313.捕縛
再びログインすれば、明るい時間だった。
前日に三人が潜んでいた場所は既にもぬけの殻、まあそれはそう、きっと先に進んでいるのだろう。
多分見える建物に片っ端から入って行くのだろうから、一個づつ確認して行きますかね。
森の中を進み、途切れれば川の中を進んで行く、そうすれば見つかる事も無く、
時折襲ってくる川魚は切り捨てて、今度ご飯にしよう。
そして、辿り着いた場所はあからさまな広場だ。
周りにいくつか建物があるが、様子から多分倉庫だろう。そうなるとここは荷下ろし場かな?
倉庫を一つづつ確認すると、一つは一般品重量物の箱で埋まっている。自分の経験上、鉱石類だろう。
次の倉庫はガランとしているが、二人のヒトが話しているようだ。
一人は投げナイフ使い、仲間に警告でもしに来たのかな?
もう一人は、随分と大きなサイズのガントレットを装着している。武器を持っていないようなので、多分素手と言うかガントレットで殴るんだろう。
そして、奥には縄で縛られたうっかり三人組・・・。
既に捕まってたか~。干物の炙りじゃ力が出なかったかな?
見た感じ、他に一般傭兵がいないところから、ここを守っていたのはガントレットのヒト、もしくは投げナイフ使いも加勢したかもしれない。
3:2で負けちゃったか・・・・。
投げナイフ使いが、倉庫から立ち去り、ガントレットのヒトが三人を連行する。
仕方ないので三人について行くが、ボーナス的な物はもう駄目かもな。
そして、少し狭い倉庫に三人をぶち込む。
狭いのは狭いが妙に厳重な所から、貴重品倉庫かもしれない。
そうなると簡単に鍵を外してって、わけにはいかないよな。
倉庫の外から鍵をかけたガントレットのヒトの後をつける。
すると、先程話していた倉庫に戻っていくところから、あそこが持ち場で、戦う為の準備をしてある場所なのだろう。
さて、どうするか・・・。
一つ目はこのまま待って三人が護送されるまで待つ。自分の予想では人手が足りないので、投げナイフ使いに護送要員を頼んでいるのだと思う。
二つ目は自分がこのガントレットのヒトを倒して、鍵をいただいちゃう。シンプルな解決策だし有力候補だな。
様子を見ていると倉庫の鍵束を腰に下げたまま、倉庫の隅に隠れ始めた。
倉庫に誰か入ってきたところで、閉じ込めてやり合うのかな?
倉庫はシンプルで、扉は一つ、明り取りの窓が上方屋根際の近く。
ちなみに自分は木の上から明り取りの窓を覗いている。
すると居眠りを始めるガントレットのヒト・・・。戦って疲れたのか、待ってるだけで飽きたのか。
いずれにせよ正面の扉から入ってくると見て、浅く仮眠をとっているのだろう。
明り取りの窓からそっと倉庫内に潜入する。
いずれの建屋も明り取りの窓がフリーすぎて、危機感が足りない。
ガランとしているが、とこどころに置いてある箱の裏に隠れ、少しづつ距離を詰める。
すると、一つ空箱があったので、ひっくり返し中に入ると都合の良い事に穴が空いており、外の様子が見える様になっていた。
寝ているガントレットのヒトに近づいていく。
「おい・・・」
寝言か?
「おい、何でか知らないがここに潜入する奴は大体その箱に入りたがるんだ。さっきも三人組が揃って箱に入って近づいてきたが、何故ばれないと思うんだ?」
ばれていたようだ。しかもうっかり三人組と同じ事をしてしまった。
「まあ、それにしても正面扉から入ってこなかった事は褒めてやるがな」
そう言って、箱を蹴ってきた。
箱は蹴り飛ばされたが、軸足を掴み
擒拿術 照葉野茨
すぐに後ろに立ち、首にダガーを当てて尋ねる。
「今までのは全部寝言だよな?」
「ふざけんな!お前の正体は聞いてるぜ!指名手配犯で、決闘王なんだろ?やってやるぜ!他の連中みたいに日和ると思うなよ!」
中々気骨のあるやつらしい、
「自分は怪我人を出したい訳じゃないんだが?」
「うるせぇ!俺達は傭兵だ!戦って何ぼなんだよ!それを探し物だなんだとよぉ。金を貰ってヒトに迷惑かける魔物を狩るのが俺達の仕事なのによぉ。何で皆こんな命令に従ってんだよぉ」
「なんか心当たりがあるのか?」
「うるせぇっての!話が聞きたかったら俺に勝ってからにしろ!」
なんとも直情なタイプだな。やるしか無いか・・・とは言え完全に倒しきれば、自分の立場が不利になるだろうし、こういう奴が相手なら正面からやった方が素直に口を割るかな?
「分った。だがさっきも言ったが無用にヒトを傷つけに来た訳じゃない。ルールを決めて勝負しよう。自分が勝ったら正直に知っていることを吐いて貰おう」
「俺が勝ったら?」
「いくらで雇われたか知らないけど、今回のギャラ分の金を出そう」
「金貨1,000枚単位だぞ?」
「それ位なら出せない事もない」
「うっしゃ!やってやるぜ!その金でうちの団長説得して、こんな所からおさらばだ!」
え?負けるのもありじゃん??
「ルールは簡単チェーンデスマッチ」
「ほぉ・・・そりゃあ。滾るぜ!」
「だが、デスするまでやったら何も聞けない。生命力の8割まで削った所でお終いだ。乗るか?」
「いいぜ!!そう言う分りやすいやり方なら歓迎だ!」