261.15番斬り③
しかし、ルーク達もどっちに追い込みたいのか分らないし、困ったな。
追いつかれるの待ってからもう一回逃げなおした方がいいのかね?
適当にぶらぶら歩きながらどうするか方針を固めきれない。
ふと、吹き抜ける一陣の風、雪を巻き上げ、視界が少し白くなる。
現れたのは黒い三つの影。
雪国で黒は目立ちすぎないだろうか?・・・自分も同じだった。
「玄蕃久しぶりだな」
「確かに、久しぶりだね。隠れ里から出れたんだ?」
「そうだな、最近までは【森国】内のクエストをこなしてたが、やっと海外に出れたな」
「嗚呼【森国】は島国だから海外になるのか、おめでとう」
「ありがとう、しかし、海外に出て早々の任務がお前を消す事とは因果な事だ」
「そうなの?まさか、任務として追われるとは思って無かったね」
「我らとしても指名手配の件は誤解だと思ったし【森国】の【隠忍】の連中が盛り上がっていたところを人知れず狩ったりもしていたのだが、ただでさえあいつら忍びでもないのに、忍びみたいな名前しやがって、更にはPK当たり前みたいな顔して好きじゃなかったし」
「まあ、任務じゃ仕方ないよね」
「うむ、抜け忍は必ず成敗せねばならん!」
「いや、抜け忍じゃないし、なんで自分の事追う様に言われたの?」
「うんいや、理由は分からないけど、もし倒せたら我らも世界を巡る任務やらせてくれるって、ただまだ早いかもしれないからテストだって」
「ふーん、まあ自分を追うのに頭領も出張ってきてるみたいだし、その割には向かわせるのが、三羽烏。どういうことなのかね~?」
「まあ、いいじゃないかいざ尋常に勝負!」
「忍びなんだから、奇襲すればいいのに、全く」
三人が、三角にお互いの対角に味方が来ないように、囲む。今回は飛び道具も有るのかね?対角線上に味方が来ないようなフォーメーションのメリットって飛び道具だもんな。
剣を抜き構える。今回は軽装が3人だ。剣一本で斬っていくとしよう。
右後ろから殺気を感じたので、すぐにブロックをすると、衝撃が手に伝わる。
見れば、鎖に繋がった分銅を引き戻していた。
鎖鎌か!引き戻した分銅を体横で回し遠心力をかけている。
今度は左後ろから殺気が二つ、撃ち落せば、四方手裏剣が二つ。
そして、目を離した隙に正面にいた筈の小太郎の姿が消えている。目を逸らした隙に姿を消したか。
普段なら面白いんだがな。既に2戦してこっちも疲れてるし、ちょっと乱暴に行くぞ。
鎖鎌使いの半蔵の方へ走り寄る。
再び、分銅が飛んでくるので、左手に巻きつけるように受ける。
そのまま間合いを詰めて、突こうとした瞬間に、
顔を隠していた布を下ろす半蔵。咄嗟に転がってかわすと
口から何やら緑のやばそうな煙状のエフェクトを吐き出す半蔵。完全に近づいてくる相手に対応してるな。
そりゃあそうだ。この面子なら一番最初に間合いを詰められる武装だ。
まんまと囮役の半蔵に釣られた所で、木の上から降ってくる小太郎。もう一回転がり避ける。
更に地面ギリギリを雪を巻き上げて飛んでくる、八方手裏剣。左手に巻きついた鎖で受ける。
今度はその鎖を引かれる勢いを使い、一気に起き上がり、半蔵に向かい斬りかかる。
逆手持ちの鎌で受けられるが、強引に振り切り、更に後ろから忍び刀で斬りかかってきた小太郎の手首を斬る。
今度は半蔵から鎌で斬りかかってくるが、横から左手で、手首を掴む。そして、
武技 身代わり
再び飛んできた四方手裏剣を受けさせる。しかし、残されたのは案山子と鎖鎌のみ。
今度は半蔵と小太郎二人で忍び刀で攻撃を仕掛けてくる。
即しゃがみ、頭上に刃風を感じながら小太郎の足首を斬り、同時に左手で半蔵の足首を掴み、
