212.【森国】事情
■ 将軍 ■
【森国】は武家国家であり、独立領主達を治める者を将軍と呼ぶ
将軍は実質【森国】の代表となる
ちなみに各国において将とは単純に軍の偉い人という程度意味と
国を代表する最高軍権者という意味の二つの場合がある
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いつもは嫌で嫌で仕方が無い、偉い人に会いに行く時間だが、後もう少しでこの任務も終わるとなれば、気合も入ろうもの。
【営業所】のおっさんから聞いたここで一番偉い人のところに向かう。
レトロな赤レンガ造りの大きな建物。
どうやら貿易関連のお役所らしい。島国の為、輸出入は全て海からとなる。
この国の富の多くが出入りする場所だ。うん、やめておこうかな?
すると、
「お話は伺ってますよ」
とにこやかで紳士風な男性。しかし何となく親近感が沸く。
そう、服装は洋風紳士なのに顔が和顔なのだ。そういえば、さっきの【営業所】のおっさんも和顔だったかもしれない。
「あっどうもこんにちは。伺ってるって事ですけど・・・」
「ええ、権威や立場や役職のある方と話すのが苦手だと伺ったので、こちらでお待ちしておりました」
「ええ、それは本当に申し訳ない」
「いえいえ、お気になさらず、そちら様こそ【特務上級士官】しかも年功序列や身分や役柄的なものではなく、純粋に前戦指揮官としての階級と伺っておりますので、十分に権力者だと思うのですが」
「いや、自分はもうほんとにちょっと行ってこいとか、ちょっと倒してこいとか、使い走りですよ」
「そうですか?しかし、今回の任務は非常に重要かつ危険な物と伺っております。これを完了させれば【上級士官】でしょう?しかも、各国【兵士】達とつなぎをつけていると言う事は、そういうことですよね?」
「どういうことです?自分は正直な所役職についてはほとんど【古都】の兵長が勝手に決めてるので、よく分からないのですよ」
「ほ~そうでしたか、それでは私の方から勝手なことを申し上げる訳にはいきませんね。これからのお話をしましょう。
まず一つ目に我が国の【兵士】達とも知り合っていただきたい。
二つ目に例の樹は我が国の中心部に存在し、精神的、物質的支柱でもある為、是非にもよろしくお願い申し上げたい」
「双方とも何処の国に行っても同じなので、承ります」
「では【兵士】の件から、実は我が国では独立領主がそれぞれの領に【兵士】を抱えており、さらにその独立領主に指揮権があるのです」
まあ【砂国】とかもそうだったし。っていうか、和顔で独立領主って、戦国か?それとも江戸風の天下統一された後か?
「ええと、国内で戦とかは?」
「流石に邪神勢力とも戦わねばならないのに、ちょっとした小競り合い以上の事は起こりませんよ」
「その小競り合いが怖いんですけど?」
「大丈夫!大丈夫!」
「何が大丈夫なのか・・・それで自分はどの領にいけば良いのですか?」
「実は最近家督を継いだばかりで【兵士】を率いる事が出来ぬ領主がいるのですが、よりによって、そこで蝗害が発生していまして」
「蝗害って、飛蝗の大量発生で農作物とか家畜とかに大きな被害が出るアレですか?」
「それです。そちらに対応していただければと思います。独立領主達をまとめ、この国を納める将軍家からの正式な依頼と取っていただいて構いません」
「なんで、将軍家は出ないんですか?後他の領主も」
「え~聞いちゃいます~?」
「なんで、急に砕けたしゃべりかたに・・・」
「実は将軍家の直轄領に蝗害が出てるんですよね。将軍交代早々、他の領主に弱みを見せたり、借りを作るわけに行きません。
もちろん直属の武将はいますが、将軍家にはいざと言う時に血胤を残す為にいくつかの名家があり、武将たちもそれぞれの派閥に属しており、あまり油断できる状態ではございません」
「自分が横入りしちゃったら、それこそ他国の介入を許しちゃうじゃないですか」
「そこはもう皇帝陛下より『金で解決しよう』とのお言葉をいただいており、さらに【特務上級士官】殿は権威が苦手でどこかの勢力に特別与する方ではないとの情報もありましたので」
「に、したって蝗害の対策なんて自分知らないんですけど」
「大丈夫です。将軍家の【兵士】達を100人ほど引き回していただき、飛蝗を切り捨てていただければ」
「分かりました。やりましょう。ところで一つ伺っても?」
「ええ、構いませんよ」
「【森国】の【兵士】って森の木々の隙間を縫う弓使いだって聞いたんですけどその認識で間違いないですか?」
「なるほど、この国の大半が木々に囲まれている事は確かです。その為、戦車等が他国ほど発展せず。むしろ、視界の悪い森の中での戦闘が発展した次第です」
「じゃあ、飛蝗がいるのも森の中って事で?」
「それが、我が国では数少ない開けた地で田畑をしており、そこを狙われておりまして。
正直そこまで食糧事情に余裕がある訳ではないので、心の底から困っております」
なんか踏んだり蹴ったり、大ピンチだな~。
「じゃあ、その直轄領に向かいます」
「引き受けてくださり、ありがとうございます。道案内にはこちらの者を」
そういうとどこからとも無く現れた黒づくめのご老人。いつの間にそこにいたのか、視界の中にいた筈なのに、全く気がついていなかった。まるで通行人のように意識の外にいたとでも言ったらいいのか。
にやぁっと笑うご老人
「森は危険じゃぞぉ。探索と障害物越えに関するスキルをつけておくとええょ」
そう言われたので【教会】で<探索者>と<越障者>をつけて、ご老人について行く。
港のある交易の街の境界から先は本当に背の高い木々で埋まり暗さと圧迫感を感じる。
森の国。