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213.【森国】道中

 ■ 魔樹 ■


 魔物の一種、木が魔化したもの

 スキル等を使用しない場合、普通の木と区別がつきづらい為

 奇襲を受ける可能性が高い

 武器によってはダメージを与えづらく、厄介な相手となる


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 木々の合間を何も無いかのように抜ける老人。


 俊敏と言うより無駄の無い動きで、ぬるぬると進んで行く。


 黒づくめの小さな老人はなんとなくぬらりひょんをイメージさせる。


 自分ももう少し見習いたいが、どうしても自分の気配だけが、静かな森の中でうるさく感じる。


 森の中はいつだかのダンジョンのようなあからさまな罠は無いが、時折木の陰に魔物がいたり、毒を吐き出す植物があったりと油断は出来ない。


 時折<索眼>を使用し、視界を変更しつつ進む事になる。


 唐突に老人が木に登るのでついて行くと大きな猪が足元を抜けていく。


 そのまま、老人は木の上をやはり地面を行くように進んで行くので、やはりついて行く。


 時に飛び、時に走り、時に枝を掴んでぶら下がりながら進む。


 どこまで行ってもうっそうとした森、常に薄暗く、静まりかえる森。


 最早樹海と言っても差し支えないのかもしれない。


 「ふむ、やっかいじゃのぉ」


 急に小声で何かを呟き、止まるご老人。


 <索眼>を使用し、前方を見ると一本の木が他とはあからさまに違い真っ赤になっている。


 「魔物ですかね?」


 「そぅじゃろうのぉ」


 地面に自分一人降り、木の魔物に近づく。


氷剣術 凍牙


 術を発動しつつ、近づけば、足元から殺気を感じる。


 殺気と同時に一歩下がり、目の端に映る何かをブロックすれば、木の根だ。 


 地面から木の根が連続して伸び攻撃してくるが、ブロックと回避でやり過ごす。


 更に近づけば、木の葉が飛んできて、それはナイフのような鋭さを持っている。


 一枚、二枚までは避けられたが三枚目から数が増えていき、剣で切り落とさざるを得なくなり、進めなくなってきた。


 同時に、足元から先程の根の攻撃が被さり、やむを得ず転がって距離を取る。


 すると、風も無いのに木の魔物だけが、ざわめき始める。


 警戒していると、急に視界がぐらついた所で、


 老人に手を引かれ。更に木から離れる。


 「危なかったのぉ、あのままじゃとぉ昏倒しておったぞぉ」


 どうやらあの木のざわめきは何かデバフを発生させるものだった様だ。


 「確かに厄介ですね」


 「森の中じゃからのぉ、火はぁ使ってほしく無いからのぉ。木のぉ魔物は地面に作用するぅ術が苦手じゃがのぉ」


 なるほどね~もう一回やってみるか。

 

 「もう一回行ってみて、駄目だったら、回り道しましょう」


 そう言って再び、木に近づき、木の葉が飛んでくるギリギリ限界の位置で、


氷剣術 霜界


 術を発動すれば、極端に動きが遅くなる木の魔物。


 近づいても葉が、ひらひらと落ちるばかりである。


 幹に手が届く所まで来ると枝が伸びてきて、突き刺そうとしてくるが、造作も無く切り払える。


 そのまま幹に斬りつけるが、少々固い。斧使いだったら良かったんだがな。


 剣を左手に持ち替え、枝を払いつつ、


吸う右手

 

 相手の生命力と精神力を吸収する。


 そして、霜界が切れると同時に動きが活発になる気配を感じ、


 すぐに剣を持ち替え、左手を幹に当てる。


吐き出す左手


 先程老人に指摘された通り、森の中で熱閃をぶっ放す訳にはいかないので、密着させて木の魔物を焦がす。


 焦げて、脆くなった所を重点的に攻撃すれば、力を失った様に萎れる木の魔物の動きが止まる。


 ダガーを刺して<採集>すれば〔魔樹の枝〕〔魔樹の葉〕を手に入れた。


 枝と言う割に中々の太さだ。腕位の太さの丸太って感じだ。木材なんぞ何に使うかね。


 「先にぃ、ゅくぞい」


 また老人が先を進んで行く。


 時に小川が流れそこを跳び越し、葉が積もり足場の悪い場所を駆け抜ける。


 自分はスキルを使って何とか抜けているが、老人はどうやっているのか、本当にぬるぬる最低限の動きで抜けていく。


 「崖じゃぞぃ」


 と一言言えば、足元が切り立った崖になっている。


 折り重なるように密集した木々の所為で、全然気がつかなかった。


 崖を降りるのかと思えば、向かいの木の枝に跳び、真っ直ぐ進む。


 暗くなり、大きく平らな岩が重なるセーフゾーンに辿り着く。


 セーフゾーンの火で、何か作ろうとすると老人が茶色い塊を渡してくるので、臭いを嗅いでみれば味噌だ。


 「味噌玉じゃぞぉ、湯に溶かせばすぐに汁が出来るぞぉい」


 というので、持っていた猪肉と【帝国】特産のじゃがいもで味噌汁にして老人と食べる。


 「お酒は?」


 「いける口じゃぁ」


 というので、お酒も出し、軽く飲みながら夕飯にするとお互い口も軽くなってくる。


 「お主は中々健脚じゃのぉ、動きも悪くないぞぃ、もう少し気配を消す方法を知れば、この国でもやっていけるじゃろうのぉ」


 「やっぱり試されてました?」


 「そりゃあのぉ、普通お客人にこんな悪路歩かせんじゃろぅのぉ」


 「まあ、いいですよ。きっと上司か誰かからの指示なんでしょうし、自分もこの国の歩き方が分かれば助かりますし」


 「器の大きい事じゃのぉ。代わりと言っては何じゃが、森の歩き方くらいは教えるとしよぅの」


 「しかし、気配の消し方となれば、スキルが必要になるんでしょうね。森の中じゃ取得もしようが無いし、どこか街にでも寄りますか?」


 「うんにゃぁ、将軍様の直轄領に直線で進んでおるからのぉ、寄り道はやめておこぅ。気配を消すスキルは確かに有効じゃが、無駄な動きを無くすだけなら体の使い方ぁ一つじゃよぉ」


 「体の使い方を教えてもらえるのは助かりますよ。最近、自分の感覚と身体能力に誤差が出てきていて」


 「それがぁ分かるだけで、十分【訓練】しておる証拠じゃよ。移動力は既にかなりのものじゃぁ。身体能力を上げるより、動きを整える事を優先しよぅかのぉ」


 そうして、老人に動き方を教わる事になった。

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