295.赤VS剣聖の弟子
一人はさらさらのミルクティー色の髪に白い蝶を模した目を隠す石膏のような仮面を着けた少年。
もう一人は体格がよく赤い鎧に両手剣を持つ偉丈夫。仮面だけ古風な鎧武者風だ。
「よう!お前とは一度手合わせしたかったぜ」
「奇遇ですね僕もですよ。ただしもう少し成長されたあなたとね」
「手厳しいな。俺も一応それなりに【訓練】積んできたんだがな」
「そうみたいですね、立ち姿が中々様になってますよ」
赤騎士は両手で正眼に構え、対する剣聖の弟子はまだ納刀したままだ。
剣聖の弟子が体を捻り、抜刀の構えを取り、両者の緊張感が高まっていく。
何を合図にしたのかは戦っている二人にしか分からない。
剣聖の弟子の姿が消えると同時に、剣を逆手に持ち地面に突き刺す赤騎士。
地震の様な揺れと同時に地割れが発生する。
剣聖の弟子は赤騎士の横に現れるも足をとられバランスを崩し、剣を抜く事が出来ない。
そこを狙い打つように、剣を引き抜き横薙ぎに両手剣を振るう。しかしそれは鞘を立てて受け留められる。
その体勢のまま鞘を下に剣を上に引き抜き、赤騎士の肩に振り下ろされる、日本刀。
黒いエフェクトを纏った刀身を叩きつけられた赤騎士は、巨大な重圧を受けたように体を屈めた。
肩甲骨から軌道を変える様に、今度は内側から横薙ぎに振る刀と赤騎士が顔の前に立てた両手剣がぶつかり火花が散る。
そのまま再び納刀する剣聖の弟子、脇構えに構えなおす赤騎士。
「剣を隠して間合いを悟らせないようにしたければ、最初からその構えの方が良かったんじゃないですか?」
「ふん、動き出しはどうやったってそっちの方が、早いんだ。迎撃の構えにしただけさ」
剣聖の弟子の姿が消える。
赤騎士はすぐに身を入れ替え、後ろを向き、脇構えから下段に構えなおす。
しかし、まだ剣聖の弟子の姿を捉えていない。
目の端に紺色の何かが映るとそれを術を纏った両手剣で迎え撃つ。
距離を取った剣聖の弟子の遠距離攻撃を無事相殺し、
上段構えから全身にエフェクトを発し思い切り足元まで振ると、
一瞬で滑るように間合いを詰め、そのまま斬り上げる。
剣を避けるように、大きく飛びあがった剣聖の弟子は、空中でそのまま剣を振り上げ、術の効果でさらに高く舞い上がり、
剣が孤を描けば空中に三日月のエフェクトが残り、赤騎士に向かって飛んでいく。
術の発動が間に合わず、已む無く左腕で受け留める赤騎士、追撃の抜刀術で、さらに背中から斬り付けられる。
すぐに振り返り、抜刀術から返す刀で斬りつけてきた剣を振り上げた両手剣で弾き、その反動で一撃入れた。
「何の術も乗っちゃいないが、コレが反動切り、所謂ツバメ返しってやつだ」
「現実でやってる人の意地ってやつですか、でもここでは僕の方が強い」
「そうだな、しかし、PK専門のお前がなんで急に闘技場なんかに来たんだ?」
「僕より強い人を倒しに」
「あん?爺さんは外海に渡るとか言ってたぞ」
「もう一人います。僕に土をつけた人はね」
「そっか、爺さん以外にもお前を倒せる奴っているんだな。こりゃもう一撃位は入れてかなきゃな」
「何でそうなるんです?」
「意地だろ。ずっと最強の騎士団て言われて、実は全然そんな事なかったわけで、一からやり直して、いくらなんでも勝てないからって投げ出すような事は出来ないぜ」
「そうですか、行きます」
今度は正面から高速で間合いを詰め突きを見舞う剣聖の弟子に、明らかに間合いの外からの攻撃にフェイントを疑い、左右を確認する赤騎士。
しかし、剣聖の弟子の突きが伸びきった所から、さらに剣の鞘が射出され赤騎士の肩口に当たり、よろめかせる。
そして、刀を両手持ちにし、胴をきりながら斬り抜け、さらに背中に縦に一斬り、
赤騎士の振り返りざまの術を乗せた一振りは完全に避けられ、振り切ったところで喉を裂かれた。
赤騎士は出血のエフェクトを発生させながら、剣を振りぬいた剣聖の弟子に、ショルダータックルを入れる。
術の乗ったそれは、思い切り剣聖の弟子を撥ね飛ばす。
勢いが無くなるまで転がった剣聖の弟子がゆらりと立ち上がる。
ゆっくり息を吐き出し、全身から力を抜き、刀を右手にだらりと垂らす。
少々の間天井を見てボーっとしてる。
「あなたの意地見ました。なので僕もあまり他人に見せない技で応えます。縮地」
一瞬で赤騎士の横に姿を現したかと思えば、いつの間にか反対側に少し離れて現れる。
消えては現れるを何回か繰り返した後、
「行きます。千光刃」
赤騎士の周りを鋭い剣閃が無数に走るとその場で赤騎士が崩れ落ち、光の粒子に代わった。
[勝者!剣聖の弟子!]