343.第4機関長
久しぶりに河族の村に寄る。
「久しぶりだね。遂に寄る辺がなくなったかい?」
「いや、おかげ様で綱渡りしてますよ」
「じゃあ【教国】の件かな?来るだけ来て作業が止まってるみたいだね」
「あ~、やっぱりそう言う状況ですか、すみません迷惑かけて」
「君の所為じゃないんだろ?寧ろまた面倒事押し付けられたんじゃないの?」
「まあ、そんな所です。面倒な相手なんで正面から行って、場合によっては斬れって言われてまして」
「物騒だね。まあ、送ろうか」
「お願いします。ところで、最近は【輸送】の方は順調なんですか?」
「まあ、ぼちぼちだね~。傭兵達もそんなに荒らしたわけじゃないし、なんなら船さえ無事ならなんとでもなるし」
「じゃあ、第4機関来るだけ、御邪魔でしたね」
「ふふ、正直な所、来ただけ無駄足になっちゃって可哀想だったね」
そんな話をしつつ大河から支流に船で送ってもらい、
わいわいと賑やかな場所で、降りた。
「じゃ、がんばってね」
「いつもすみません」
さて、筋骨隆々で日焼けした男達が、サボってる。
いい体した、いい年の男が、何サボってるんだよ。
「おう、なんだお前?顔も見せずにこんな所で」
「おう、コラ!地元のヒトに絡んでんじゃねぇ!」
「どうもすみません、サボってる所申し訳ないんですけど、第4機関長いますか?」
「ああん?なんだおめぇ!親方に何の用だ?コラ!」
「いや、なんかボイコットしてるって聞いて、お話を伺いに来たんですけど」
「ああん?誰がボイコットなんかするかっての!上の命令で、荒らされた河族の建物直して来いって言うから来たのに、どこも壊れちゃいないってんだよ!」
「それで、サボってたんですか」
「ちげー!状況報告してんのに返答が無いから、誰か寄越せっつって、待機中だコラ!」
「それで自分が来たんですけど、とりあえず親方に会わせてもらえます?」
「おう、じゃあ、ついて来いや」
なんか、変な話し方だけど素直なお兄ちゃんに付いていく。
話し方は変だし筋骨粒々なのに、なんか顔が美形なんだよな。
美形マッチョの不良とか、キャラ盛りすぎじゃん。
そして、連れて行かれた場所には高身長マッチョの美形に長い髭。
自分の年代だと完全に関羽。でも髭は作業の邪魔になりそうだけどな?
「ふむ、来たか。それで【教国】の指示は?」
「ボイコットしてる第4機関に話を聞いて来いって事なんですけど、どうやら事情が食い違ってますね」
「何をやっているのか、全く。第12機関が荒らし回った場所の修復が終わったのなら、通常業務に戻らせてもらうぞ」
「終わってるなら自分から言う事は無いですね。上には完了と報告しておきますよ」
「そうか、中々物分りのいい者を送って来たじゃないか、それでうちの奴らの報酬は?」
ん?報酬?聞いてないぞ?
でも、お金のことなら自分に立て替えろとか言わないだろうしな。
「報酬の件は上司から聞いてないんですけど、教えていただいても?」
「そうか、悪い上司を持ったな、嫌になったらいつでも第4に来るといい。報酬と言うのはこいつらに休暇を取らせつつ、慰安旅行に行きたいって言う話だな」
「行けばいいじゃないですか?お金のことですか?上に掛け合いますよ。そもそも第12機関のけつ拭きさせられてるのにボーナスも無しじゃ、やってられないでしょう」
「うむ、本当に話しの分る者のようだな。顔を見せてみないか?」
そう言われたので、フードを脱ぎ、骸骨兜を外すと。
「地味な顔で申し訳ないですが、こういう者です」
「そうか、雰囲気が堅気じゃないと見たから慎重に対応したが、なるほどな。うちで指名手配をかけてうちで匿ってたのか、マッチポンプだな」
「多分、最初の目的とは大分ずれてきてるし、指名手配外してもらいたいんですがね」
「第3が首を縦に振らないだろう。あそこがとにかく精力的に動いてるから、面倒だぞ。どの機関であれ、出先に行けば第3と関わるからな」
「敵味方の境界線も曖昧ですかね?」
「そうだな、中立の者はどう転ぶか分らんだろう」
「第4はコレからも敵ですか?」
「そうだな。顔を見れたし、いつまでも突っぱねていてもな。勝負するか」
「勝負ですか」
「そりゃな、何でもケジメってのが、大事だ。一応聞くが教区長をやったのか?」
「やりましたよ。でもやむを得ない返り討ちでしたよ」
「そうか、証明する方法は?」
「一緒に第10機関のヒトがいましたけど、魔物化した教区長を倒すのに力使って眠ってます」
「魔物化ってのは何の魔物になったんだ?」
「串刺王って聞きました」
「穢王の一体だな。確か、第7機関長と【帝国】東部地区長が若き日に下層で敗れた相手だったな。話しに力みも無理もないな。そりゃヒトが魔物になるなんて話は中々聞かないが」
「中々って事は全く無くも無いんですね」
「【王国】の護国の騎士は、国の滅びの危機に死んでも国を守りたいと聖石に願い、アンデットとなってまだ大砦を守っているぞ?」
「なるほど、ある程度は信じてもらえたと、その上で勝負ですね」
「そうだな。斬り合いもいいが、河族を騒がせるのもな」
「じゃあ、盛り上がって、第4のヒト達の慰安にもなる提案が一つ」
「なんだ?」
「飲み勝負」