280.久しぶりの魚人街
旗艦に戻り、一先ずアンデルセンとアン・ボニーと反省会とまでは言わないが話をしていると、
バルトをはじめ、ぞろぞろと船に戻ってくる。
「よっ!何とかなったね」
「おう、世話になったな。何だかんだ、もうちょい連携にしてもお互い出来る事の擦り合わせにしても課題は色々あったが助かったぜ」
「まあ、そこのところうまく間埋めるのが自分が求められた事だろうから、寧ろ中々役に立てずに悪かったね」
「何言ってんだ。隊長が間埋めてくれたおかげで立て直せたんだ。またやろうぜ」
そんなこんな話していたら、神官服の人が船に乗り込んできた。
バルトと話し始めたところで、自分は海に飛び込む。
正直な所【教国】のヒトには警戒心が働くこの頃。
自分に指名手配をかけている【教国】。第10機関とは一応協力関係だが、どこの機関か分からない人に警戒心が働くのも仕方なかろう。
・・・速攻海に飛び込んで逃げたのは、まあ、びびりすぎてしまった。
まあ、いいかと泳いでいくと、海中にはマンボーさんが待っていてくれて、
やっぱり、焦っても、困ってもやっぱりマンボーさんだな。
海中を進む穏やかさよ。その日に必要な分だけ魚を採り、二人で小さな島で夕飯にして寝る。
これが、母なる海の癒しだ。
途中タコスカイコスに寄り、干物やなんかを買い込み。
いざ魚人街へ。
相変わらず、外は暗いが街中は明るい不思議な光景だ。
道なりに街中に入っていくが、
「よう!久しぶりだな!元気にしてるか?酒交換しようぜ!」
と早速リンボーが話しかけてくる。何にも変わらんな。
まあ、適当にもっているお酒と海草酒を交換する。
そのまま、村長の家へ、相変わらずなんの遠慮もなく上がりこみ、
長は最上部の椅子で居眠りしている。
「長!長!起きて下さい」
「ん?マンボーか?今は急ぎの用はない筈じゃぞ?寝る」
「寝ないで下さい。海を愛する少年が困っているので、手を貸してあげてください」
「む?始めましてじゃの?何かあったかの?」
「お酒だしましょうか?」
「思い出したの。いつぞやは世話になったしの、今度はこちらが手を貸すのじゃ」
「ありがたいです。何でも願いが叶う玉を捜していまして」
「知らんのぉ・・・なんでも願いが叶うって、夢のような話じゃの。陸の者達は面白い事考えるものじゃ」
え~【教国】の情報網!
まあ、ここまで来る方法が無くて調査が進んでないって話だったもんな。仕方なし。
報告としては無いよって事で、折角平和に過ごせる場所に来たんだ。ちょっと休んでってもいいだろう。
「玉の事はおいておいて、ちょっとの間逗留してもいいですか?」
「勿論じゃよ。ほとんど陸の者は来ない土地じゃ。好きなだけ逗留すると良い」
と言う事で、いつだかの家に着くと、案の定既にぼちぼち魚人達が集まり始めてる。
「久しぶりね。なんか前に来た時は男共が好き放題食べ飲みしていったらしいわね。今日はゆっくりしてらっしゃいな」
そう言って、キャサリンが普通に台所に立ってご飯を作っていた。
そしてそれはもう何人前とも分らない量が、皿に盛られている。
魚刺身類が多いように見えるので、ここは【森国】の米系のお酒がいいだろう。
樽で適当に並べておけば、勝手にカップに入れて持って行き飲み始める魚人達。
本当に何の遠慮も無いが、気を使わず、使わせず、好きに平和に飲めばいい。そんな空気感が嫌いじゃない。
そんな平和な空気をぶち壊す一言。
「あれ??陸の紙に書いてあった指名手配犯じゃないか?」
「なんの魚人だろ?」
「ヤマブキベラだが?」
道理ですっごいカラフル。まだらのパステルカラー。
あれよあれよと言う間に宴会場(というなの借りた家)が騒然とする。
「うむ、なんじゃ、皆不安になっておるし、なんで指名手配になったか教えて欲しいのぉ」
「いや、何でも願いが叶う玉を盗んだ人がいて、話に行ったら殺されそうになったので、返り討ちにしました」
「え~そりゃあ、相手が悪いだろ!盗んだ上に殺しに来るなんて酷いやつだ」
「そうだな。少年よ気に病むことは無いぞ、それは仕方の無い事だ」
「全く酷い奴がいたもんだね。それで、指名手配にしてきたヒュムに話はしたのかい?」
「いや、誰か後ろで糸引いてたヒトがいるようなんですが、誰なのか分からなくて秘密裏に仕事をしながら情報を集めてるんです」
「そりゃあ、難儀だな~。陸の上ってのは大変だ。疲れたらいつでも街に来たらいい」
なんとも温かい事だ。居心地がいい。もうここに住んじゃおうかな。
「それで、仕事って何をしてるんだ?何か手伝える事があるなら言ってくれよ」
「玉を捜しているんです。何でも願いが叶う玉」
「それを盗んだ奴がいるんじゃないのか?」
「いや、全部で12個あるらしいんですよ。それでその調査に来た次第で」
「へ~、あれじゃないか?街の外れにある玉」
「あ~あれか~。なんでも大昔の魚人が、完全な弱肉強食の世界である海中に魚人が安全に暮らせる場所が欲しいって祈って、この街ができたんだと」
「あの玉か~。でもあれだぞ?玉に選ばれた者しか触れられないって、いつか来る真の戦いに耐えうる者を待ってるらしいね」
あるじゃないか!長!