34.おっさんと東部輜重部隊
■ 士官 ■
【兵士】系指揮特化ジョブ
多人数を率いるスキルを取得することが出来る
また 20人以上を率いるクエストの受注も可能になる
集団戦闘を専ら得意とするが、個人の戦闘スキルはあまり取得できない
通常は兵科を経由することで戦闘スキルも取得していくことが望ましい
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ある日、ログインしてみるとやたらと外が騒がしい。
そういえば昨日まで祭りだった。折角運営が日曜日にイベントを企画してくれていたが、生憎と自分は休日出勤だった。もちろん休日出勤手当てなるものは出ない。あくまでも自己都合での出勤という建前の強制だ。まあ、出勤しないで仕事が滞って苦しむのは自分だ仕方あるまい。
いつも通り【兵舎】受付に行くと
「よう、起きたか待ってたぞ」
スキンヘッドのおっさんに待たれても別に嬉しくないが、
「何かあったんですかね?」
「おう、いい知らせといい知らせと悪い知らせといい知らせといい知らせとすごくいい知らせがあるぞ」
「随分とあるんですね、順番に教えてくださいよ」
「まず、お前さんの掛け金だが20倍と50倍になったぞ。」
ああ、そういえば【帝国】に金貨一枚賭けた後、知り合いの料理人の女の子にも金貨2枚かけたんだっけか。
「じゃあ、いくらになったんです?」
「金貨120枚だな。もう、ここいら【兵士】じゃそうそうお目にかかれない金持ちだな」
「へ~じゃあ、貯金で」
「おう【兵舎】預かりだな。次のいい知らせは、お前さんの預けた食材が大会で使われたから記念品をもらえるぞ、コレがカタログだ」
カタログを見せてもらうと料理系の便利装備やらアイテムみたいだ。食材やら、調味料やら、調理器具やら。
一番気になるのはアイテムバッグ機能拡張か?
食材と中間食材の使用期限を延ばせるらしい。あくまで作り終わった料理が期限短いのは相変わらずみたいだ。あと容量が5×5スタックから6×6スタックになるらしい。
コレで間違いないだろう。
あまりバッグ使って無い自分でも今後有効に使えそうだ。
他にもナイフとかコンロとか気になるけどな、まあ、料理はついでだしな。
「このアイテムバッグ機能拡張でお願いします」
「分かった伝えておく、届いたらここで預かってるからな。で、悪い知らせは、お前さんの部隊は解散だ。祭りが終わって物資が安定したからな」
「まあ、そりゃそうっすね。肩の荷が下りましたよ、全然悪い知らせじゃない」
「後は、いい知らせを一気に二つ行くぞ、一つ目お前さんの功績を鑑みて【士官】に昇格だ。コレまでより指揮がしやすくなるスキルが手に入るはずだ。二つ目に今後正式に部隊を率いてもらう『東部輜重部隊』だ。輜重というだけあって基本は【輸送】だが、要は部隊単位での任務についてもらうぞ」
「なんだ、解散とか言って結局そういう落ちですか、まあ、スキルは確認しますけど。最後のすごくいい知らせってなんですか?」
「おう、教官がなお前さんを見込んで、特別待遇で訓練をつけてくれるらしい。こんなことはめったに無いからな、首都でも氷の剣鬼と呼ばれた方の本気の訓練を受けられるなんて、なんて幸せなやつだろうな。がんばれよ。そして死ぬな」
「いや、死ぬなって、不吉すぎるでしょうよ。何言ってるんですか、ただでさえうちの部隊は自分より強いやついくらでもいるのに、自分標的にしなくてもいいじゃない」
「まあ、何だ、コレが任務票だ【訓練場】に逝ってこい」
「今、絶対いってこいっていう言い方がおかしかったし。分かりましたよ死なないようにがんばってきますよ。とりあえず先にスキル見せてください」
「おう、あいよ」
<策戦>てスキルが増えてるな。とりあえず取得。
指揮と同じでセットできるやつか、まあ後で教会で見てみるか。
問題は、教官の本気ってやつだ。まずいだろう?まずくないわけが無い。
訓練場に着くと今までに無いくらいいい顔で教官が待っていた。
「待っていたぞ、新任【士官】」
待たれていても全然嬉しくない。なぜ嬉しくない人ばかり俺を待っているのだろうか、どこかで絶世の美女でも自分が現れるのを待っていてくれてもいいのに。
「じゃあ、早速小剣を構えろ」
「自前のロングソードがメインの武器なんですけど?」
「HAHAHA、面白い冗談だな。そんな長物じゃ捌ききれないぞ!なによりお前のスキルで、武器系といえば<小剣>が一番上位に来るはずだ。さあ、構えろ、すぐ構えろ」
「いや、捌ききれないとか何する気ですか、本当は自分も長剣とか出ないかな?って期待したけど、ジョブチェンジしても出なかったんですよ。」
「問答無用!ルースィー!スペーヒ!カピヨン!ルーク!・・・やれ」
部隊の皆が一斉に攻撃してくる。なりふり構わず、ショートソードで受けまくる。
「ようし!いいぞ!無理に攻撃に転じなくていいからな、捌け!攻撃側は一発も当たっていないぞどんどん回転上げて行け!歩兵隊!二人追加で入れ!」
いや、いや、いや、マジ勘弁してください。その後も攻め手の人数が増えまくる。どんどこ生命力が削られる。本当にギリギリまで追い込まれる。
そして、手当てされてまたボコボコにされる。
コレなんて拷問よ。
「ようし、休憩だ!ルークお前だけ小隊の連中連れて来い」
「次は、何しようってんですかもう、自分限界ですよ」
「Hahaha、面白い冗談だここからが本番だぞ!ルーク!・・・・やれ」
今度は、一斉に矢が放たれる。もはやいじめを通り越して殺人だろう。とにかく急所だけは守るべくひたすら剣を振るう。
限界が来たら手当てをされ、また、めった射ちにされる。自分は的でも案山子でもない。
それが地獄の日々の始まりだった。早く【輸送】しにいきたい。あんなに嫌だった事務仕事が天国にしか思えない。そんな日々だ。