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283.裏の仕事

 「さて次だが、ちと今までと毛色の違う仕事を頼みたい」


 「暗殺はやらないよ」


 「暗殺の必要が出たらこちらで始末しよう」


 「まじかよ。いきなりどす黒い世界にぶち込むね」


 【砂国】海岸地域の広い別荘でのんびり過ごす事数日。


 今の上司とソファで向かい合いながら、話す。


 内容が内容だけに警戒心も高まり、声も自然と小さくなる。


 「ところで、見ず知らずの第11機関が、何故隊長捕縛側に廻ってるのか知ってるか?」


 「知るわけ無いじゃん。見ず知らずなんだから」


 「そりゃそうか、第11機関は【輸送】関連だ。つまり隊長とライバル関係にあるわけだ」


 「ただでさえ【輸送】は手が足りてないんだから、ライバルとか無いじゃん。別に寧ろ協力する気しかないよ」


 「隊長はそのつもりでも、現状【輸送】の手が足りなくなって、またその分稼げる様になってる。つまり敵対する気は無くとも、大人しくしておいて貰えれば、それだけで儲かるって寸法だな」


 「酷い話だよ。もっと世の中全体の事を考えて貰いたいものですね」


 「隊長は世のためヒトのために、仕事してるのか?」


 「いや、自分の任務だからやってるだけだけどさ。言ってみただけじゃん。そりゃあ自分の組織の利益を考えるのは当たり前でしょ。だからこそ、今回の任務で自分の側についてもらうって話なんでしょ?」


 「お察しのとおりだ。まあ、付いて貰うって言うより、脅す方になるかも知れないがな」


 「脅すって・・・物騒なんだよな。第11機関が悪さでもしてるんだ?」


 「安心しろ、そんな第11機関を揺るがすような大事件に巻き込もうって訳じゃない。悪さしてそうな奴が一人いる。そいつの調査だ」


 「まあ、そんな所だよね。自分は別にこの第10機関内じゃ立場は高くない筈だし、そこまでの大事件じゃなかろうとは思ったけどさ」


 「ふん、察しが良いのか悪いのか、と言うわけで聖石は一旦お休みだ」


 「別にいいけど。それで、悪さってのは何やってるのさ?」


 「荷抜きの疑いだな」


 「疑いね~。何?積荷の目録の改ざん跡でも見つかった?」


 「見つからないな。だから隊長だ。今のところ妙に羽振りの良くなった奴がいるってだけだ」


 「急に羽振りが良くなると恨まれたりするもんだよね。馴染みの女に貢いでるとか?」


 「よく分かったな。飲み屋の馴染みの女相手に、酒飲んで大仰に金があることを吹いてるらしい」


 「酒飲めば誰だって気も大きくなるだろうに、そんなの小物じゃないの?他所が口出しするより、第11機関内部で処理させなよ」


 「だが、大店の主だってそれで所帯潰すんだ。それだけで小物だと断定出来ないだろ。何より証拠が見つからないってのが、怪しいんだよ」


 「組織的にやってるってことかね?でも荷抜きだったら、絶対記録の改ざんは見つかると思うけど・・・。積荷を送る側と受け取る側双方に共犯がいるんだろうが、それにしたって、勝手に載せて、秘密裏に受け取った?離れた場所にいる相手が載せた荷物をピンポイントで共犯者が狙って降ろせるか?」


 「頭がまわり始めてきたか?」


 「ん?まあね。でも共犯がいる荷抜きじゃ、相当高価な品を裏で捌く事になるんだろうけど、それがバレないんだったら・・・お手上げだね!」


 「諦めるのが早すぎるだろ。一応相手は【教国】が所有している【輸送】用の倉庫地帯の警備兵の一人だ」


 つまり、物を運んでる部署じゃなく預かって管理する部門か。


 とは言え基本的に積荷は現地に着くまで開ける事は無いから、倉庫だと基本的にどこに行く箱かしか分らない筈。


 もちろん目録はあるけど高級品と危険物の扱いは厳重の筈。


 となると一般品の中に高級品を紛れこませてるのか、確かに一般品は箱がバラバラな事も多いし、任意の箱に積める事も出来るが、でもあからさまな箱が消えていれば、やっぱりばれるか。


 それも、高級品を紛れ込ませて捌くって事は、どこで利益出してるんだ???


 ・・・うわ~ヤバイ想像しちゃった。


 「あのさ、荷抜きだってのは何か根拠あるの?」


 「いや、隊長じゃないがな、小物が手っ取り早く稼ぐなら荷抜きだろうと踏んだが、何も証拠が無いから、第11機関が警戒する【輸送】のプロである隊長のご高察を拝聴したいってそれだけの話だ」


 「そう・・・じゃあ、嫌な予想するけど怒らないでよ」


 「なんだ?もったいぶって」


 「その小物、密輸の片棒担がされてない?小銭掴まされて利用されてない?」


 「おいおい、密輸って何を密輸してるってんだ?」


 「それは分らないけど、個人で証拠も残さずに荷抜きは無理だよ。つまり本当に悪さしてるなら組織的にやってる。でも、それなら荷抜きより密輸の方が自然だよ」


 「なるほどな。やっぱり隊長にやってもらうのが一番か。何人か手は貸す。行ってもらうぜ」


 「ふう、小難しい事は苦手なんだけど・・・やるよ。倉庫番が共犯なら倉庫地帯で事件は起きてると見て間違いないし、しかも犯人の内一人は特定出来てる」


 しかも頭脳戦だけじゃなく最悪力づくで解決してもいいとなれば、自分有利な気がする。何しろ指名手配中だ。自分は相手がヒュムだろうと攻撃出来る訳だし。

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― 新着の感想 ―
[一言] リアルではむしろ不正(ブラック的な意味で)に加担する側なのに、ゲームでは暴く側になるとは、因果なものを感じる 大きな金が動く場所では、ゲーム内であろうと不正が横行するのは世の常ですな
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