305.闘技場名物
最後にリングにもう一度上げられた時は、元の戦闘員A。
ライオンのフルフェイスマスクを被ったヒトに勲章と石を貰う。
さらに、隣にいたお姉さんから闘技場永久無料観覧券を受け取った。
なにやら激しいリングアナウンスがあったが、自分に聞こえたのは、
[今後元決闘王は弟子を広く募り、鍛えて下さるとの事!力を求める若人よ!集え!]
まあ、ライオンマスクの下の目は落ち着き澄み渡り、佇まいに隙と言うものは一ミクロンも存在しない。
師匠キャラだな~っていう・・・勝てる気がしないんだよね。
そして、個室に案内され、元決闘王と対話する。
「代々決闘王に伝わる話をしておかねばならない」
「はい、自分は石が必要だっただけなので、正直決闘王の名を受け継ぐのは荷が重いのですが」
「そうか、じゃあ、尚更聞かねばならない話だろう。その石にまつわる話だからな」
「そう言うことなら、是非」
「うむ、初代決闘王は強かった・・・それはもう最強と言える存在だった。それでも邪神の化身や邪神の尖兵の前には震えたらしい。絶対に勝てぬ相手の前に体が動かなかったという」
「自分は邪神の尖兵だけは戦った事がありますが、剣の持ち方すら分らなくなりますね」
「しかし、当時漆黒将軍と呼ばれた決闘王には遠く及ばない普通のヒトが、さらに弱い者達を鼓舞して、戦ったと言う。戦後初代決闘王は石に望んだそうだ。自分よりも強い相手に挑戦する勇気を・・・それが【闘士】スキル<獅子魂>だそうな」
「そうだったんですか、自分は指揮もするので<獅子魂>とは違ったスキルや術を採っていますが、自分より強い相手であろうと怯まずに挑戦していきたいものです・・・」
「ふふ・・・石に選ばれた者よ。きっとそなたの前には大きな試練が立ちふさがるだろう。しかし、そなたは一人ではない。仲間と力を合わせて乗り越えるがいい」
そう言われて、送り出される。
地味なローブに身を包みロームから立ち去ろうとすると、本当に何も無い平原で、呼び止められた。
「HEEEY!犯罪者野郎!楽しい一時はこれでお終い!地獄に落ちて、俺の夕飯なれ!」
「うん、雑魚が話しかけないでくれる?脳の容量の無駄だから」
こういう輩は相手にしないに限る。
「いいのか?そんな事言って?闘技場名物って知ってるか?闘技場でちょろっと勝って浮かれたやつらを狩るPKよ」
「ふーん、あれでしょ?格闘家とかにボコボコにされて『ストリートなら!』とか負け惜しみ言うやつでしょ?他当たってもらえる?」
「他~~?あのよ!調子くれた【闘士】狩るのもいいけどよ。大会に勝った猛者で、さらには指名手配の賞金までかかってる奴を逃す手があると思うか?」
「逃した方が身の為だよ?」
「そいつはどうかな!」
そう言うとわらわらと如何にも雑魚ですという奴らが、10人、20人、100人・・・いっぱい・・・。
「HAHAHA!どうだ~!名だたるPKがPKKされたのは知ってるんだよ!んで?この人数を相手にイキれるならイキってみな?」
あ~なんかイライラしてきたわ・・・。
「お前らみたいなダニが何百匹集まった所で、何が出来るんだよ?指揮官もいない羊の群れが、狼に勝てると思ってるんだ・・・。勘違いしたまま死ね!ミナゴロシダヨ!」
その時、勇壮なBGMが流れる。
「待てーーーい!ただ自らの欲求を満たす為多数で一人を襲うなど言語道断!太陽はお前の行いをいつも見ているぞ!とう!プロミネンスレッド!」
「月は暗闇に蠢く者の姿を照らし出すムーンライトイエロー!」
「全てを飲み込み全てに染まる・・・スカイブルー」
「迷える者の道しるべ!スターライトシルバー!」
うん・・・赤、青、黄色の追加戦士銀かな?
