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338.岩礁地帯

 途中魔物を狩る時に銃の性能を試しつつ【王国】の端に向かう。


 銃は所謂、散弾で射程距離はぼちぼちってところ、吐き出す左手の氷版って感じかな。


 範囲は少し狭い感じで、凍傷や凍結デバフがたまに出るくらい。


 チャージ時間がちょっと面倒だけど、一発いきなり撃つには面白いかも。


 吐き出す左手と違って、非戦闘時に一発溜めておけるってのは助かるな~。


 そんなこんな実験しつつ、平原のど真ん中を駆けたり、星を見ながらセーフゾーンでキャンプしたり、


 気が付いたら【王国】の端。


 名残惜しいが頭領と別れる。


 〔霊薬草〕を持って【森国】に帰り、若い将軍に薬草酒を献上するのだろう。


 まあ、頭領は地位とか名誉とかお金とか興味無さそうだけどさ。


 さて、特に誰もいない海岸線。


 入り江でもなく、船すら止まらないただの砂浜。


 波打ち際に打ち上げられたホタテの貝殻を拾い、少し歩く。


 【海国】と違い、荒い波の飛沫が岩場に当たり、黒い岩を白く泡立てる。


 持て余した感情と共にそのホタテの貝殻を海に投げ込み、遠く沈む夕日を眺めていると、


 「少年よ、その口に出来ない深い悩みすら母なる海は受けとめてくれるだろう」


 斜め後ろ吐息がかかるか、かから無いかという距離にマンボーさんが現れる。


 距離がちょっと近いんだよな~。


 「ここは【王国】なのに来てくれたんですか?」


 「海が繋がっていれば、国境など関係ない。苦しむ少年を母なる海に導くのが我が役目、何があったんだ?」


 「実はこの先にあるって言う珊瑚礁地帯の海草が必要で、マンボーさんに心当たりはありますか?」


 「ふむ、見た事は無いが、聞いた事はある。そうそれは魚人に伝わる物語・・・」


 「え?まさか、あのヒトの伝説?」


 「ああ『ブラボーVS化け物蟹!-血を吸う珊瑚に黒き巨大な影-』に出てくる珊瑚礁じゃないか?」


 化け物蟹か~、しかもブラボーさんクラスの敵ってヤバイ気しかしない!


 いや、ブラボーさん知らないけど、何となく英雄レベル。


 つまり、邪神の化身と戦ったんじゃない?のヒトが戦った相手に勝てる気がしない。


 「ふむ、化け物蟹には敵いそうもありませんね、どうするか・・・」


 「大丈夫!そんな悩みも母なる海は受け取ってくれるであろう!」


 自分の両足をとり、小脇に抱え振り回すマンボーさん。


 ジャイアントスイングで飛ばされ、海を仰向けに跳ねる。


 勢いが止まり、少し寒気と暗さを感じる海に沈む。


 【海国】とは違う海だが、これはこれで心が静まっていく。


 暗い海の底に少しづつ引き込まれているはずなのに、安心感に包まれ自分から発生する泡が、海面に引っ張られていくのを見送る。


 まだ浅い砂地の海底に着き、近くにいたヒラメを突き刺し、倒して今夜の夕飯にと鞄にしまう。


 追いついたマンボーさんと久しぶりの海中遊泳だ。


 どうやら【森国】の南の方らしい、夕飯の魚を見繕いながらのんびり泳ぎ、


 時折小さな島のセーフゾーンで休み、マンボーさんと食事をしてログアウト。


 なんで、こんなに気楽なんだろ。


 海を泳いで、酒飲んで、ご飯を食べる。これが自分のゲームのプレイスタイルだったのかな?


 「多分この辺りだろうな」


 マンボーさんの言葉だが、何も無い!何を目印に言ったのかと思うと、水面から顔を出し、マンボーさんが指差す先に小さな島と岩礁地帯が見える。


 「あの岩礁地帯に珊瑚礁があるんですか?」


 「いや、伝説では岩礁地帯に平和に住む種族がいるらしい。珊瑚礁で取れる魚や蟹を食べて暮らしているらしいが、ある時現れた化け物蟹に困らされている所をブラボーが助けたらしい」


 「じゃあ、あれっすね、その平和な種族に交渉してピンクの海草を分けてもらうとしましょう」


 「うむ、それがいいな」


 なんだ~。化け物蟹倒さなくていいのか~助かった。


 しかし、岩場に住むヒトって、どんなんだろう?人魚かな?人魚だよね!


 なんか、昔から人魚って惹かれるものがあるんだよな。


 カードゲームとかしてても、種族に人魚とかいると、人魚デッキで揃えてみたくなったりとかさ。


 岩礁地帯に近づくとぱっと逃げていく影。


 小さな島の方へと上陸しているようだ。


 「あの、海草を分けてもらいたいだけで、攻撃の意思は無いんですが」


 そう言いながら、島の方へ上がっていくと、そこにいたのは、


 アザラシだ。


 可愛い。うん、可愛いけどそうじゃない!


 いや、自分が勝手に期待したのがいけない。そう言う巡りあわせなんだ。王道ファンタジーに出てくるような種族に会える訳ないじゃん。


 寧ろ、こんな可愛いアザラシ達に会えただけで、良かったと思う。マッチョとかおじさんとかの方がエンカウントしやすい体質なんだから自分は。


 「海草?別に食べないし持って行っていいよ?」


 見た目どおりの可愛い声のアザラシだ。二足歩行だけど。


 足は短いし、ヨチヨチ歩きだが、一応二足歩行のアザラシ。しゃべれるって事は獣人なのかな。


 「ああ、いや、ピンクの海草なんだけど」


 「あれか~、今大きな蟹が住んでて無理だね~」


 「そうでしたか、ちなみに蟹の目を盗んでこっそり持っていくのはありですか?」


 「いいよ~。普段は小さい蟹とか魚とか食べてるから、海草は持って行かれても困らないし」


 「じゃあ、そうします。珊瑚礁ってどっちにありますかね?」


 「あっち~」


 岩礁地帯の少し先を指差すアザラシ、


 しかし、やっぱりいるのか化け物蟹、自分の血で珊瑚が染まってしまうのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 人魚じゃなくて魚人が出てくるかと思ったらアザラシだった 何を言っているかry セルキーっていうパターンも考えたがたぶん普通にアザラシだろうなこの世界
[一言] >「あれか~、今大きな蟹が住んでて無理だね~」 ”今”ということは、昔は居なかったのが住みついたのに 住人は慌ててないんですね。 主人公のイベント用に最近生まれたのか、 あるいは海の何か…
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