239.【古都】のニューターと【訓練】
■ ブロードソード ■
幅広剣だが本ゲームでは現実と同様であり
極端な幅広のダンビラではない
護拳付きの片手ロングソードを指し
護拳の無いものはロングソードに分類される
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なんか兵長から任務票をもらう事すら懐かしく感じる今日この頃だが、初心者服に〔硬猪軍靴〕だけで、フラッと訓練場に向かう。
ちなみに装備品はクラーヴンに丸ごと預けてメンテ中だ。
久々の鉄のゴドレンの店は相変わらず閑散としてクラーヴンは暇そうにしていたが、
最近まで繁盛しすぎてて対応に困ったらしい。なので基本一見プレイヤーさんお断りにして【鉱国】のMoDっていう商人クランを通しての販売にしたらしい。
元々来てたプレイヤーやNPCの依頼は普通に受けているらしいので、一安心だ。
一応旅の間集めた使えそうな素材は全部渡し、新しい剣の作製は頼んだが、構想を練るらしい。
何しろ自分が、ダガー、兜割、ショートソードと言う三種持ち。
はっきり言ってしまえば、何でそんな用途の近い軽量武器だけ何種類も使うんだと。
まあ、確かにダガーは刃渡り10~40cm位の戦闘用ナイフだし、兜割も自分が使っているのは全長で50~60cm位、ショートソードとして使っているグラディウスもそんなもんだ。
自分にとって使い勝手のいい長さなのだから仕方ない。
さて、そんな事を考えながらも訓練場。
「教官久しぶりです」
「おう!元気にやってたか?なんだ、余力が随分と余ってるじゃないか!少しもんでやろう」
「そう思って、任務票持って来ましたよ」
「そりゃ殊勝な心掛けだ。じゃあまずちょっと走ってみろ」
とまあ、走るところから【訓練】開始。
「うん、お前早くなりすぎだろ。大変な任務だと聞いてたが、ずっと走って逃げてたのか?」
「いや、ちゃんと戦ったし!逃げたのはお偉いさんからだけですよ」
「そうか、移動力は申し分ないな。平原じゃ馬には勝てないだろうが、障害物があるような場所ならお前さんの方が早いだろうな。全然疲れてる様子もないからスタミナも十分。後はどれくらいできる様になったか・・・ちっとニューターで一人見所があるやつがいるからやってみるか?」
「へー、こんな過疎地でニューターの【兵士】なんて珍しい」
「お前みたいに隊を率いれる様になりたいんだと、ちなみに100人率いれる様になったのはお前より早いぞ」
「そりゃ有望って言うか自分より優秀じゃないですか」
「まあな、だから大陸を巡ってきた力見せてやってくれ」
「了解。やってみましょうか」
と言う事で訓練場のフィールド。
「おーい!ソタロー!ニューター同士で1:1やれ!中々無い機会だし、楽しめよ!」
と教官に呼ばれたのはいつだか装備が壊れた青年。あの時は分らなかったが【兵士】だったのか。
まだ装備を新調していないのか普通の支給品装備だ。武器は中盾と護拳付きのブロードソード。
爺ちゃんから薫陶を受けている自分としては、かなりぐっと来る装備だ。
自分は普通の支給品ショートソード。
「「よろしくお願いします」」
特に申し合わせた訳でもないが同時に挨拶をし、お互い構える。
盾はオープンガード、剣は高め額の辺りに構えている。
盾で攻撃できるタイプか、どう攻めて行くかな。
相手はじりじりと間合いを詰めてくる。左足を出し、その分右足を近づける摺足だが、手堅いな。
大よそ出方を決めて、ショートソードの先で軽く自分の肩を二回叩き、走りだす。
まずは正面から突いて相手にガードさせる。ブロック硬直を貰いたくないので、強く当てるような事はせず、切っ先をずらし、盾上を軽く叩く程度にして、盾を持っている手の方に回りこむ。
相手は様子を見る為に盾をまたオープンにするが、その時は既に自分はサイドだ。
盾を持っている手の肘裏を垂直に斬る。
すんでの所で気がついたようで、ダメージを最低限に抑えるように腕から力を抜き引いたのは流石だ。
軽く当てる程度になってしまったが、まだ焦る時間じゃない。
相手はこちらにまた盾を向けてくるが、手で強引に押さえる。
押さえられると思っていなかったのか体を回転しこちらに振り向くのを失敗し、剣と盾をぶつけた瞬間に、
こちらは相手の膝裏を斬る。
そのまま後ろに回りこみ後頭部を突く。急所判定がでて硬直した所で、背中から滅多切りにし、硬直が解けたところで、一歩下がれば、こちらを振り向く相手。
間合いが近く、剣を振ってきたところで、ブロック。
正面からの素直な攻撃だ、ブロック出来ない筈もなく、再び硬直した所で今度は剣を持つ方に回りこみ、手指を斬れば、部位破壊の判定が出る。
「こんな所だな、ここまで!!」
と教官が試合を止める。
「お疲れ様でした」「ありがとうございます」
と今度はばらばらに挨拶をする。
「で、感想はどうだ?」
「折角のオープンガードなんだからもう少し盾を使った牽制や殴り、突進があっても良かったかなと、それで相手の体勢を崩してからの剣攻撃に移るなり、押し込んでからのラップショットなり、組み立て方はあったかなと」
「そうだな、普段はそれ位の事できるように仕込んでるんだが、緊張してたのか、後はお前が早すぎて盾が邪魔で動きが分らなかったのかもな」
「ふーん、盾は使い勝手がいいんだけどな。本当はあのスタイルでやりたかった」
「お前は性格が走って間合い詰めるタイプだから無理だ。あんなじりじり動けないだろ?」
「ショートソード使う前はじりじり動いてましたよ」
「そうだったか?まあ【帝国】は雪国だしあまりステップとか使わないからな。それよりも俺が気になったのはお前随分と綺麗に戦うじゃないか?」
「え?普通にフェイント掛けて急所硬直だして滅多切りにしただけですけど」
「まあ【訓練】ならどうやって戦うかちゃんと組み立てて丁寧に戦い方を考えた方が良いが、折角それだけの身体能力があるんだから、もっとラフに当てていってもいいんだぞ?」
「え?硬直とか貰ったらいやだし、そもそも自分の武器軽い上に剣撃も持ってないんだからラフにやったら自分が不利じゃないですか」
「軽い武器ってな・・・ショートソードってのは【歩兵】用の乱戦武器で、振り回す事を前提に造られてて、堅牢かつ鋭い切れ味。なんならブロックされたらブロックした奴の動きも止めればいいじゃないか」
「ブロックした奴の動きを止めるって、自分が重量武器の相手にたまにやられる奴だ」
「そう!それだ。もちろん重量で押し潰すなんてのはショートソードじゃ無理だが、打ち据える技法ってのがある。てっきり大陸を旅して乱戦を経験すれば、もっと荒いやり方も覚えると思ったんだがな」
「いや、100回振って100回同じところ通す集中力が剣力の売りじゃないですか?」
「そりゃあそうだ、決め所は狙い撃ちで斬って落とす凄み、でもそこに至るまでには数を当ててペースを奪っていかないと、折角それだけの移動力があってヒットアンドアウェイで当てていかない手は無いぞ?」
「は~そんなもんですかね~?」
そんな話をしていると人影がこちらに近づいてくる。
「ハロード殿も今日からですか?」
「ええ、コーシカ殿も同じとは奇遇ですな」
うん、軍務尚書と憲兵総監だ。幹部二人連れ立って【古都】に【訓練】に来ちゃうとか大丈夫なんか?