342.仕事の話
「それで?どんな悩みがあるの?」
「実は事情のある部下がいてだな。色々と情報集めてやったりと動いてたんだが、肝心の部下がどこかをほっつき歩いてるんだ」
「ふーん、その部下に待機命令は出したの?」
「出してないな。しかも情報を集めるのもそいつへの報酬だから、別にいいんだけどな」
「なんだ、大した悩みじゃないじゃん」
「んで?お前さんの悩みはなんだ?」
「世界が滅亡するかもしれん」
「そりゃあ、デカイ悩みだな」
「まあ、なんにしても一個づつやるしかないんだけどさ」
「ふん、なんかできる事はあるか?」
「クラーヴンにつなぎを付けたい」
「どうするんだ?そんな事して」
「どうやら、邪神の化身は異常に硬い甲殻を持ってるらしい。それを破る方法が必要なんだよね。お金に糸目はつけない」
「手付けにいくら持って行く?」
「金貨100万枚」
「分った、預かろう。でだ、次の仕事をする気力はあるか?」
「あるけど、剣以外は一旦メンテだよ」
「構わないさ。剣一本で出来る簡単なお仕事だ」
「そう言う時は簡単じゃないだろうけど、何しろって言うの?」
「第4機関長を斬ってもらいたい」
「何?悩みが深すぎて頭おかしくなっちゃったの?もう少し行動を自重した方が良かった?」
「行動は自重してもらいたいが、そう言うことじゃない。第4機関長ってのはどうにも理屈の通じない脳筋でな。ここ最近の第12機関の独断にちと切れちまってな。ボイコット始めたのよ」
「そりゃ第12機関長が悪いから、向こうに何とかさせなよ」
「12と4ははなから相性が悪くてな。お前さんみたいに話も通じて腕っ節もあるやつじゃないと、どうにもならんのだ」
「第7機関長とかは出来そうじゃん?そもそも第4て何やってるのよ?」
「第4は建築、土木を中心とした肉体労働だな【教国】の縁の下を支えてる奴らなんで、ボイコットされると本当に困るんだよ」
「そりゃ、困るな~・・・第7に肩代わりさせなよ」
「うん、お前の【兵士】に何でもやらせておけ発想が俺には怖いよ」
「【兵士】てのは汎用職だから何でもできる。大丈夫」
「そりゃあ、お前だけだから、ちと第4機関長斬ってこいよ」
「その、斬ってこいって言う発想の方が怖いよ。暗殺はやらないっての」
「暗殺じゃねぇ。言う事聞かないから、腕力で話をつけろって言ってる」
「自分、腕力無いもん。自分の身体能力は多分、移動力と持久力特化で、生命力も筋力も低いでしょ」
「まぁ、な。腕相撲で戦えってなら勝てないだろうが、斬り合いで負ける気も無いだろ?」
「負ける時は負けるっつうの。しかも機関長クラスって、普通に勝てる相手じゃないじゃん。剣一本でやれっておかしいじゃん」
「もし、いい素材があれば、こっちで掛け合って肩当作るぜ?」
「何で知ってるんだかね。この甲殻使える?」
化け物蟹の甲殻を上司に渡す。
「こりゃあ、またとんでもねぇ物を・・・まあ、いいかやってもらおうか」
「どうせ拒否する訳にも行かないんでしょ?で、具体的にどうするの?」
「こればっかりは正面からいって、話してもらうしかねぇ。そして十中八九やりあう事になる」
「面倒臭いな~。強い相手とはできるだけ話し合いで事を済ませたいのに」
「で?場所は?」
「河族の所だ」
「なんでよ?意味わかんないんだけど」
「第12機関の指示で荒らしまわったから、ちょっと修復してこいって言われて切れやがったんだ」
「そりゃ切れるだろ。なんで第12機関のけつ拭いてやらなきゃならないんだよ」
「そうなるよな~。しかもそれ以外にも聖石があるって場所を尽く荒らして、けつ拭きだけ第4にやらせてるんだよ」
「逆にそれで切れない奴いないよ。自分は第4につく」
「だ~か~ら~、なんでお前が向こうにつくんだよ。まあ、理不尽だとは思うが、別に手当てだの休みだのは、まっとうだからな。ただ、仕事が何でけつ拭きなんだっていう。そこの所なんだよ」
「そりゃ、誰だって無駄な仕事させられたら、嫌じゃん」
「誰もがお前みたいにあっさり聖石見つけて持って帰らないってんだよ」
「にしても、流石にテンション上がらないな」
「あと、もう一つお前さんに頼みたい理由がある」
「なにさ?」
「第4が敵対してる理由さ。顔を見せないでこそこそ逃げ回る奴を信用出来ないっていうな」
「え~・・・しょうがないじゃん。事情が事情じゃん」
「そういうのが通じないから脳筋なんだろ?折角だし正面からいって殴り合ってこいよ。友情芽生えてこいよ」
「うわ~。暑苦しいわ。一応自分指揮官タイプなんだけどな~」
「何を今更、フラフラ一人で出歩く奴が何言ってるんだ。まあ、別に失敗したからって何もペナルティは無いし、行ってこい」
「分ったよ」
今回は使わなかった飛蝗スーツに骸骨防具セット、アイテムバッグに剣だけ差して、地味なローブを羽織る。
さてと、行きますかね~。