311.戦闘(狙撃)
三人を追って、辿り着いたのはそれまでとはうって変わり、だだっ広い開けた土地。
一見開けているが、向かう先は微妙に坂を上る形になっているし、岩場や盛り土で、隠れる場所も多い。
ここは、回り道か川の中を行くかの二択だな・・・。
獣人が飛び出しちゃったよ。
思わず額に手をあて、空を仰いでしまった。
事ここに至って理解したわ。これ多分このうっかり三人組を目的地まで辿り着かせる事で、ボーナスか何かあるのだろう。
そう言うミニゲーム要素だ間違いない。
傭兵達と自分がやりあった場合、戦闘力にあきらかな差があるし、この三人組を影ながら手助けしてあげてねって事だとしか思えない。
じゃなきゃ、ここまで尽く自分達から罠に嵌りに行かないだろう。
腕を見込んで依頼するなら頭領に依頼すれば、今頃全て解決しているわ!
この地形で、伏兵か狙撃を警戒しないとか、絶対に無い。
流石の獣人の運動神経で坂道をぐいぐい登っていくが、ただの坂に見せて、進む道をさり気無く限定している。
場所によっては砂利で滑り、濡れた土が泥化していたり、妙に綺麗に石が敷き詰められていたり・・・。
遠くから見ていてもあからさまにそこ進むだろうなって場所を平気で進み続け、
何かに躓いたと見えた瞬間、矢が飛んできて肩を貫かれ倒れた。
一撃死?では無いか、どうやら強めの麻痺か何かが出てる。デバフで動作を阻害されてる感じだ。
罠だと気が付いた大人勢二人は助けに行くに行けない。
それはそう、動けなくして仲間を呼び寄せて、寄ってきた仲間も一緒に狩る。
つまり獣人は今餌状態だ。ここで迂闊に近づくなら、自分も助けきれん。
と言っても二人とも軽装だし、どうやって助けに行くのか見ていたが、埒が明かない。
ため息が一つ出てしまうが仕方ない、自分が行きましょう。
装備を〔八岐の外套〕にセットに変えた。
目立たない灰色ローブでは愛剣を担いでないので、少々戦闘には不向きだ。
背中から剣を引き抜き、右手に持って、素早く走って獣人に近づくが、
剣を持って近づいたので、残りの二人にも警戒された。
まあ気にしててもしょうがない。
獣人の横に立った所で矢が飛んできたが、切って捨てた。
相手は一発撃っては移動しているようだが、自分はそのまま坂道を上がっていく。
なんなら足場の悪い場所も<疾走>で駆け抜け、ガンガン距離を詰め、飛んでくる矢をばさばさ切り落としていく。
狙撃手の割りに一発一発に震えが起こる様な殺気を感じないが、まあ打ち落とすには問題ないか。
これがビエーラなら、仮にブロックできたとしても一発一発足が止まる。というかそれ位慎重に一発づつ捌かないと寧ろやられそう・・・そう言うのが自分的には狙撃なんだがな?
急に矢が飛んでこなくなった。
多分射出したら、居場所がばれる所まで距離を詰めたのだろうが<索眼>で位置がもろバレなんだよね。
ゆるゆると近づいていくと窪みに身を伏せるボウガン使い。
狙撃といえば、ボウガンなのかね?【帝国】関係者なのか話を聞いてみる必要があるか。
剣を突きつけ、尋問を開始する。
「さてと、狙撃手がここまで距離を詰められた訳だけど、まだやる?」
「いいえ、やりません」
ここいらの土の色に合わせた茶色い布の中からゴーグルをしたビーグルのような顔のタレ耳犬獣人が現れた。
「腕はまあまあみたいだけど【帝国】出身?」
「一応【帝国】で弓の【訓練】は受けました。出身は【馬国】ですけど、体が少し小さくて戦士向きじゃ無いと言われたので、移住しました」
中々、素直に答えるな。
「嘘は言ってないよね?」
「うちは捕まったら、素直に知っている事を吐くように言われてるので、生きる事優先なので」
「そうか、じゃあ信じようか。自分は大河の【輸送】を正常化するために来た。河族を解放したい。どこに捕まっている?」
「もう少し先の建物になります」
「河族は無事か?後、目的を話せる範囲で教えてもらおうか」
「我々は住人に手を出したりはしてません。監禁はしてますが、殺したり無体な事は絶対にしません。なんか依頼で石を探してます。その石について住民に話を聞いたりはしていると思います」
「拷問は?」
「絶対にしません」
ふむ、全員同じ事を言うんだよな。口裏を合わせてるのか、本当にそう言う集団なのか。
普段は堅気の魔物狩り集団らしいし、なんで急に石を探し始めたのかが、鍵になるのかな?
自分が狙撃手を抑えた事に気が付いたのか、三人が上ってきたので、
自分は一人走って先に進み、遮蔽物に身を隠し、三人の動向を追う事にする。
ビーグル獣人は縄で縛られているが、まあいきなり死ぬような事は無いだろう。
足は縛られてないので、魔物が来ても逃げる事だけは出来るだろうし、
三人組もいざという時の事を考えてか、そこまで無茶な事はしない。
ふむ、この先どんな罠があるのか?そして、きっとこいつら全部踏むんだろうな。困ったものだ。