322.賭博の都
砂漠のど真ん中に唐突に現れる艶やかなイルミネーションで光り輝く都。
世界観的に大丈夫なの?て、思う程明るいし、この一帯だけ星が見えない。
都入り口で頭領と別れて、都に入る。
衛兵のようなヒトは立っているが、別に身分を確認されるような事も無く、すんなり都に入れた。
こういう場所でヒトの出入りを確認しなくていいのだろうか?
それとも後ろ暗い奴らの方が多いから、そんなことしてたら時間の無駄なのかな?
ますますメインの得物が無いのが不安になる。クラーヴンの剣が無いのがこんなに不安だとは。
結構な規模の宿泊施設、駐車場?というのか、このゲームでは基本乗り物は生き物に牽かせてるので、厩舎のようなものがセットになっている。
そして、賭場・・・外から見るだけでは良くは分からないが、中に入っていくヒトの姿からランクのようなものがあるのだろう。
入り口の前に乗り物が横付けされて、ドレスの女性が下りていくような所はきっとランクが高いのかな?
自分は軍の制服なんだけど、本当にドレスコード大丈夫なのか?しかも乗り物もなしにフラフラ歩いてるだけだし。
まあ、別に木に会いに行くだけだ、服なんて何でもいいか。
一応顔だけは黒いターバンで隠しているが、それについてはそこまで違和感は無い。
なんなら、明らかにピシッとした民族衣装にターバンの人もいるし、なんなら仮面舞踏会でも始めそうな仮面紳士淑女も少なくない。
つまり、それなりの身分のヒトは顔を隠してお忍びで、遊ぶのがドレスコードなのか?
まあ、いいさ自分はお偉いさんの顔なんて知らないし、誰がどこそこの要人だろうが、関係ない。
そして、肝心の木だが、あからさまに都の奥にでっかい木が一本見えている。
・・・いや~でかすぎだろ!!これだけ建物が密集してるのに見えるって、どんな高さだよ!
まあ、目標が分りやすいのはいいことだし、さっさと通りを抜けて木の方に向かう。
かなり近づいたかな?と思ったところで、壁だ。
壁沿いをいくら進んでも壁、そして一件の一際大きなカジノ、そしてその向こうも壁。
どうするか、このカジノ入れるのかな?
規模といい小奇麗な感じといいVIP用だよな~どうしよう。
カジノを見上げて、困っていると明らかにセキュリティと思われるヒトに声を掛けられる。
「当店に何か御用で?」
「いや、賭け事はしないんですけどね。奥の木に用がありまして」
「賢樹様に面会されるには相応の身分の方か、紹介状をお持ちの方しかお通しできません」
うへ~難易度高いな~。偉い人とか自分が一番苦手な奴じゃん。
しかも自分が賢樹様の事を木とか言うから完全に疑われるし、出直すか。
「親切にどうもありがとうございます。それじゃ」
さっさと引き上げるも、ずっとこっちを見てるぞあのセキュリティ。
さて、まあよく考えたら本来自分の任務は三羽烏の手助けだし、合流するのが先か。
しかし、都ってのは中々広いわけで、そう簡単に見つかるもんかね?
そこらのヒト捕まえて『すみません!忍者見ませんでした?』って聞いて廻るのか?
隠れ潜んでこその忍者だしな~。見つかる訳ないよな。
・・・猿が一匹自分の前を通り抜けていく。
明らかに手には水か何か入ったカップを持って、何となく気になり付いていくと、
裏路地で、黒い服の男が壁に背をもたれかけ項垂れている。
もう、お終いだ・・・とか言いそうな雰囲気を醸し出しているその男にカップを差し出す猿。
カップを受け取り、一口飲みながら空を仰ぐ男、
月明かりがスポットライトの様に真っ白に燃え尽きた灰のような男を照らし出す。
「もう・・・お終いだ」
案の定言いやがった。猿飛佐助。
なにやらかしたんだこいつ。まあ予想はつくけどさ。
「どうしたんだよ佐助」
「え??あ!玄蕃!何でこんな所に!」
「他人には言うなよ。頭領が手助けしてやれってさ」
「そ、そうか頭領から見たら俺たちなんてまだ半人前だからな」
「そりゃ、自分も師匠’sから見たらそんなもんだよ。それで何があった?」
「賢樹様に会うために偉いヒトにコネクション作ろうと思ってな。とあるカジノの景品を手に入れようと思ったんだ」
「で、素寒貧か」
「ああ、さっき買ってきてもらったカップスープで、もうゼロだ。俺にはもう何もねぇ」
「適当にそこらの魔物でも狩って、お金に換えればいいじゃん」
「まあ、そうなんだけどな。ここ最近で必死に貯めた金が全部溶けると流石に力も出なくなるわけよ」
「そりゃ、ご愁傷様だな。飯ぐらいは奢ってやるよ」
「すまん」
そう言うので、とりあえずどこでもいいから煮炊き出来る場所は無いかとそのまま裏路地を進むと、
如何にもこの辺りで下働きで食いつないでそうなヒト達が集まる一角。
砂漠の夜は冷える。集まって焚き火で暖を取っているようだ。
「火借りていい?作ったご飯は皆も食べていいから」
そう言うと場所を開けてくれたので、簡単にご飯にする。
こういう場で簡単に食べれるものって何かな・・・。
とりあえず皿にリーフレタスをむしって積んでいく。
とりあえずそれを出してもらった机に置き、
次は鉄板を火の上の設置、アイテムバッグに入っている肉を赤い瓶の調味料で味付けして適当に焼いていく、
菜ばしを近くに置いて、
「焼けた物からその葉っぱで包んで食べてよ」
そう言って、どんどん焼いていけば、皆もそもそ食べ始める。佐助も猿と一緒に食べてる。
この猿、肉も食べるんだな。
そろそろ頃合かと酒を出せば、皆仲良く酒を飲みながら肉を食べ進める。
ある程度、みんなの動きが落ち着いてきたところで、肉を焼く手を止め、残り物で自分も晩酌する。
「無理のない範囲でいいんだけど、賢樹様に会う方法知ってるヒトいない?」
「偉いヒトに紹介してもらうしかないんじゃ?」
「なんか大昔は誰でも気軽に会いに行けたらしいけど」
「そうそう、賢樹様のお祭りって言うのがあって、年に一度皆会いに行ったらしいよ」
「ふーん、なんで今は通行禁止なんだろう」
「さあ?でもあそこのカジノを仕切っているのが大昔からこの地の領主で、賢樹様とオアシスを守ってるらしいよ?」
「ちなみに今はそのお祭りはやってないの?」
「うん、でも賢樹様は賑やかなのが好きらしいから、こういう街にしたんだって、それから規模が大きくなって、都になったんだってさ」
へ~、まあヒトが増えればトラブルも増えるし、賢樹様を守る領主としてはある程度制限せざるを得なくなったのかな。