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310.二つ目の建屋

 表の木の上で、待ち構えていると三人が出てきた。


 なんか困惑しているが、何かあったのだろうか?


 流石にそこいらでペラペラと私語をする事などは無く、黙々と進む三人。


 しかし、さっきの建物では急に傭兵達の態度が変わったが、例のナイフ使いが警告しに来たのかな?


 まあ、別に自分の事話したければ、話せば?って言った訳だし、構わないけどさ。


 川沿いに進むと辿り着いた、次の建物はさっきより少し高さが無い。


 さっきの建物が船の保管所、兼事務所って感じだったから、ここはなんなのかね?


 ここも川に面して大きな門があるところから、船が入れるようになっている。


 ヒトが入れる扉も一つ付いているが、警備の傭兵がいて、


 さらにさっきのように木の上から飛び込めるような場所は無い。


 となると、泳いで門の下をくぐるしか無いかね。


 っていうか三人はそれで行くらしい。それについて行ってしまっては鉢合わせしてしまう。


 別にいいんだけど、折角ここまで隠れてきたしな~。


 扉の無い方の壁を確認してみると、雨どいを伝って上に行けなくも無さそうだ。


 周囲を警戒しながら、そろそろと屋根に上がっていく。


 屋根の継ぎ目にある明り取りの窓から中を覗くと、だだっ広い空間が広がっているが、何となく船の修理とかメンテをするところのようだな、と見当をつけたところで、


 三人が建物の内部に潜入してきた。


 水の中から姿を出し、探索を始めようとしたところで、大勢の足音が聞こえる。


 そして、あっという間に取り囲まれた三人。


 多分クレーンを操作する時に使用するであろう高い位置に設置された壁沿いの通路にひょろっとした一人の男の姿。


 「よう!ネズミ共!今我々は作戦行動中だ!当分大人しくしていてもらおうか!」


 妙に甲高い声でのたまっている。


 さてさて、三人はどうする気なのかね?流石に多勢に無勢だぞ?


 悔しげに、辺りを見回している三人・・・そりゃいざとなったら捕虜になる気みたいだし、無理はしないか。


 三人をほっといて自分一人でもいいが、自分の正体も割れちゃってるんだよな。


 「ひょっひょっひょ!何も言えまい!我輩の策略の前には貴様ら如きの浅知恵ネズミとなんら変わらん!」


 策略って、広いところに人数潜ませておいた事か?


 「我輩は昔から勘が鋭いのだ!ずっと髭がぴくぴくいっておる!見た目の割に危ない奴が混ざってるな!者共!警戒しろ!こいつらは相当危険だ」


 なるほどね、肝は小さいが、生存能力に長けているタイプか。


 今は手槍を向けて三人を囲んでいるが、どう出る?


 その時獣人が、


 「クソ!こんな小物に!一か八かやってやる!」


 そう言いながら、得物を抜く。


 一斉に傭兵達の警戒心が高まり、ひょろっとした男も、


 「ぬっ!やるのか!者共!手向かう奴には容赦せんでいいぞ!仲間の命の方が優先だ!」


 ふむ、なんで、短気おこしちゃうかね?一応腕を買われたんだろうに、


 まあ、だからこそストッパー役の二人か・・・今も二人が得物をしまうように説得している。


 後、ひょろっとした男も小心者っぽいが、仲間を優先するだけの気概はあるようだし、多分生存本能で何だかんだ仲間を助けてきたのかもしれないな。


 別に個の力が勝ってなくちゃいけない訳じゃない。仲間に信用されて、確実に任務をこなせればそれでいいのだ。


 しゃーなしか、双方嫌いじゃないし、自分が悪役をかってでましょう。


 明り取りの窓をそっと開き、ひょろっとした男の背後に降り立つ。


 振り返ろうとしたが、それよりも早くダガーを喉にあて、


 「動くな・・・いや、動きたければ、動いてもいいぞ?」


 「うっ動きません!」


 一斉に自分とひょろっとした男に視線が集まる。


 「そうか、賢明だな。お前と部下の命を双方助ける方法があるとしたら聞きたいか?」


 「聞きたいです!」


 「まず、三人を逃がせ」


 「いや、あの、それですと・・・」


 「交渉の材料が無くなるか?」


 「あっはい・・・いや、しかしどうしてもと言うなら・・・その」


 「じゃあ、自分が先に立ち去ろう。その後に解放してなければ、この建屋ごと消し飛ばす」


 「どうやって?」


 「(フェニックスフレアボムで)」


 「(ふぇにっくす・・・ふれあ・・・ぼむ?)」


 「(なんだ、この前の闘技場の獅子英雄杯は見ていないのか?戦闘員Aを知らないか?)」


 「(ひえ?決闘王?)必ず解放します!誓います!」


 「あと、ここの住人を傷つけたりはしていないか?」


 「してません!一方的な暴力とか虐待とかこの世で一番嫌いなのでそういうことはしません!」


 「ほう、そう言うヒトは嫌いじゃない。良かったなコレからもその心がけを忘れるなよ」


 「はい!」


 そう言うと、壁の継ぎ目を伝い、また明り取りの窓から外に出た。


 少し屋根の上から様子を見ていると三人は扉から追い出されていた。


 しかしまあ、あんな小心者っぽくてヒトを傷つけるのが嫌いそうなのが何で傭兵なんてやってるんだろうな?


 まあ、仮に逃がさなかったとしても、フェニックスフレアボムは返しちゃったけどね。


 なんかすっかり悪役が板についてきたな~。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 小心者が傭兵になった理由が明かされることはあるのだろうか…w
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