254.流浪してみる
一先ずは【帝国】を脱し、目立たない場所をうろついているが、目的地が無いと言うのは、なんともしんどいものだ。
自分は動きながらじゃないと、考えが浮かばない。
まとめる時はじっと集中したいのだが、今は自分の中にあるピースを集めている。
でも、どう考えても【教国】だよな。
自分に指名手配を掛けているのが【教国】なんだから、最終的な目的地は決まっている。
しかしそうなると、頼れるのはやっぱり第7機関長か?お酒は一緒に呑んだけどな。
一度でも一緒にお酒を呑めば、フレンドってそれは酔っ払っている間の話だしな。
平時なら第7機関長だろうが、今は自分が指名手配犯。無理だわ~。
予想を外したら、間違いなく逮捕されるじゃん。
脱獄チャンスがあるといわれても、集められる情報は集めてから行かないと、無駄監獄生活。ただしんどいだけ。
うん、希望も何も無い。
となると第9機関長か、あの人は真実見抜く能力者?だもんな。それも聖石の力らしいけどさ。
教区長SATSUGAI容疑は、まあ容疑じゃなくて自分が真犯人で間違いないんだけど。
完全に自分がとどめさしてるもんな。
とは言え、教区長は魔物化してご近所さん巻き込む発言してた訳で、
そうでもなきゃ、そもそもニューターである自分にヒュムを始めとしたこの世界の人を害する事は出来ないし、
仮に任務やクエストで、戦う事はできたとしても、相手は捕縛扱いでSATSUGAIは出来ない。
それがこのゲームの仕様にして、神はその様に世界を創られたのだ。
つまり、魔物化して攻撃されましたからのやり返しました。
そして、そこに嘘が無いか証明してくれるのが第9機関長な訳だから。
無罪放免!グッドエンドじゃん。
よし、ここは覚悟を決めて【教国】に潜入するか!
平原は隠れる場所が無いが、がんばって走り抜けよう。
・・・いや、待てよ。
自分は何とかこの状況を逃れる方法ばかり考えてたけど、誤解だって事を証明できれば、本当にそれで無罪放免か?
神官さんが、黒幕がいるかもみたいな事言ってたよな?
確かに寝て起きたら指名手配って、完全に自分の事狙い撃ちだよな?
危ない!そうだ!自分が教区長の所に行くのを促したのって、第9機関長じゃん!
もし、第9機関長が黒幕だった場合、自分がSATSUGAIした事だけは本当な訳だから、
その情報だけで、自分を監獄送りに出来る。詰んだ。
あの時一緒にいた第7機関長もその事に何も言わなかったし、共犯の可能性も!
【教国】駄目じゃないか!一番行っちゃ駄目だ!
最終的に決戦する場所は【教国】になるかもしれないが、何も無しに突撃する場所じゃないわ。
ふう、あのさっぱりした雰囲気の第7機関長と穏やかで公平そうな第9機関長が、まさかとは思うものの、
自分が見ていないところで、暗い笑みを浮かべているかもしれないと思うと背筋が凍る。
ぐぅ、手に負えない。やっぱり協力者を探す以外に無いか。
自分の推理力と捜査力なんて、あてにならない。
自分はじっちゃんの名にかけた所で、
精々、騎士剣の研究をする!って言いながらいい歳をして腰やるくらいだ。
協力者のヒントって、どこかに無いかな~。
いや、あるのに自分が見つけられないだけか?
まあ、地道にやるしか無いかね。出来る事やるしかないもん。
協力者がいるなら向こうも自分を探してくれるのかもしれないし。
村なら、こそっと行って目立たないように買い物もできそうだったし、この前の感じなら。
幸い自分はセーフゾーンさえあれば、どこでもログアウトできる。
例えば【鉱国】の外の森の中のような、人が入って来にくい場所とかのセーフゾーンを使えば、多分いける。
プレイヤー相手なら容赦する必要も無いし、NPCに山狩りでもされない内は逃げ切ってやろう。
【森国】だけはやめておこう。船で見つかったら海に飛び込んで、泳いで逃げるしかないし、
何より頭領だけは絶対駄目だ。追跡を振り切る自信が無い。
それ以外だと【馬国】の高原と【砂国】の砂漠は道案内無しには抜けられない。
なんなら【海国】の海の小島のセーフゾーン使うか!
大海のあんな小島の内の一つを見つけられたら、流石に負けを認めようじゃないか。
うん、逃げる事だけに集中すれば、自分結構何とでもなるな!
どこかに砥石拾える場所あったし<簡易修理>に使えそうな素材を<採集>しながら旅をしよう。
自分は自分で言うのもアレだが、プレイヤーの中でも有数の世界の地理を知るプレイヤー。
よし!覚悟を決めて、宣言しよう!
「そうだ!流浪しよう!」