「我ら天空戦隊!どんな悪事であろうとも!空はいつでもお前の上に有り!見逃す事は無い!!!」
そしてBGMが変わる。どこか寂しげな曲調だ。
「俺は復讐を止めた・・・なぜなら全てのヒトに戦う理由があるからだ。ならばその苦しみを共に背負おう。いつか平和な世界が来ると信じて!カイザーフェニィィィックス!!」
黄金の鎧に身を包む鳥を模した前身鎧のヒーローが現れた。
「闇に生き、闇に死ぬ・・・。ヒトの目を盗み闇に蠢く者を滅誅す!」
忍者としか思えない黒装束のヒーローがあらわれたが、装甲が重そうだし、どこか違う。
「【森国】の奥の隠れ里に行けば【隠密】になれますよ?」
「ちょっとその話詳しく!」
「三羽烏って言うプレイヤーが詳しいですよ」
「情報、恩に着る!恩には恩を怨には怨を!この恩はこの身で返す!例え粉々になろうとも!」
そして、馬に乗って現れる。騎士?十字軍モチーフなのか、体中に十字の意匠がある。
「我はバロン!多数で一人を囲む者どもよ卑怯千万!我が剣の錆びにしてくれる!!」
そう言って背中から、これまた十字の剣を引き抜く。騎士風ヒーロー。
しかし、どこからこのBGM聞こえるのかな?と思ったら、
「慈悲深いロックの神が許しても俺が許さん卑怯者共!ロックレッド参上!」
「ふん!メタルグリーン推参!」
「ブルース・ブルー・・・」
「サンバイエロー!」
「クラシックピンク」
どうやらこの5人組がBGMを弾いていたらしい。
「ふん、コスプレ野郎がちょっと増えたところで、何になる?覚悟し・・・」
「正義には正義の信念が、悪には悪の美学がある!でもあなた達は許さない・・・品性と言う物を感じさせないから」
四天王のお姉さんだ!
隣にはホッケーマスクに斧を持ち、湖畔でグランピングしている若者を襲い出しそうな凶悪な雰囲気の・・・女性
さらにはタイトで体のラインのハッキリする黒いローブ、星が瞬くようにキラキラとしたスパンコールで飾られている。
「ふふ、夜が全ての罪深き者を包み隠そうとも、夕暮れに悪を模して自己を取り繕う為にヒトを害する者共を私は許さないわ」
何故かムーンライトイエローとスターシルバーが『姐さん!』って叫んでる。
そして、最後は黒いロングの髪を靡かせ、青いチャイナドレスに鉄扇を持った女性。顔も自信ありげに目の所だけ宝石を散りばめた仮面をしている。
四天王って全員女性だったんだな~。
そこから、怪人もわらわらとヒーローの時のように一人づつ曲が変わるような事は無いが、どんどんでてくる。
「まだ眠るのには早かったようだ。いずれ神の世界に復活する為にはこの世の大掃除が必要か・・・アヌビーーーース」
黒い大きな犬を連れて現れたミイラ男。接近戦苦手そうだと思ったら、テイマーだったのか。
さらには最早人語を話さない緑のカミキリムシのような怪人。
そこから、今度は全身にギアモチーフの機械っぽいコスチュームの怪人、まるで脳だけが生きて、機械の体を動かしているかのようだ・・・よく見ると胸のギアとかちゃんと動いてる。どうやってるんだろうあの衣装?
大会に出ていた怪人達が、なんなら大会で見た記憶のない怪人まで、溢れかえる。闘技場都市ロームのすぐ近くの平原に、
それはもう、所狭しと。
「行け!戦闘員Aよ!ここは俺たちに任せて、お前の使命を果たすのだ!」
そう言って、ヒーローと怪人達に見送られ、脱出する。
遠目から見る戦闘は激しい大爆発やら砂嵐やら、あれはあれで楽しそうだなっていう。