238.ザ・リーダー
■ 称号 ■
魔物を倒した際に勲章と一緒に手に入れるものとは別に
クエストのクリアなどで称号を得られる場合がある
この場合システムAIが判断し新たな称号を付けられることがある為
あまりに変な行動は慎んだ方が良いかもしれない
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久方ぶりの【帝都】イグラントそして礼服。
皇帝陛下の居城とかじゃなくて本当にありがたい。
案内されたのは謁見の間風の小さな部屋。一応形式と言う事らしい。
皇帝陛下以下軍務尚書、幕僚総監、秘書風の女性と護衛風の男性。前回と同じだ。軍務においては皇帝陛下直属首脳陣という所なのかもしれない。
そして、片膝をつき宝剣を両手で渡せば完了。自分も慣れたものだ。
「さて、折角だし少し話そうか、色々と話は聞いている。期待通りだったな」
そうい言っていきなりざっくばらんに話し始める陛下。
首脳陣は慣れてるのか、特に気にする様子も無い。まあ前回もざっくばらんでいいって言われたしな。
「期待に応えられて光栄ですけど。変な事はしてないつもりでしたが?」
「ん?例えば行く先々で偉い人に会いたくないと言って回ったらしいじゃないか、宝樹の件にも関わらず、国家の重要人物にも会いたくないとか、皆困ってたな」
なんか、笑いながら話してくるんだが、そんなに面白いのか?
「必要があれば会ってはいましたし、取り立てて問題になるような事はしてないつもりでしたが」
「ああ、その通りだ。だが誰をそなたとの交渉係に据えるか中々対応が大変だったらしいぞ。
今回の件を機に各国上層部に取り入ろうという人物なら警戒されたろうが、会いたくないと言われたら、逆に困るだろう」
「それは、何と言うかご迷惑をお掛けしました」
「よいよい、気にするほどの事でもない。しかし、宝樹の件のついでに大隊長の称号も得て、極めつけは蛇か。
古い物語にある13英雄時代の蛇の討伐に手を出すとはいよいよもって、英雄の登場か」
「12英雄って【森国】では聞いたんですけど、自分は普通の【兵士】ですよ」
「【帝国】では13英雄と言うのだ。かつてあらゆるヒト種の中から超人的な力を持つ者が現れ、邪神の化身を倒した物語だ。
その中で唯一普通の力しか持たず、それでも多くのヒトを率いる力を身に付け邪神勢力に対抗し、邪神の化身との決戦中に命を落とした事から、13英雄とはされなかった。
非業の漆黒将軍は【帝国】出身故に【帝国】でのみ13英雄と言う呼び名が通っている」
「そんな謂れがあるとは知りませんでした。闘技場の方でも何故か漆黒将軍て呼ばれたのはそのせいなんですね」
「ああ、そうだな。民衆にとって【帝国】の軍幹部と言えば漆黒将軍だろう。ちなみに今も渓谷の先の丘に墓が残っている」
「古い物語と言う割りにお墓がちゃんと残ってるんですね」
「そうだな。何でも13英雄の一人がわざわざ墓をつくったらしく、今でも管理されているな」
「陛下そろそろ褒美の話をされたらいかがですか?」
「そうだったな!コレだけの功績がありながら褒美を渡さないと言う話は無いからな!何でも言うがよい」
「それなんですが、考えたものの輸送でお金は稼がせてもらいましたし、持っている物にも待遇にも不満が無いので、困ってます」
「困ることが無さ過ぎて困るとは!じゃあ、先に一つ与えるとしようか『隊長』の称号だ」
「・・・『隊長』って称号だったんですか?」
「いや、新たな称号として作ったのだ。そなたは隊長と呼ばれているのだろう?なので国家公認の『隊長』とした。コレで名実共にそなたは隊長だ」
「それにはどんな効果が?」
「効果は無いな!しかし、国家公認の二つ名持ちであれば、信用が増すぞ、よしんば大事件を起こしても同情するものや協力してくれる者も現れるだろう。
更には『隊長』と言う単語を発した場合、軍の統率者の意味とそなたを指す二つの意味が生まれる。
例えるならば、将軍と言えば軍の偉いヒトと言う意味の他、先にも話した漆黒将軍や死者の平原の護国の将軍を指すようなものだ」
「何か随分と大仰な事になっている気がするんですが」
「まあ、所詮は名の事だけだからな、折角なので特権も与える【帝国】規格から外れる武装の携帯許可だ」
「それについては助かります。旅で色々雑多に手に入れたので」
「うむ、例えば兜割か、あれは兵装としての鈍器としては重量が足りないし、警邏用の棍棒としては見た目が刃物のようで威圧感を与えるから本来は規格外だ。更に黒いアンダーアーマーか、あれは跳躍力を強力に増すようだが、城壁を簡単に飛び越えたりするのは規格外だ」
「意外と主要に使っているものが規格外だったんですね」
「そうだな、しかし気にしなくていい。好きに使え。しかし、それだけでは足りなかろう?これからどうするのだ?」
「兵長から大陸中輸送して回るように辞令は受けていますので、旅中に使いこなせなくなった身体能力を定着するための【訓練】をしつつあちこち巡ってみようかと」
「ほう!困っている事あるではないか。そなたの師は剣鬼の筈だが、ショートソード使いだったな。
例えば、軍務尚書はダガーによる戦闘の達人だぞ。さらに憲兵総監は若き頃は警邏隊でもまれたがゆえに片手用の棍棒を使用した制圧及び逮捕の巧者だ。折角だから【訓練】の時に教えを請うといい」
「あの、それだけの肩書きのある方に【訓練】していただくのも申し訳ないですし、自分は【古都】の所属ですから・・・」
「私は構いませんな。軍務の合間に【古都】の訓練場に参りましょう。歳が歳ですし無理はしませんが、たまには体を動かそうと思っていたところです」
「自分も時間の許す限り伺いましょう。片手で使用する軽量鈍器と言うものは扱いが特殊ですから、振ればいいと言うものではないので」
うわー二人ともやる気だ。しかも後ろの護衛みたいな人憲兵総監だったんだ。いいのか?側近を【古都】まで来させて?
「うむ、他にも困った事があれば何でも言うがよい【古都】の兵長を通せばすぐに対応しようじゃないか」
「ありがとうございます」
本日一番の感想は気さくな皇帝陛下で助かったわって事。