえ、第4機関長は何でこんな前線まで顔出してるんです?」
「あ?そりゃ現場に来なきゃ分からない事も多いだろ?特に今回はけつ拭き仕事で、絶対不満も溜まってるだろうからな。俺が出てきて話聞かなきゃ収まるもんも収まらないだろ?」
「は~、そりゃあ上司の鑑ですね」
「まあ、元々個人的に色んな土地に行くのが好きなのもあるけどな。各地の建築様式を知りたいってのもあるが、色んな風土で、色んな酒を飲むとか最高だろ?それも体動かした後ならなおさらな」
スタミナ料理とお酒で皆汗かいて、笑ってる。そろそろ氷結酒の出番かね~。
皆って言ってももう、1/4は寝てるけどね。
そして、氷結酒を出す。
「これで、一回クールダウンしてよ」
「っつ・・・行ける所まで行ってやるぜ」
そして、飲み進め、残るは第4機関長と自分。
程よいタイミングで、薬草酒を飲んでる自分はまだまだ行ける。
さて、命の水と海草酒と古酒とブランデーどれもありだな~。
全部出すか。
出した瞬間。
椅子ごとひっくり返り眠る第4機関長。
ふむ、眠くなるまでブランデーでもゆっくり舐めますかね。