擒拿術 照葉野茨
腕から鎖を外しつつ、少し間合いをあけていく。当然鎖鎌は半蔵の届かない場所に投げる。
今度は半蔵と佐助から手裏剣が飛んでくる。お金が無いって言ってたが今回は随分浪費してくるじゃないか。
手裏剣を撃ち落しつつ、佐助との間合いを詰める。距離を取ろうとするが<疾走>を使用して、強引に詰める。こちらは足場の悪い場所での移動が基本なのだ。一気に詰め、追ってきた小太郎も引き離す。
突然木の上から、猿が一匹背中に落ちてくる。勢いのまま転がってしまう。
歯を剝き出しに威嚇してくるので、やむを得ずそのまま斬る。
そして再び間合いを開けた佐助が、マキビシを地面に撒くので、
武技 追突剣
マキビシの上を越えて、佐助を突く。
どうやら佐助はあまり接近戦は得意じゃないらしい。そのまま切伏せる。寧ろ小太郎がマキビシに手間取って、援護が間に合っていない。
半蔵の手裏剣も飛んでくるが、命中率が下がっている。
佐助を倒しきった所で、小太郎だ。マキビシを越えたところで、対峙する。逆手持ちの忍び刀で横薙ぎに斬りかかってきた所をブロック・・・と思いきやブロックをすり抜ける。
そして、左横から殺気を感じるので、すぐに剣を立てブロック。どうやら正面にいた奴はいつだか見た術で作った幻影だったらしい。しかし、ブロック硬直が成立した所で、
擒拿術 猿捕茨
硬直延長し、剣を左手持ちにし、
吸う右手
右手で吸いながら同時に剣で急所を突いていく。硬直が解けると同時に案山子に代わる。
いつの間にか動ける様になった半蔵の分銅が飛んでくるので、ブロック。やはり分銅は投擲具扱いなのか硬直は起きないか。
右手に再び剣を持ち換える。
一先ず見失った小太郎は置いて、半蔵に向かう。
分銅を一回弾き、そのまま詰めようとした所で、足を掴まれ転ぶ。
雪の中にいつの間にか小太郎が潜んでいた。
自分ほどの握力はないのかすぐに離したが、転がった自分に半蔵と小太郎が挟み撃ちをかけてくる。
半蔵の鎖が自分の剣に巻きつく。その状態で、小太郎が忍び刀を袈裟斬りにしてきた。
流石に肩から腹にかけて一撃貰う。
だが、剣を離し、左手の腕輪からダガーを吐き出させ、そのまま左手でつかみ取り、ワンテンポ遅れた相打ちで、小太郎の首を突く。急所硬直が出たところで、もう一撃入れる。
背中からの殺気は気がついていたが、分銅の攻撃を右腕でそのまま受ける。強引に小太郎にもう一撃入れて、先程からのダメージ蓄積で小太郎を削りきる。
自分の剣は半蔵の足元に落ちている。
ダガーを手に持ち、間合いを詰める。分銅を一撃避け、ダガーを突きこめば、上半身を大きく傾け避けられる。
しかし、すぐに逆手に持ち替え、振り下ろす。
避けられないと見たのか、鎌で相打ち狙いで斬ってくる。
しかし、上体を傾け、身動き取れない半蔵の服の襟を掴み、
擒拿術 蛇結茨
一瞬の硬直で、タイミングをずらし、一方的に一撃入れる。
そのまま追撃を加えたところで、転がりながら避けられる。自分はダガーを納め剣を拾う。
まだ、余裕があるので癒丸薬を飲み精神力の回復をはじめる。
半蔵が立ち上がり、再び対峙したところで、剣を縦に振る。
ピンっと張った鎖鎌の鎖で、受け留めたが、剣が跳ね返る反動を利用し、腕を畳み、今度は横薙ぎにする。
そのまま、腹に一撃当てた。もう少し足場がよければ、後ろに飛ぶことも出来たのだろうが、生憎の雪だ。
更に腹に一撃突きこみ。
「やっぱり玄蕃は強いな」
「そっちこそ、前より凄く強くなってるじゃん」
氷剣術 紅氷華
半蔵が凍り、砕けて氷片に、砕けた氷片が地面に落ちるたびに光の粒子に変わる。