222.霊宝樹
■ 霊宝樹 ■
【森国】の中心に位置し、木々の成長を助けているとされる
実際にはこの世界の根源である霊子に干渉する力を持つが
基本的にはこの世界における全ての生き物の成長を育む事を存在理由としている
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洞窟を抜ければ、森。
いくらか木漏れ日が明るい森の一本道、木の葉が深く積もり、一歩ごとに少し沈む足元。
どこからか鳥の鳴き声も聞こえる。
しかし、臭いだけは邪神の尖兵の気配を感じさせる。
宝剣を抜き。慎重に歩を進める。今回は何しろ頭上から攻撃されることだけは分っている。
すると視界が開ける。
目の前には大樹。今までのような独特な姿ではなく。
まさに大樹。太く安心感を抱く幹、大きく開いた枝と茂る葉。
大樹を見上げていると、ガサガサと気配を感じる。
やっぱり頭上だ。
宝樹の周りの木から木へと飛び移っている。時折揺れる枝がその存在を証明している。
しかし、まだ姿は捉えられていない。
追いかけているうちに自分の真上を通り抜け、黒い姿を凝視すると、
黒い塊が飛んできて、避ける・・・が、腰に巻いてた〔鉄鼠の腰巻〕に当たる。
そして、白煙を出しながら、溶け、光の粒子に変わる。
「クソッ一発かよ!」
どうやら敵の攻撃は当たっただけで即死ではないが、防具が一発で逝くらしい。
最初のスライムを思い出す。あの時は取り込まれて全身の装備が逝ったが、今回は一発で当たった場所が飛ぶ。
出来れば、普段着装備に変えたいがそんな暇は無い。
まだ、ひたすらに木から木へ飛び移る敵。やっと姿がおぼろげに見えてきたが、多分大猿だ。
時折黒い塊を投げつけてくる。
頭領が耐えるって言ってたのは、これを避け続けて、相手の体積が減るの待てって話か?
だとしたら、どれだけの時間がかかるのか。
地面に落ちる黒い塊は、一定時間、ジュウジュウ音を立てて黒い水溜りになっている。
多分足を突っ込めば靴がやられる。
只管上を向き、相手を追い。黒い塊を避ける。
そして、集中力が切れたか、不意に一発正面から飛んでくる塊にやむを得ず宝剣で斬れば、掻き消せた。
黒い塊に宝剣で対応できる事が分ったので、無駄に動くのを止め、迎え撃つ。
一発二発と受け、三発目宝剣で斬ろうとした瞬間に目の前で二つに割れ、一つが冑に当たる。
ポッターに作ってもらった冑だ。あっと言う間に溶け光の粒子に変わる。
追加でくっつけた羽は落ちたので、すぐに拾い鞄にしまう。
そして飛んできた黒い塊を避ける。
そろそろ、攻撃したい所だが、羽蛇の靴の2段ジャンプじゃ届かないだろう。
ここは飛蝗服で飛ぶしかないか?
『よく、お越しになりましたニューターよ・・・』
「え?宝樹様ですか?」
『そうです。宝剣を持つ者よ・・・』
「すみません、今取り込み中なので!」
『少し待ちましょう』
宝樹から変なタイミングで話しかけられたが、すぐに集中を取り戻し、邪神の尖兵を目で追う。
また、飛んでくる黒い塊。
二つに分かれる事を見越して、大きく避けたが、今度は割れずに、追尾してきた。
そして胸甲に当たる。そして〔古代海鰐の胸甲〕も破壊される。
『宝剣を持つ者よ、私の根に剣を当てるのです』
「え?なんて?」
結構ギリギリなのに宝樹が話しかけてくる。
『宝剣を持つ者よ、私の根に剣を当てるのです。そうすれば宝剣は完成し、あの邪神の尖兵とも戦えるでしょう』
「そんな!もっと早く言ってくれれば良いのに!!」
すぐに転がるように宝樹の根が露出している場所に行き。宝剣を当てる。
すると宝剣が発光し、その発光が収まると宝剣にうっすらとした光が留まる。
しかし、これでどうやって戦えるか分らない。
また飛んできた黒い塊を大きく飛び、何とかかわす。
『そこに精神力を込めなさい。十分に力を貯めて振れば、邪神の尖兵を切り裂く光の刃が発生します』
なるほどね。
すぐさま宝剣に精神力を込める。同時に徐々に発光が増していく。
結構な量を流し込んで、ようやっと発光が安定する。
そこで、邪神の尖兵が木から木へと飛び移り、次の木へと着地する瞬間を狙って宝剣を振るえば。
光が膨らみ光の刃が飛んでいくのだが、
ラグと言うか、振ったあと少し自分の目の前で光が膨らみ刃の形になるのに時間がかかり、そこから飛ぶのも、徐々に加速するような飛び方なのだ。
しかし、怯んだのか一旦距離を取る邪神の化身。
この間に癒丸薬を飲んでおく。
しかし、これは相当先を読んで動かないと無理だぞ。
よく、相手の行動パターンを思い出すが、多分さっきから相手は黒い塊を投げた時は着弾するまで、木の上に留まっていた筈。
つまり相手が黒い塊を投げつけるタイミングにあわせるしか無いか。
一呼吸し、もう一度宝剣に精神力を込める。
十分に剣を発光させた状態で、相手の動きを観察しつつ待つ。
そして、黒い塊を投げるモーションと同時にこちらも宝剣を振る。
相手の方が一直線に飛んでくるので早い。
しかし、振り終わったらすぐに塊をかわす為に動く。
すると完全にこっちを追っている塊。
すぐさま後ろを向き、走り始めると追ってきて、肩に当たりはね飛ばされる。
即振り返れば、邪神の尖兵にも当たっていたのか木の下に上半身が落ちてくる。
後は必死で、走って邪神の尖兵との間合いを詰めるが、相手も形を急いで整えていく。
猿型だと思っていたが、既にニホンザル並みのサイズだ。
後一歩という所で、形が整い逃げ去ろうとした所で、こちらは、
武技 追突剣
しかし、紙一重で横に転がられ避けられた。
そのままぴょこぴょこと猿特有の跳ねるような走り方で逃げていくが、
自分は一瞬溜め<疾走>
逃がさずに後ろから斬りつける。
再び胴体を袈裟切りにされ。上半身がずり落ちると
核も破壊されたのかそのまま臭いを発して消えていく。
何とか倒せて、立ち尽くしていると気がつく。
邪神の尖兵の最後の一撃で〔古代海鰐の服〕がやられていた。
アンダーアーマーも腰巻もやられている。
でも、大丈夫このゲームでは絶対に脱げないし破壊出来ない鉄壁パンツがある。
パンツ一丁にグローブとブーツと斜め掛け鞄、剣帯に剣やダガー、各種アクセサリー、大きなベルト。
なんとも凄い格好になってしまった。
せめて、パンツとベルトだけなら激戦を終えたボクサーに見えなくも無かったかな?
無理か、服着よう。