210.海蛇決着
■ 円陣 ■
<戦陣術>の一つ 密集隊形で補正
移動不可、攻防の双方に補正
前後左右全方位に対応可能で、囲まれた時に有効な術
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電気を纏った蛇が身震いすると更に電気のエフェクトが激しくなる。
そして、体を縮め今度は顔がこちらを見ている。
「全員散開!飛び込んでくるぞ!」
言うと同時に、蛇が一直線にこちらに向かって砂を滑り、飛んでくる。
辛うじて避けられた者、かすめて吹っ飛ばされる者、直撃をくらい脱落する者。
砂浜の縁に着けば、また向きを変え滑り飛んでくる。
三回連続で、向きを変え滑り飛ぶと、そのまま海に滑り込む蛇。
少し待つが、何も反応が無い
「逃げた?」
「流石に海の中のことは分からねえな」
「もう一回釣ってみよう!」
自分がそういうと最初に吹き飛ばされてから何処にいたのか釣りのおじさんが金の蛙を針につけて、海に投げ込む。
10秒も待たずに、また蛇が釣れ、砂浜に打ち上げられる。
すると電気を纏っていない。
「とりあえず攻撃!にしてもなんで電気消えた?」
「あれじゃないか、海に入ったから、帯電した電気が放出されちまったんじゃないか?」
「なるほどね~。まあとりあえず、今はダメージ蓄積させよう!」
残っている者達で、どんどんダメージを積んでいく。
蛇が起き上がると、近接職達はいつでも避けられるように構え、後衛遠距離職達は引き続きダメージを与えていく。
牙を剝いた蛇がまた息を吐き出す音を発し始める。
ダメージのない衝撃と同時に
「『行くぞ!』」
戦陣術 激励
士気低下を中和する。
次は電気の波かと警戒していると、荒く息をつき始める蛇。
「相手は弱ってるぞ!攻撃!」
相手の弱みに付け込むように攻撃を加えていく。
そこで、体を震わせる蛇。またもや全身に電気を纏い始める。
そして、今度は自分達が固まっている方ではなく、周りを這いずり始める蛇。
ぐるっと一周、周り自分達を取り囲むと、
急速に輪を縮め巻きつくように押し潰してくる。
運のいい者は隙間から逃れたが、かなりの大人数が、捕まった。
戦陣術 円陣
周り全方位に対応できる術を使い、攻撃を加える。
円の外側はタンクで固めるが、纏った電気と擦れる蛇の胴体に生命力を削られる。
内側からは術士たちが持ちうる術をあらん限りに放つ。
その内嫌がった蛇が、再び海に戻る。
ダメージを食らった者達は早急に回復しつつ、
三度目の、蛇釣り。
打ち上げられた瞬間はチャンス。
一気呵成に攻め立てる。
蛇が起き上がるも全身で息をつくように揺れている。
そのまま、攻撃を加えていると、身震いする蛇。
「集まれ!密集隊形!」
叫ぶも、先程までより短いスパンで、全身から電気のエフェクトを発し、
戦陣術 岩陣
術をかけるも大半は間に合わず、青い電気の波に飲まれる。
しかし、本当に力を振り絞った最後の攻撃だったのだろう。
その場に倒れ、下顎の付け根に魔石が露出する蛇。
それに剣を突きたてれば、完全に動きを止める。
そして、頭の中にいつものファンファーレが鳴る。
クエスト発見者
ラストアタック
の二つをもらえるようだ。
一つはいつものメダル、手の中で、すうっと消える。
もう一つは蛇を模したベルト、バックルが蛇の頭になっており、色々動きそうだ。
おなじみシャーロッテが近づいてくる。
そして、ベルトを見てもらうと
「これは〔海蛇ベルト〕変身ベルトダネ!」
「え?変身ベルト?」
「そうダヨ!装備状態を二つまで登録できて、一瞬で切り替えることが出来るヨ!」
どうやらベルトを装着状態で、バックルの蛇の頭の向きを変える事で、右向きの時と左向きの時で一つづつ装備セットを登録し、ベルト部分とバックル部分の継ぎ目のギミックを操作して、一瞬で装備が切り替わるらしい。
当然、切り替える装備はバッグに入っていなければならないが、一々取り出して着替える必要が無い分、便利だろう。
しかし、一瞬で変えなければならない装備と言うのが、今一思い浮かばない。
精々眼鏡と左手の蠍の小手なのだが、バイザー付きのヘルムの時は装備出来ないので、ヘルムの種類ごと交換か?
実験していると、右と左で一つづつ登録できるが、登録していない物も手動で装備は出来るので、
普段は登録していない物を装備しておき、いざと言う時、右か左で変身できるようにしよう。
ちなみにこの装備の難点は、腹部のバックルがごつすぎて、腹帯が装備出来ないことだ。
いずれ、胸腹一体の上半身防具にしたかったが、このベルトが手に入ったことで、胸甲装備一択だ。
色々着替えながら、今後の装備の方針を考えていると、ガイヤがなにやらテンション上がって叫んでいる。
「見なよ!コレ!これでアタシは炎の巫女から雷炎の巫女だね!」
と叫んでいるのを見ると確かに全身に青い電気を纏っている。
「どうしたのそれ?」
「ふっふっふ!今回のMVPはアタシがいただいたよ!」
今まで見たことの無い銀色のサークレットを頭にのせて、ご機嫌なガイヤ。
よくよく見れば、蛇の鱗の様な細かい意匠に額中央部に光る青い半透明の宝石。
宝石の種類は分からないが、これはいい物だと直感する。
「効果を教えちゃおうかね!額に精神力を込めれば、全身にこの青い電気を纏って、近接攻撃してくる相手に自動でダメージを与える上に、かなり低確率だけど、麻痺発生。更に術全般に対するダメージ減少(小)及び耐性(小)がついた状態になる。更に切り札が・・・これは内緒だね。ふっふっふ」
と、かなりご満悦のようだ。でも、聞く限りかなり有用そうな防具だ。
まあ、近接攻撃も遠距離攻撃も絶えずダメージを与え続け、今回の攻撃ダメージ量の中核を担ったガイヤならMVPも納得か。
騎士だと赤が牙状の何か、青も鱗状の意匠が入った盾を手に入れてるし、嵐の岬だとまた釣りのおじさんが何かを両手で掲げ感動している。
釣りのおじさんの方に向かって、話を聞いてみると、
「なんて美しいリールだ!こんなリールなら、今までより更なる大物でも釣り上げられる!」
と、なんか見た目で喜んでいる。自分は釣具は詳しくないが、リールと言えば、糸を巻くやつだということだけは分かる。
「そいえば、あのサイズのでかい蛇すら釣り上げてたのに、リールの良し悪しなんて関係あるの?」
「そりゃあ、あるさ!使う釣具と釣りのスキル熟練度によって大物も釣れるのさ!」
「でもあんな大物釣って、砂浜に打ち上げるんじゃ、筋力だって相当だろうに」
「いや、そこはタイミングの問題だ!俺は釣竿より重いものなんて持てないぞ!」
へ~釣りには独特のルールが適用されてるんだな。
さらに嵐の岬の<解体>が得意な連中が、どんどん素材を手に入れている。
なんだかんだ今回は皆でわいわい楽しめたし、たまにはこんな大物討伐もよかったのだろう。




