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267.族長と相撲

 「ん、も~~ぅ、俺の代で初めての挑戦者だも~ぅ」


 「え?ミノタウロスってモーって言うの?」


 「族長はね、ミノタウロスっぽさを出す為に言ってるのね」


 本当にあっさりと森の中の一際大きなログハウスに案内された。


 そしてそこには知り合ったばかりのミノタウロスより更に頭一つ大きく、体の幅もでかい。


 しかし、一切の脂肪の付いてないバキバキの筋肉だ。


 そう、例えるなれば、お寺さんの入り口にある金剛力士像の肉体に牛の頭がついてる。


 「初めての挑戦者って言ってるけど【教国】のヒトとか来ませんでした?」


 「来たも~ぅ!なんかセイセキ?とか言うの探してたも~ぅ!でもそんなの知らないだも~ぅ」


 ああ……なるほど聖石と不思議な玉が同じ物だと認識していないのか。


 「さて、相撲のルールだも~ぅ。円の外に出たら負けだも~ぅ。もしくは尻餅ついても負けだも~ぅ」


 「手や膝はついてもいいんですね」


 「大丈夫だよ。武器も術も使っていいね。族長は肉体が武器だからね」


 見たまんま全身凶器か。


 族長の家の前にはただの白枠を引いただけの土俵。土の上に丸く円が描かれている。


 族長は上半身裸、腰巻きをしているが、本当に身に寸鉄も帯びていないようだ。


 さて、自分はどうやって戦うか。一応一礼して、円の中に入る。


 限定された範囲内で対峙すると族長はやはりでかい。


 武器を使ってもいいと聞いたので、剣を抜いて構える。


 御互い見合って、徐々に呼吸が合ってくる。


 ここ!と思った瞬間に喉めがけて直線的に突きを見舞う。


 族長は腹の前で両拳を打ち付けて全身に力を入れて、避けもせずに、そのまま喉で受ける。


 まるで、金属の鎧を叩いたかのような手応えと共に剣を弾かれ、体勢を崩してしまう。


 そこに、横から大振りの張り手が飛んできた。


 即、飛蝗ジャンプで真上に回避する。


 着地の衝撃で吹き飛ばそうとギリギリの位置に着地するも、


 足を大きく開き、受けきられて微動だにしない。


 寧ろ、両手を大きく開き、抱き付かれてしまう。両腕の上から完全に封じられ、


 そのまま振り回されて、ぶん投げられた。


 その状態で、つかめる場所は族長の腰巻きだけだったので、腰巻きを掴み、なんとか円から飛び出さずにすんだ。


 しかし、ノックバックも剣も効かない相手に有効な攻撃手段が思い当たらない。


 取り合えず剣はしまう。


 そのまま族長が頭を低くし、タックルしてきたので、自分はさらに頭を低くし、相手の胸に頭を当てるようにして、受け留める。


 族長が腰のベルトを掴んできて横投げにしようとしてきたので、自分も族長の腰巻きを掴み、族長の足を踏みつけ、投げ返そうと踏ん張る。


 じりじりと力負けして、腰が浮き始めた所で、


擒拿術 蛇結茨

擒拿術 猿捕茨


 硬直術セットで、動きを止めた所で族長の腕を振り払い。


 片足を両手で掴み、持ち上げる。


 もう一息で転がるという所で硬直が解け、手を地面につき、体勢を立て直す族長。


 再び、対峙するが中々結構しんどい。


 今度は真っ直ぐ正面から張り手を放ってくるが、避けて伸びきった腕を絡めとり、閂をかける。


 体勢が崩れ頭が下がってきた所で喉を掴み、今度こそ引きずり倒そうと力を入れ、地面を蹴った瞬間に、


 空いてる手で、奥襟を掴まれ浮かされる。


 お互いに姿勢を崩し、足の置き場を奪い合う。


 何とか姿勢を取り戻したタイミングで、相手は姿勢を低くし、下から角で突き上げてきた。


 受け止めきれず、円の枠ギリギリまで撥ね飛ばされる。


 勢いに乗って、更に突進してくる族長に自分に出来る最後の抵抗、


ねこだまし


 族長の顔の前で手をはたく。


 「え?爆発した?」


 と言いながら、よろよろと下がり尻餅をつく族長。


 「はいコレ、持って行っていいよ」


 あっさり玉を渡してくるミノタウロス。


 「いや、そんなあっさり。大事な物だろうに」


 「ん?別にミノタウロスはもうちゃんと頭よくなって、皆と仲良く暮らせてるから特に困ることは無いね」


 「そう、じゃあ、ありがたく」


 「あれ?爆発してないも~ぅ」


 「すみません、あんな手で勝ってしまって」


 「別に、いいも~ぅ。また遊びにくるも~ぅ」


 「はい、また来ます。普段はあちこち【輸送】して回ってますので・・・そうだ!結構いける口みたいなので、お酒置いていきますね」


 「それは、嬉しいね~。肉とか用意して待ってるから、またいつでも来てね」


 そうして、二人のミノタウロスに見送られて、森奥に歩いていく。


 玉は鞄にしまっておく。


 取り敢えずは任務成功か?まあ、最初の任務だしこんなものか。指名手配なのもばれてなかったし、これからもこのペースでいければなー。


 「ミノタウロスの集落から出てきたって事は聖石の情報は見つかったの?」


 さて、どこまで報告するか・・・素直に聖石を渡すか、しかしまだ敵じゃないとは言えないもんな。


 協力者で間違いない気もするが、神官さんには聖石は自分で持っていて欲しいって言われたし。


 結局教区長を煽った黒幕がまだ見当も付いていない。


 絶対聖石が鍵だよな。っていうか聖石欲しがってるっていう第12機関怪しく無いか?


 いや、だとしたら教区長に横領させようとしたのはなんでよ?


 使用済みの聖石が欲しい理由があるのかな?


 分らない。いいや、切り札は持っておくに限る。


 「聖石は族長の家にあって相撲で勝つと貰えたらしいけど、もう置いてないよ」


 「そう?そのまま情報を上に報告しておく、裏づけが取れたら代わりに必要な情報がもらえるんじゃない?取り敢えずは次の目的地に行くよ」


 そう言われ、今度は【馬国】の高原に向かっていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] 嘘はついてない、嘘は
[一言] 最初に族長の腰巻きを掴んだ瞬間、 族長の『御不浄負け』を想像したw
[一言] 嘘はついてないよってやつですねw
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