328.領主の館(賭場)
なんとかかんとか、三人をねじ込み自分の仕事は終わった。
一応約束の日に例のカジノに入って行く三人を見送る。
これで、終了かと思い切り伸びをして、カジノの前を立ち去ろうとすると、
「賢樹様に面会の方ですよね?」
以前ちょっとだけ話したセキュリティのヒトに問われるが、用があるのは三羽烏。
自分はお役ごめんなんだけどな。
「いや自分は見送りだけですよ」
「以前お会いして時に立ち去られてしまったので、言いそびれましたが、その制服は【帝国】【上級士官】の物ですよね?さらには勲章も1000人長クラスのものと御見受けします。しかも一定の戦闘力を有した状態で、どの国にでも立ち入る許可が有ると・・・そうなりますと、賢樹様に会っていただくのに十分な資格が有ると判断します」
どうするか~。なんでか【上級士官】とかやたらこういう所で、顔が利くんだよな~。
「あっ・・・じゃあ、お邪魔しちゃっても?」
「ええ!どうぞ当家にようこそ。ただ武官様ですので、護衛は遠慮していただきます」
なるほど、やっぱり自分一人が入れても、三人の任務をクリアできないわな。
セキュリティのヒトに促され中に入れば、
赤く毛深いふかふかのカーペットに豪華なシャンデリア、白いロビー階段。
中にはそれに見合った服装の貴人達。
様々な民族衣装のはずなのに、室内の豪華な雰囲気を全く損なわない、溢れ出す気品。
自分の野蛮な殺気を振りまいて良い場所じゃないぞ?
所々でテーブルを囲んでいるのは、賭け事を楽しんでいるのだろうか?
入ってすぐに声を掛けられる。
上から下まで綺麗な黒の使用人服の男性。
「当家にお越しの方には最低金貨1000枚分のチップを最初に購入いただいています。もちろん使わずに後ほど換金して帰る事も自由です」
「すみません、不調法者で、最低とおっしゃいますが、普通はどれ位購入する物ですか?」
「いえいえ、無用な見栄を張らない方がこの場では好かれますよ。皆様それ相応に責任のある立場の方ですので。しかし、購入金額と言いますとそれこそ、入場料とばかりに最低金額の方から、御立場ゆえに相応に購入される方もいらっしゃいますので、なんとも」
え~それじゃ、分らないんだけど~。
困っていると、
「おっ!先だっては服を見繕ってくれて助かったぜ。ここでも変に浮いてないみたいだし、さっきもやんごとなき身分ぽい子女に話し掛けられたけど、何とかなったしな」
佐助を預かってくれた田舎のボンボンじゃん。渡りに船とはこの事。
「こんなこと聞いていいか分らないけど、いくらチップ買った?」
「一応金貨100000枚分だな。他に使う予定もないし、持たされた金全部チップに替えたけど?」
これだから金持ちの言う事は訳わかんないんだよ!
どうしよう・・・。賢樹様に会うまでの食費とかもチップで払ってね。とか言われても困るしな。
はあ・・・自分も全財産チップに替えるつもりで行くか。
「じゃあ、金貨100000枚ほど、お願いします」
「そう・・・ですか?武官の方が・・・?承りました!」
そして、渡されるのは、黒地に金のチップを一枚。
これだから金持ちの集まりは!自分の全財産でもチップ一枚とか!
なんなんだろう。この経済格差!
ヒトの出来る事なんて限られてるはずなのに、どこでそんなに収入格差って開くの?
とりあえず、中に入り賭けのテーブルを冷やかすが、別に面白くも無い。
ボーイさんがお酒を持ってきてくれたが、自分が持ってるのはチップ一枚。
断ろうとすると、無料だって!
どう見たって、由緒あるお酒が無料だってさ!
自棄酒だ!経済格差に乾杯!お前らの命は俺が守るから!いい酒奢れよ!
「いい飲みっぷりだな!見てて気持ちがいいぜ!こいつを飲んだら、チップを奢ろう!」
そう言ってくる。妙齢の【砂国】の民。中々気風が良いヒトなので、一気に飲み干せば、白いチップを一枚貰う。
すると、次から次から男性といわず女性といわず、酒を奢ってくれて、チップをくれる。
賭け事に飽きた老若男女が、自分に酒を飲ます。
仕方ないので、自分も秘蔵の八塩折之酒を出したら、やたらざわめく会場。
「おいおい!こんな伝説上にしか聞いた事ない物出されて、何で返せば良い?」
「いや、お酒奢ってもらったお礼だから」
流石に、あまり量の無い八塩折之酒でオークションが始まる。
この店のスタッフは相当できるヒト達が集まっているのか、
急造のオークション会場にも関わらず、盛り上がり、自分の酒の後にも次から次へと出品合戦が始まる。
なんか、大量にチップを渡された気がするが、もう酔いが限界。
なんか部屋に案内されて一休み。ログアウトしよう。
「バラバラのチップおまとめしておきますね?」
「え?うん?お願いします・・・」
ねむ~い。