301.太陽の戦士
明るいリングに一人佇み天井をぼんやりと眺める。きっと背中には虚無を感じさせるであろう。
「見つけたぞ!最後の戦闘員!覚悟しろ組織の命運はもう尽きたのだ」
思わずベルトをなでつつ、振り返る。
[よく来た太陽の戦士プロミネンスレッドよ・・・組織の命運か・・・分っているのか?我ら戦闘員は一にして全、全にして一。言葉にすれば意味深だが、要は全ての戦闘員はごく普通のヒトだ]
「何!!!何故普通のヒトがこのような真似を・・・知っているのだろう?今や組織の戦闘員は怪人の反乱とヒーロー達の攻勢に生き残っている者はお前だけだという事を」
[例え普通であろうとも、生き残らねばならん・・・『邪神の化身』・・・所詮この世は神と邪神の綱引きよ。そして我らは一様に神の手先、しかしただの手先であろうとも生き残らねばならん。なれば邪神の化身に対抗する力が必要だ]
「だから、力を集めていたというのか?それが正義だと思っての事か?もし本当に戦闘員が普通のヒトだと言うなら、我らがきっと守ったというのに!」
[正義と悪の線引きは一体なんだ?つまらぬしがらみを全て取り除けば結局の所、生存競争に勝つか負けるかだ。そして、思い上がるなレッド!お前達のような個人の武勇を誇る者がいくらいても邪神の化身は倒す事は叶わぬ!力を集約し、真の意味での力を完成させなければ、邪神の化身に太刀打ち出来ぬ!]
「だとしても、俺達は悪に立ち向かう!弱きを守るため!ただ普通に暮らしたい人達のため!」
[よかろう、なれば悪の名は我らが負おう・・・だが、ヒトの未来を生を運命を背負う覚悟があるなら、示してみよ。お前のその剣で語れ!もしお前の覚悟足りなくば・・・我が力の一部となれ]
勇壮なBGMが流れはじめる。まさにラスボス戦と言う感じだが、自分がラスボスと言う事でいいのだろうか?
「YEEEE!」
視界が歪み始める。赤が緑に、黒が白に、色彩がめちゃくちゃになっていく。
「照らし出せ!日輪よ!」
色彩が戻り、リング中が明るく照らされる。
「太陽は常に皆の上にあり、あまねく平等に照らし出す!」
キルゾーン不発しすぎ。
しかし、酒場での会議を仕切ってた人、レッドってさ・・・戦隊だったのか~。
そして、背中から引き抜くのは大型剣、身長よりも長い刀身の分厚い鉄の塊。
「サンライトぉ!ザンバー!」
斬馬刀ってことだろうか?流石に斬馬刀よりは短いが、本当に馬くらい切れそうなサイズとも言えるか。
しかし、和洋折衷な太陽を表現した防具はどう見ても、重甲だよな。
<全金属>になるのか<半金属>になるのか分からないけど全身の殆どを装甲が覆っている。
武器にせよ防具にせよ重量が尋常じゃない事になりそうだ。相当の装備許容量なのだろう。
スピードで、かき回すしかないか?自分も兜割を引き抜き、構える。
[プロミネンスレッドVS戦闘員A!Fight!]
いきなり両手で振りかざした大剣を真っ直ぐ振り下ろす。
すると衝撃波が走り、襲い掛かってくる。
足を大きく開き、兜割を前に衝撃波をブロック、一瞬足が止まるが間合いを詰めるために走り出す。
そこに今度は横薙ぎに振り回してきた。
上によければ、飛蝗スーツの所為で大ジャンプになって、着地のタイミングを狙われるだろう。
ならばと、兜割を立てて、受け留める。
ブロックが成立し相手は硬直するが、自分も衝撃で足も腕も動かない。
それにしてもブロックを抜けるダメージ量が多い。最初から受けさせて削るような組み立てなのか。
やっと動けた所で、相手も動き出し、剣を引きながら一歩下がり、頭上で一回転させる。
一歩踏み出した瞬間に物理的な重圧を感じ、足が強制的に止まる。
大剣がエフェクトを発している事から、何かの術だ。そして再び真っ直ぐ振り下ろしてくる。
今度は自分の頭上に降ってきた鉄の塊を兜割で受け留める。
押し潰されるような衝撃を何とか堪え、やっと動き出せるタイミングで相手の硬直も解けた。
軽くその場で足踏みし、足の感覚を確かめ、普段はあまり出さない全速力で間合いを詰める。
急加速に驚いた相手は大剣を立て身を隠す。
打てる場所は・・・持ち手!
金属製の小手に包まれた手の小指を狙い、思い切りスナップを効かせて殴れば、大剣を取り落とす。
体の末端ほど、ダメージ許容量が低い、どうやら部位破壊に成功したようだ。
「くっ指ピンポイント狙いとか・・・どんな命中力だよ」
そう言いながら、腰の棒を引き抜き、一振りすれば伸び、節がカシャン、カシャンと音がする。
三段警棒かよ!
「レッドバトン!」
叫びながら殴りかかってくるが、大振りだ。多分元々はもっと重い鈍器を力づくで振り回していたのじゃないのだろうか?
スナップを効かせ、バトンを一打弾いて、肘裏、肩、首、顔面、頭部、と打ち込み、
そこから、さらに鳩尾を突く。
「ぐぐ・・・」
くぐもった声と共に、両手で頭をかばう様な体勢をとり、全身からエフェクトを発する。
動かない所から、防御系の術だと思うが、念のため一回殴ってみると、跳ね返される。
試しに掴んでみようとしたが、それも跳ね返された。
エフェクトが消えるまで、何も起きなかったという事は、時間稼ぎか。
破壊したのは小指一本、部位破壊からの回復時間を稼がれた。
今度は体を縮め片手の指で地面を軽く触れている。今にも飛び込んできそうな気配に警戒する。
そしてまた全身からエフェクトを発し、今度は突進してきたので、横に避けて一撃殴るも弾き返される事はなかった。
しかし、相手は大剣を再び掴んでいる。
そして、大剣で体を隠すように構えると、広い剣身から獣が飛び出してきたように見えたので、反射でガード。
強力なノックバックの攻撃だが、何とか堪える。
・・・なるほどな、大盾の性能をもった両手剣て事か、ずるいな~。でも装備するには相応にスキルを組み合わせなきゃいけなさそうだし、自分みたいな行き当たりばったりなタイプじゃ無理か。
間合いを取れなかった事に焦ったのか、横薙ぎに振り回してくる。
しかしそれは、すでに見てる・・・。
飛びこむように転がって、間合いを詰め、相手が剣を振り切る間もなく、足を掴み、
擒拿術 照葉野茨
大剣を振り切った時には真後ろに立つ。
頭を一打ちすれば、その場でクラつくレッド。首を後ろから掴み、
吸う右手
動き出したところで、膝裏を打てば、そのまま地面に膝をつく。
兜割を持ち替え、左手で顔を掴み、
吐き出す左手
兜の内側の顔が焼け、もがき、手を離せばがっくりと下を向き首を差し出す。
首を兜割で、打ち込みとどめ。
崩れ落ちながら光の粒子に変わった。
[かくして、人々を照らす日輪の力まで奪った組織。これから始まるのは暗黒の時代か救済か・・・力を完成させる最後のピースを手に入れるため、戦闘員は一人となっても歩み続けるのだった]
[戦闘員A!決勝進出!]