289.予選会
予選当日英雄記念闘技場に時間通りに行くと、
やや小型ではあるが客席と近く不思議と熱気が伝わる会場にて、説明を受ける。
[コレから行われるのは~~~!バトルロイヤル!予想以上の参加者をふるいに掛けるため、一斉に戦っていただきます!]
道理で、大きなリングの上に何人も一斉に集められていると思ったよ。
しかし、バトルロイヤルとかロワイヤルとかいつから言われる様になったんだかね?
まあ、分かりやすいからいいんだけど、ふと気になっただけ。
さて、周りは知らないヒトばかり、プレイヤーが多い様に思えるが、NPCも紛れてるな。
予選会と聞いていたので、手の内を見せないように剣をしまって、兜割りを主武装の様に見せかけているのだが、失敗したかな~。
初っ端から全力で行くべきだったよな。
まっ仕方なしか。負けたら優勝したヒトの所に交渉しに行こう。お金なのかレアアイテムなのか、なんにせよ聖石交換してもらう方法を考えるしかないな。
軽く屈伸して、スタートの合図を待つ。ルール説明が続いているが、要はリングアウトは一発負けらしい。
どうやら、この会場だけでも何戦か予定があるらしいので、サクサク進む事になるだろう。
しかし、仮面武闘会だけあって皆独特の格好してるな。
着ぐるみにしか見えない熊の人とか、武者の様な髭付の面をかぶったヒト、短パン一枚に全身粧印術を施して天狗のお面をかぶっているヒト。
まあ、イベントが不完全燃焼だったから、全力でお祭り騒ぎしてやろうって事らしいし、仮装パーティ的な意味もあるのかな?
そう言えば、ハロウィンて・・・。
「はじめ!!!!」
考え事してたら始まっちゃった。まあ、ちゃんと周りの様子を見ながら考え事してたらから、慌てたりはしないけどね。
開幕と同時に煙幕を使う者が現れた。同時に何かの術で視界をつぶす者もいる。
皆考える事は一緒か。視界をつぶされて、うろたえる者から狩ってしまおうっと言うのだろう。
視界を<索眼>に変えて様子を探れば、動かない者とがむしゃらに武器を振るものと的確に一人づつ狩る者とに別れている。
狙われたくもないし、ここは狩る側に廻りますか!
どうやら、動いているのは二人、動かない者を中心に狩っている様だ。
じゃあ、自分はがむしゃらに武器を振るものを狩ろうじゃないか。
だって、動かないヒトって、待ち構えてる可能性もあるもんね。
まずは両手槌を振り回す巨漢、振り切ったところを兜割りで、もう一押しするように叩けば、急に加増した重さに体勢を崩す。
頭が下がった所にスナップを効かせて、こめかみに一打入れると、両手槌を地面につけてフラフラとしだしたので、左手に兜割を持ち替え、右手で首を掴み固定しながら
吸う右手
吸収と同時に、頭部を徹底的に殴りつける。
再始動と同時に手首を打ち武器を取り落とさせ、刃は付いていないが尖った兜割りの先端で喉を突く。
くぐもった声と同時に、光の粒子に変わった。
自分が一人倒している内に、それぞれ視界を潰した者は二人倒していた。
多分奇襲とか、相手から気が付かれない状態からの攻撃でダメージが乗るタイプなのだろう。
だからこその初手視界妨害なのだろうし、
さて次の獲物をどうするかと思っていたら、さっきの裸天狗に一人が突っかかろうとしている。
そして、吹き飛ばされた。同時に視界を遮っていた煙幕なんかも消し飛んだ。
あれだな、ガイヤが使ってた<闘気術>って事はこのヒトは闘技場の玄人か、慎重に行かねばな。
いくらかすっきりした会場。ちなみに吹っ飛ばされたヒトは場外負け。可哀想に。
視界を通常に戻し、辺りを見回せば、裸天狗、熊、白いフード付ロングローブに両手にナイフを持っていたもう一人の視界ゼロで戦ってたヒト・・・フードが鷹の意匠だから鷹と呼ぶ。
他には、「ソードダンス!」って叫びながら、未だに剣を振り回してる両手剣士、ロングソードを二刀流なんてなんつう膂力とボディバランスだ。
最後に<総金属>の全身鎧に大盾メイス持ちのゴリゴリ重武装前衛タンク。
まず、熊がタンクに向かって行く。体型的にはどちらも背が高いし、合いそうだな。
次に裸天狗が両手剣士に向かって行く。
って事は自分が・・・いきなり背後頭上から攻撃されるが、殺気を感じ取りブロック。
硬直した所を喉に一突き。追撃で鳩尾にもう一突き。顔面に一打。
ローブを掴み、地面に叩きつける。地面に縫い付けるように突こうとした所で、
姿が消え、少し離れた場所に立っていた。
そして、また姿が消える。剣聖の弟子みたいな瞬間移動系のスキル使いなのか。
殺気を感じたのだが、今度は転がって避けてみると地面にナイフが一本刺さる。
そこに現れる鷹、ナイフはいつの間にか手の中に納まっている。
そしてこちらにナイフを投げつけてきたので、打ち落とすと真横に移動している鷹。
接近戦でナイフを突いてくるが、まあ軍務尚書に慣らされた自分としては、
体の軸を外すように動き、そのままナイフを持つ手を掴む。
そして、相手の動きをコントロールしたまま、体中の急所を突きまくる。
鷹が反対の手に持っていたナイフを放った所で、姿が消えるが、ナイフの方にいるのだろうと、追いかけ、適当に打てば、鷹に当たり、光の粒子に変わる。
その時点で残るは三人、熊、裸天狗、自分。
ちなみに熊も裸天狗も武器を持っていないところから<素手>の使い手だろう。
って事は二人とも【闘士】の可能性が高い。どう戦うかな~。