227.天叢雲剣
■ 陽精 ■
光を表す精霊である
単純に暗闇を照らし出す他
法術以外で回復力を高める事の出来る術を使用可能である
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
酒吞童子は本格的に空が白み、日が昇り始める頃にどこかへと去って行った。
さて、問題は『天叢雲剣』だ。
鑑定も何もしていないが、まず間違いないだろう。
何しろヤマタノオロチの尻尾から出てきた剣といえば、それしかない。
戦闘中は思いついて、そのままに動いてしまったが、よくよく考えれば、問題だ。
コレはゲームだ。ゲームだが、流石にしかるべき所に納める必要があるだろう。
草薙の剣じゃん使っちゃお!とはならないだろう。
何より、自分には大きすぎる剣だし、譲っても困らない。
「と~りょ~!出番ですよ!」
「なんじゃょ。急に」
「ちょっとこの剣あれなんで偉い人の家にこっそり置いてきちゃってくださいよ【隠密】でしょ?」
「【隠密】でしょとはならんじゃろ。どれ・・・こりゃあ、あかんやつじゃぁ」
「ですよね。やっぱりこっそり偉い人に任せるしか」
「何言っておるんじゃ。選ばせてやろう。この国の最高位に位置する御方に献上しに行って、歓待された挙句、大層な褒美をもらうのが一つ」
「完全に却下ですね」
「じゃろぅの、この国の陽精を奉ずる者のなかでも最高権力者・・・」
「それも却下です」
「分っとる、この国の初代王を祀る遺跡がある。そこに納めるとしよぅ」
「遺跡に納めるとか、祀る遺跡って、お墓じゃないですよね?墓荒らしは嫌ですよ。後、勝手に納めちゃうとか、それこそありなんですか?」
「お主さっき、偉い人の家に置いて来いって言ぅてたぞ。
その遺跡は普通の者では魔物がいて入るのに難儀するが、お主なら大丈夫じゃろう。
遺跡の奥に初代王を祀る祭壇があるでのそこに納めるとよいわ」
「それで、世間的に問題が無いというならそうしますけど」
「伝承的に考えれば大丈夫じゃろう」
「じゃあ、それで、行きますか」
頭領と二人で、初代王を祀る遺跡へと向かおうとすると村から人がやってくる。
「おっお待ちを~」
徐々に近づいてくるにつれはっきり姿も見え、浄衣とでも言うのか、神道の神官が着ていそうな衣服の人がこちらに近づいてくる。
「あの?どちら様です?」
「失礼しました。ヤマタノオロチを倒されたお方とお見受けします。大変不躾ではありますが、是非祭殿にお越しいただきたい」
「別に良いですけど、なんでまた?」
「こちらの祭殿はヤマタノオロチの伝承を残してぉる。多分それ故じゃろうの。後世の為に協力せぃ」
「まあ、頭領が言うなら構いませんけど」
そうして、村の祭殿に行くと、何人かの【巫士】が待っていた。
一応天叢雲剣を見せれば、やたらと感心され、皆記憶に刻むように観察していた。
そして、先ほどとは別の多分ここの祭殿では一番偉いであろう高齢の方が話しかけてくる。
「ふむ、この剣を持っているなれば、ヤマタノオロチを倒した事は疑うべくも無い。して、そのオロチを斬った方の剣も見せてはくれぬかの?」
「え?自分の氷鋼剣ですか?」
そう言って、剣を引き抜き見せると、両手で受け取りしげしげと見始める。
「ふむ、伝承どおり欠けがあるの。更にかなり使い込んで限界の様じゃの」
そりゃあそうだ。この任務の間、相棒としてずっと使い続け、いくらまめにメンテナンスし、都等に逗留する度に預けて修理してもらっていたとは言え、限界だろう。
「まあ、相棒なので折れるまで使おうかと思ってますよ。なんだかんだギリギリいっぱいまで丈夫さを補強してますし」
「ふむ、もし良ければ我らに譲らぬかの?もちろんただでとは言わぬ」
「いや、譲ったら剣無くて困っちゃうんでお断りします」
「まあ、そう言うもんではない、聞くとよい。先程も言うた通りその剣は限界じゃ。だがヤマタノオロチを倒した剣である事は事実この祭殿で祀ろうでは無いか。
もちろんただ、剣を寄越せなぞとは言わぬ。この宝具「剣魂」を使えば、剣の記憶が宿る。
お主が大事に使い鍛え上げたこの剣の力を引き次ぐ為の媒介に出来るぞい」
「いや、付加術を使えないと出来ないんじゃ?」
「それを材料として使用可能だから宝具なのじゃ、量産なぞ叶わぬ希少な物じゃ」
「じゃあ、いいです。折れるまでこの剣使います」
「その剣もいざという時に折れてお主を守れない事なぞ望んじゃおるまい」
「しかし、天叢雲剣を遺跡に納めに行くのに魔物がいるって聞いているので」
「ふむ・・・それでは仕方ないの、しかしその剣は本当にもう無理は出来んぞ。遺跡から戻ってきたら、ここに寄るが良い、その剣を新たなヤマタノオロチの伝承と共に祀ろう。
そして、お主はその剣の魂を持ち、新たな剣と共にまた任務に励むと良い」
「まあ、それなら・・・本当は使い慣れたこの剣を手放したくないんですけど」
「大丈夫じゃ、魂を引き継げば、馴染みも早くなろうもんじゃ」
とまあ、遺跡に剣を納める事については何もツッコミが無いということは遺跡に剣を納めてしまっても良いって事だ。多分。
遺跡に向かい今度こそ頭領と共に出かける事にする。