304.決勝後編
「まあ、痴漢てのは冗談だけど随分荒っぽくなったじゃないさ」
「指名手配生活で心が荒んだかね?」
「ふん!投げやりだとか雑だとか言ってるんじゃないよ。静動使いこなせるようになってるってのさ」
「なんか師匠’Sに追い込まれたからね」
「ちと、早いが切り札を切らせてもらおうか、受身は趣味じゃないんでね。ちなみに解説は無しだからその身に刻みな!!」
バチバチと全身に青白い放電現象を纏い、その勢いがどんどん増して行く。
電光石火
それまでとは比べ物にならない高速で、間合いを詰めてくる炎の巫女。
残像が発生するスピードで、打ち込んできた突きをガードする・・・というかブロックには至らない。
即、わき腹にも拳が飛んできたがこれは剣を持っている方の肘で受ける。
急に目の前に迫ってきた膝は後ろに倒れこんで、かわす。
そのまま転がったが、一瞬で追いつかれ踏みつけを食らった。
しかし、地面についている方の足を抱え込み、そのまま掴む、
擒拿術 照葉野茨
足が地面にくっついた事に一瞬動揺したのか、その隙に転がって逃げて、
距離をとにかく取る。
炎拳術 獄炎弾
火の玉が追ってくるが、何とか転がって避け、 距離を取れるだけとって、警戒態勢。
炎の巫女がなんだか地団太を踏んでいるが今の状態で、近づくのは危険が過ぎるだろう。
放電現象がおさまった所で、照葉野茨の効果も切れたのか、歩いてこちらに寄ってくる炎の巫女。
「ったく!!取って置きをこんな形で封じやがって!!残像が発生するほどのスピードの連撃だよ?!普通はボコボコになって宙を舞うんだよ!」
「知らないよ・・・ボコボコとか嫌に決まってんじゃん」
「ふぅ・・・ふふふふふふ、まあいいさね。アンタその手の震え・・・麻痺が発生してるね?だから追撃してこなかったんだ?」
「さあ、ね?」
「ふははははは!誰もが嫌がるアンタのスピードと正確さをこんな形で封じれるとはね~~」
確かに、全身が痺れて動きがぎこちない。こりゃ博打打つしか無いかな。
〔連結の首輪〕を繋げ、生命力と精神力を連結する。
炎の巫女がゆるゆると歩いてくるので、間合いに入ったところで、思い切り剣を振り回す。
余裕綽々と笑みを浮かべながらかわす炎の巫女が、顔面に突きを打ち込んできたので、肩当で受ける。
反対の手で心臓を狙ってきたので、半身になって避け、同時に飛んできた下段蹴りは膝を曲げ腰を落として腿で受けた。
もう一度剣を振れば、バックステップで簡単に避けられ、
炎拳術 獄炎弾
至近距離で火の玉を打ち込まれ、燃えながら吹き飛び、追撃で、
炎拳術 獄噴火
体が焼かれながら剣を何とか地面に突き立て、
凍剣術 獄霜界
ダメージを追いながらも何とか中和した。いつの間にか火傷のスリップダメージまで発生している。
剣を支えに立ち上がったところに、飛び込み中段突き。思わず腹を抱えてしまう。
「ふん、どうだい?たまにはそちら側を味わうのも乙なものだろう?」
「こっち側?」
「どんなに殴りかかろうが避けられて、急所に一撃カウンター、硬直した所を滅多突き・・・それでも諦めず、先読みして振った会心の一撃をブロックされて硬直した所を滅多切り。アタシ達なんかを除いた普通のプレイヤーからしたアンタの印象って、そんなもんだろ?」
そう言うもんなの?自分と戦ってる相手って麻痺されたところをボコボコにされてるの?
炎拳術 獄炎拳
腕に炎を纏い羽のように炎が肩から広がり、突進突きを見舞ってくる。
勝負をつけようと言うのだろうが、流石にただの直線攻撃はブロックさせてもらう。剣を持つ右手を前に半身になって体全体を使って、剣で拳を受ける。
相手の決め技に精神力をゴリゴリ持っていかれるが我慢!
なんとか耐えたものの、逆の手でわき腹に抉るような一撃。
しかし、相手から隠れている左手で腰から筒を抜き取る。
炎の巫女の前に差し出し、スイッチを入れる。
「ふん!自爆かい!真似しやがって!」
炎の巫女が顔の前で手をクロスさせたのが見え、
闘気術 硬気
大爆発が起こる。
直前に術を発動した炎の巫女が吹き飛ばされ、リングを転がる。
仰向けになって止まり、
「ふはははは!フェニックスフレアボムだったかい?アタシとはちょっと相性が良かったみたいだね。火精ダメージじゃあ、アタシは倒せないよ!まあ硬気すら抜く物理衝撃はこたえたけどね」
ゆらゆらとゆっくり立ち上がる炎の巫女が、ぎょっと中途半端な体勢で立ち尽くす。
「え?なんで、なんとも無いんだい?」
炎の巫女にナイフの柄尻の蛇を向け、毒霧を噴射する。
顔を押さえた炎の巫女に逆手に持ったままのナイフを突き立て、
<復讐>
炎の巫女が光の粒子に変わる。
「自爆ブローチコンボ、ぶっつけだったけど、決まって良かった・・・嗚呼・・・きっついわ~」
[勝者!戦闘員A!]
[かくして、浄化の炎まで手に入れた戦闘員。ただのヒトだった者は力を手に入れ、姿を消す。ただ一人決戦に向かうため・・・世界の運命や如何に]
アナウンスと共にリングから立ち去る。